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[完結]捨てられ聖女と森の主・妹のためにと捨てられたんですけど?  作者: 安ころもっち


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75.ニコレッタ、お腹の子が元気すぎると苦慮する。


少し楽になった気がする朝。

相変わらず体を起こすのはちょっと厳しい。


横を向けば徹夜でやっているであろう2人の魔法陣の書き込み作業。


基本はカーリーが昔暇つぶしで開発していたと言う地脈から魔力を吸い上げる魔法陣だと言う。

この魔法陣の文字の部分もまた、私にも読めない字で書いてあったが、小さな文字でびっくりするぐらいの長文が書いてあることは理解できた。

一晩でこれだけ細かな魔法陣を書き上げるカーリーは、やっぱりすごい神獣様なんだと改めて感心した。


うんうんと頷いていたら吐き気を覚え、フェルが差し出したゴミ箱にゲーしてしまった。ここ数日何度もあったことだが、やっぱりフェルにこんな姿を見られるのは恥ずかしい。

フェルは出禁にすべきか?でもクラリスじゃな不安だし……


カーリーはユミに相談しては魔法陣を修正している。

昨晩から何度も見ていた光景だ。

すでに魔法陣は書くスペースは無いようで、魔力を流しては修正している。そろそろ完成するのかもしれない。


私は昨日から食事をしてないが、常に流れ込んでいる魔力とか魂モドキとかでお腹が空かない。気づけば目覚めて2時間、ずっと作業している2人を眺めていた。





「これで良いと思うわ!」

ウトウトしていた私はユミの嬉しそうな声が聞こえ目を開ける。


寝ぼける私は、カーリの指示によりフェルに抱き上げられ、魔法陣の上に置かれた布団の上に寝かされた。

そしてフェル、ディーゴ、久しぶりに執事に戻ったカーリーとユミの4人が指を噛み、その指を魔法陣に押し付ける。魔法陣の見えている部分が七色に光っているように見えた。


4人は魔力を流し込んでいるようだが、私はそれどころではなかった。体の中に色々なものが入り込んでくる不快感を絶賛体験中であった。


暫くすると不快感は治まり、先ほどまでと比べても随分楽になったように感じる。


「ニコちゃん、気分はどう?」

「ユミさん。かなり楽です。これなら体動かせそう!」

「動いちゃだめだよ?」

「わ、分かってます」

ユミは圧のある笑顔で私をジッと見ている。


その目にキラリと光る涙は見ないふりをした。


「主様。本当にだいじょうぶなのですね」

「うん。カーリーもありがとう。この魔法陣ってどのぐらい持つの?」

「地脈から強制的に魔力を吸っておりますゆえ、半永久的に動き、主様に魂の補修を施しております」

「そうなの?凄いね」

カーリーは笑っていた。


そしてフェルが私を抱きしめ、ディーゴとクラリスが泣き笑いしていた。


その後は、何事もなく半年が過ぎた。

私は相変わらず食事は要らない様で、たまに甘いものを食べたくなるので少量を貰っている程度だ。


なのでもう随分お腹が出てきてるのは、太ったのではないことは明らかだ。

だってほとんど食べてないのだから!


拠点には同じようにお腹が大きくなったエレナを始め、エレオノーレ、カルロや陛下、ローランドとイレーネ夫婦も遊びに来た。イレーネも妊娠中とのことで、同世代で仲良くできるねとはしゃいでいた。

エレナもイレーネも同じ妊婦なのに元気だな……


順調に時は進んでゆく。

まもなくという時期になり、私は悪阻によりゲーしまくっていた。何も食べていないので何も出ずに込み上げてくる気持ち悪さに苦しんでいた。心地よいはずの下から入り込んでくる魔力にも不快感を感じてしまう。


さらには時折お腹を蹴られる痛みに泣いた。

我が子ながら元気すぎない?


段々と以前のような虚脱感などにより、再び起き上がることが困難になってきている。不安ではあるが、4人が日に何度も魔法陣に魔力を追加してくれているので、その時だけは少し楽になる。

どうやら我が子達は貪欲に私の魂を喰いにきているようだ。


その事に私への強い愛を感じる。


可愛いよマイベイビィス、どんどんママをお食べ。でもちょーっとだけ辛いかもだから、ほんの少しで良いから手加減してほしいかな?

そんな事を考え気を紛らわせていた。


そして、遂に下腹部がズンドコと強い痛みが続いたある日、私の傍にフェルとディーゴ、カーリーが集まった。


「ニコ。俺との契約を破棄、……いや違うな。上書きする。いいな」

ディーゴが真剣な表情でそう言った。


「上書き?」

「ああ。骨……カーリーと契約した時を覚えているだろ?」

私はお腹の痛みに唸りながらカーリーとの契約のアレを思い出しうなずいた。


「あれと同じようにニコと契約し、俺がニコに全部を預ける。これでニコの格が上がるはずだ。きっと今より楽になるだろう」

拒否しようと思ったが、優しい笑顔になったディーゴを見て言い淀む。


「俺はニコなら信じられる。たとえニコと一緒に死ぬことになろうとも構わない。そもそも俺達のような神獣という存在は死を恐れない。死ねばまた別の存在が生まれるだけだ」

「ディー、ゴ……」


そしてディーゴは私の前に膝をつき、手を取って宣言した。


「俺はお前を永遠の主として認めこの契約を結ぶ!俺の魔力、そして魂の全ての所有権を主へと捧げる!さあ、俺の全部を受け入れろ、ニコ!」


その言葉と共に私の中に熱く、そして優しく包み込むような何かが入り込んできた。その瞬間、私がずっと感じていた気怠さが取れた気がした。


「ありがとうディーゴ。随分楽になったよ」

「そうか。良かった」

そう言うディーゴの笑顔はとても綺麗だった。


その後、本格的なお腹の痛みに、聖女マルティナに来て貰うと流石に仕切で目隠ししてもらい、激しい痛みに耐え無事出産した。


元気な男の子と女の子であった。


その頭には、ふわふわで可愛い耳がついていた。

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