表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
[完結]捨てられ聖女と森の主・妹のためにと捨てられたんですけど?  作者: 安ころもっち


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

74/79

74.ニコレッタ、我儘に愛に生きる。

「私なら、主様の御病気の原因を取り除くことができます。安心して下さい」

「そう?」

そう言うカーリーに何となく違和感を覚える。


「じゃあ……なんで今、そんな顔してるの?」

「そんな顔?」

「カーリー、泣きそうな顔、してるよ?」

カーリーは顔を隠し、そして元の姿へと戻った。


『吾輩は、主様の事を思えば、今すぐその原因を取り除いた方が良いと、思っております』

「うん。私も結構つらいんだ。もう体を起こすのもしんどい……」

『そうでしょうそうでしょう!吾輩にお任せ頂けますか?』

「ほんっとつらいんだー。でもね?ちゃんとホントの事、話してほしいかな?」


カーリーはすぐには言葉を返えしてくれなかった。

背後にいるフェルとディーゴも原因を理解している様で、少し表情が暗い。


私は、少し顔を上げ、自分の体を鑑定した……

お腹の部分に、2つの別の魔力が存在した……


「この子達、ちゃんと……生まれる?」

我慢したが涙声になってしまった。


「ニコ、さすがに双子はダメだ。1人でも奇跡的なことなんだ。私は、ニコとまだ一緒にいたい……」

フェルはそう言ってベッドに体を預け頭を撫でてくれた。


「ニコは、俺達の力を受けて多分だけど神格を獲たんだろうな。だからフェルの子を受け入れることができたんだろ?」

『そうですね。多分ですが、神格とまでもいかないでしょうが、それに近い存在となったのでしょう。ですが、このままでは子供ばかりか、主様も持ちません』

悲しそうにそう言う2人。


はあ。私は、フェルと子を()すことができたんだ。

その喜びを強く感じ、絶対に死ねないと思った。


「聞いて。私は死ねないよ。この子達を産むんだ。絶対に、何が何でもでも産む。だから皆、私の我儘に協力して?」

その言葉に、誰からの返答もなかった。


部屋の隅ではクラリスが顔を両手で押さえ声を殺し泣いている。

入り口付近では、ララがこちらをジッと見ていた。


そして……


「ねえ!カーリーは魔法が得意なんでしょ!なんとかならないの!」

真っ赤な顔でララはカーリーに詰め寄っていた。


『ですが吾輩でも……』

「私だってフェル様の子を産めるんでしょ!じゃあ、私より強いニコが、なんで無理なのよの!」

ララの言葉にカーリーが唸っている。


『確かに、ララ殿もフェル殿との子を()せますよ。ですがララ殿は、100%その子を産むことはできないでしょう。子を孕むことができるというだけで、産むことができるわけでは無いのです』

「えっ?」

ララが驚いた顔をして固まっていた。


確かに、私でもこんなにしんどいなら魔力の少ないララでは多分……

でも、子を孕めるがすぐに死んでしまうって……良くフェンリルとは子が()せるなんて伝説ができたもんだ。産めないんなら意味ないじゃん。それとも、過去の獣人族に凄く魔力が高い人がいたのかな?


そんなことを思いつつ、次第にクラクラしてきた自分に泣きそうになる。


「それでも、私は産むから……」

ぽそりと口を出てしまった言葉に、カーリーがうなづいた。


『ちょっとお待ちを……』

カーリーはそう言って転移でどこかへ消えた。


その数分後、カーリーは魔王ユミを連れて帰ってきた。


「ユミさん」

「ニコちゃーん!」

私の傍まで来た魔王ユミはすぐに私を覗き込むと、両手を力強く上下させる。


「大丈夫だから!……だから皆も協力して!」

その言葉に私はまたも泣いた。


泣き過ぎて水分欲しい。チラリとクラリスを見ると、ストロー付きのボトルがサッと差し出された。こういうところは気が利くよね。そう思ってごくりと一口。メープル過多のあまーいコーヒーだった。

吐き気が込み上げると、クラリスがサッと差し出されたゴミ箱にゲーした。


私は気まずそうな表情のクラリスを睨んだ。


「クラリス、こういう時は酸っぱい系のさっぱりジュースがいいんだよ」

「えっ、そうなんですか?これ美味しいのに……」

元気なら殴ってた。


「ニコ」

フェルから差し出されたボトルを安心して口にする。レモン水かな?さっぱりして飲みやすかった。さすが私の旦那様。どこかの脳筋駄女騎士(ダメキシ)とは違うな。


その後、カーリーから何が問題なのかを説明される。


宿った赤子の魂の器が大きくて、その器には大量の魔力と一緒に魂の力も注ぎ込まれると言う。多少の魂の力であればすぐに回復するのだが、宿った子の力は強く、常時魂の力が吸い取られる為、やがてニコは存在そのものが消えてなくなると。

それが今回は双子だと言うので、このまま行けば1ヵ月も持たない可能性が高いと言う。


なので今回はユミさんとも知識を共有し、大量の魔力供給とそれを魂の力に近い物質に変換、魂に近いそれを赤子達に流し込む。その為の魔法陣を組むことができればなんとかなるはずと言う。


だがそれは机上の空論。

2人にも成功するかは分からないようだ。


「何があっても、私は産むから。だからお願い……私に、この子達を抱かせて?」

『吾輩は、主様の忠実なる下僕。仰せのままに』

そう言って私のベッドの横で膝をついたカーリーは、ユミさんとまた相談を繰り返していた。


一応ストックしていたペンダントを握り締める。

だがあまり効果は無いようだ。


必要なのは魂の力?私も自分で魔力を魂に、なんてイメージしてみたが、残念ながら現状は全く変わらなかった。


その晩、寝室の床に魔法陣を書く。

簡易的な物だと言って、1時間程度かけて直径1メートル程度の円形に書き出した魔法陣。書き込まれている文字は私には読めない文字だった。


書きあがった魔法陣の上に、ベッドをゆっくりと移動する。

その後、指をガリっと噛んだ魔王ユミの血が魔法陣に注がれた。


私は、びっくりしてヘロヘロな手を動かし回復しようとしたが、その前に魔王ユミは自分で回復してしまった。多少は治癒を使えるようだ。

そして、カーリーが魔法陣に魔力を注ぐと、一瞬お腹に何かが突っ込まれる感覚を覚え「うっ」と唸るが、すぐにその感覚も無くなり、少し楽になったような気がした。


『主様、これは応急処置にしかなりません』

そう言うカーリーだが、それでも楽になったことは事実だ。


「ありがとう。カーリー、それにユミさんも」

「まだこれからだから!」

魔王ユミはそう言って、ベッドがあった部分に座りカーリーと何やら話し始めた。


それから眠くなってきた私は、気付けばぐっすり寝ていたようで、少しだけ気分よく目覚めることができた。

ブクマ、評価、励みになります。感想お気軽にお書きください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ