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[完結]捨てられ聖女と森の主・妹のためにと捨てられたんですけど?  作者: 安ころもっち


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47.ニコレッタ、聖女としてのお披露目

目の前では一歩前に出た帝国の男が話しかけてくる。


「ロシュフォール帝国、皇帝クレマン・ロシュフォールと申します。お目にかかれて光栄です」

「ニコレッタよ。よろしくね」

エレオノーレとの練習通り抑揚なく返事を返す。


だが、その素っ気ない様子に一瞬顔を歪ませる皇帝クレマン。


「ニコレッタ殿、後程お時間を頂けますか?できれば我が息子、シャルルと楽しいひと時など……」

「考えておきます」

食い気味に言ってみる。


先ほど胡散臭い微笑みを見せていた青年が頭を下げるのでこの子が皇太子シャルルということだろう。


「そ、そうですか。では後程……」

皇帝はそう言うと頭を軽く下げ、帝国の面々と一緒に席へと戻って行った。


「あれが皇帝?確か30才って聞いたけど、もっと若く見えるね」

「そうね。それなりに魔力が高いのでしょ」

私の皇帝陛下への感想に、エレオノーレが補足する。


「隣の青年がシャルル皇太子殿下。ニコちゃんの2つ上ね。後で時間作るの?」

「うーん、正直気が進まないけど、この後なんて無さそうじゃない?フェル達にビビって逃げ帰っちゃうかもよ?」

「そうかもね。で、隣が皇帝妃のローザ様、周りを固めてたのは2名の公爵とその奥さん達よ」

私は何ともなしに皇帝の面々を見ながら話を聞いていた。


「シャルル殿下の隣がオルテンシア・レフォール公爵夫人、その隣が当主のアナトール・レフォール公爵、その隣にはマクシミリアン・トルーヴェロ公爵、その隣の2人はミシェル第一夫人とジネット第二夫人、最後にピエール・モルティエ伯爵、帝国の宰相よ」


エレオノーレが「まあ覚える必要はないけどね」と言いながら説明する。

私も覚える気はないので軽く聞き流していた。


やっぱり御貴族様は第二夫人とかいるんだな。


私はそんな事よりも帝国の面々の後ろに控えている三人の騎士が気になった。

ゴツイおじさんにイケメン騎士、そして凛々しいお姉さん。やっぱりファンタジーには女騎士様は必須なんだよね。真っ赤な鎧に身を包んだ姿がとてもカッコイイ!

私は演技を忘れその女騎士と、第二隊隊長のミニカ様を見比べ鼻息を荒くしていた。


その後も、陛下達への挨拶が済んだ各国の代表たちがこちらへと移動し自己紹介をしているが、その話を当然の様にさらっと聞き流す私。


挨拶タイムが終わると、陛下達は奥へとひっこみ歓談の時間が設けられる。各自が他国との交流をしばし楽しむのだが、皆が帝国の面々にまずは挨拶に行くようだ。


帝国の面々、特に皇太子殿下はチラチラとこちらを窺っていたが、私たちは儀式の準備があるので控室へと移動した。


準備と言っても特に何も無い。

とりあえず一度引っ込んで陛下が私への褒賞を授与するのに合わせ、聖女として陛下達に祝福を与えるというストーリーだ。


暫く控室でくつろいでいると部屋がノックされ会場へ向かう。

陛下達の座っている場のすぐ近く、横のある小さなドアから中へと入る。

ここは幕に隠れているので会場からは見えない位置だ。


「えーと?」と言いながら魔法のバッグから取り出したのは、聖魔石のペンダントが2つに守護の腕輪が1つ。

3つとも王家仕様に素材はミスリルで所々に金を混ぜ王家の紋を画いているものだ。ちょっと頑張っちゃったが、森を自由にして良いよと言われたのでこのぐらいは良いだろうとサービスしてみた。


その間にも陛下が私の功績を長々と説明している。

聖女として恒久的に結界を維持するための聖魔石の提供、王家の者が犯した大きな失態に対しても慈悲を頂き、権力を傘に助長した公爵家を断罪したその功績は計り知れない。とやや盛ってるような話っぷりに恥ずかしくなる。


出るのやめたい。


だが時間は待ってはくれないようで、進行を任されているおじさんにより私の名が呼ばれてしまう。


「それでは、今代の聖女様、ニコレッタ・ユリシース様、よろしくお願いいたします!」


待って?今なんつった?


「ニコちゃん!良かったね!これで名実ともに聖女様だよ!」

少し後ろで見守っていたエレオノーレが、笑顔で拳を胸の前で上下させそう言った。


「た、たしかに先代の聖女様もユリシースって名前になってたけど……私もなの?」

「当然よ!これでニコちゃんに逆らう者は誰もいないわ!」


諦めが肝心か?と興奮気味のエレオノーレから視線をそらし、小さくため息を付いた後、練習通りに陛下の前まで歩きだす。

それに対して陛下は王座から降り跪く……


「王家に、そして王国に永遠の繁栄を……」

緊張気味に口にした私の声は、魔法の力で会場中に聞こえる音量で響き渡り、それに反応するように大きな歓声が彼方此方から上がった。顔から発火して死ぬかも。


そしてカーリーが陛下に、王妃にはフェルが、私から手渡された聖魔石のペンダントを首に掛ける。そして王太子が可愛らしく差し出した手にはディーゴが守護の腕輪を装着した。

役目を終えて下がったフェル達と入れ替わるようにして私が前にでる。


そして目の前の陛下が懐から短剣を取り出した。

跪いたまま顔を上げた陛下がその王家の紋入りの金キラな短剣を私に差し出し、頭を下げた私が受け取り儀式は終了した。


少し離れて待機する私たち。

陛下達も席へと戻るとまた演説が始まった。


「これにて、聖女ニコレッタ様は王家の一員となり、不帰(かえらず)の森を領土として治めることとなる。森についてはたとえ他の王族であっても、不可侵の領土として取り扱う故、くれぐれもご注意頂きたい!」


そして拍手喝采の中、式典のメインイベントとなる。


「みんな、よろしくね」

小声でフェル達に合図すると、フェルは青く、ディーゴは黒く、カーリーが真っ白に輝きを放ち、それぞれの姿へと戻る。特大サイズの三人は迫力満点であった。


私は白いローブを纏ったカーリーの手により、大きくフワフワな毛並みに戻ったフェルに横向きに載せられる。


思ったより悲鳴は少ないな?そう思っていたが、会場では驚きすぎて口を開け驚いた表情が窺えた。

悲鳴が上がらない内に、と吹き抜けになった会場の一番上まで浮かび上がると、そこで最大出力の治癒の光を放つ。うっすら緑がかったその光が会場いっぱいに広がると、大きな歓声が聞こえてきた。


チラリと帝国の面々を見ると、あちらはまだ口を開けたまま惚けているようだ。

フェルのこともあり色々と予想外だったのだろう。


これで役目は果たしたと元の場所まで戻ると、大きな拍手を受けながら私は再度陛下達と会場の方へ頭を軽く下げ、出た時と同じように袖にひっこんだ。三人は人型へと戻りながらついてきた。


「終わったー」

思わずしゃがみこむと、待ち構えていたエレオノーレに抱き上げられ、全力でほめちぎられた。恥ずかしい、いや柔らかい、どうしようもう寝ちゃおうかな?エレオノーレの胸に抱かれながらそんなことを考えていた。

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