46.ニコレッタ、帝国の面々と向かい合う。
口をぎゅっと結んだ私から視線を外しため息をついた陛下。
そしてカーリーを見て口を開く。
「カーリー様、で良いだろうか?」
「うむ。吾輩はカーリーだな。ニコ様の忠実なる僕である!」
「そうか、そうか……」
そうして何かを諦めた表情の陛下は、宰相たちとも話し合いが必要だと言うと、部屋の隅に集り相談を始めた。だが、私は伝えなければならない。カーリーも式典に出してほしいと……
「陛下、少しお話が……」
陛下の方に近づきながらそう言うと、陛下が首だけをギギギと回しこちらを見る。
「あ、あの、祝福を与える時にね?カーリーにも、どうかな?」
「どうかな、とは?」
「予定では陛下に王妃様、そして殿下に祝福の品を渡すでしょ?だから、カーリーも入れたら丁度三人で良いと思うんだ?」
「思うんだ?と言われても……カーリー様は、良いのでしょうか?」
恐る恐るカーリーを見る陛下。
「吾輩?吾輩にも役目が与えられるのか?式典とやらは煌びやかに行われると聞くが?吾輩が出て禍々しい雰囲気にならんだろうか?」
カーリーの返事に「どう、でしょうね?」と言いながら今度は私を見る陛下。
「カーリー、元の姿に戻って。できるだけ神々しく?」
このままでは進まないなと思ったっ私の言葉に、カーリーがうなずくとすぐにカーリーの全身が光り輝いた。
身構える室内の面々が緊張して見つめる中、カーリーが本来の姿、死者の王の姿へと戻った。だが、そのローブは一点の曇りも無い真っ白なローブであった。
「うん。いいね」
私がカーリーにサムズアップしながらそう言うと、室内には感嘆の声と共に安堵のため息も聞こえた。
その後、執事に戻ったカーリーも交えて最終確認。
確認が終わればいざ出陣となる。
陛下達を残して部屋を出て会場まで案内される。
会場は隣接される聖宝神殿の広いロビーだ。
普段はあまり使う事のないその場も、今日は各国の代表などの為に席が設けられ、すでに多数の代表たちも集まってきていた。各々が仲間内と話をしているようだ。
そんな中、私たちが案内された通りに端を通って前の席へと移動する。
気分的には"どうもすみません"なんて言いながら頭をペコペコしながら移動したい気分になるが、それは駄目なのは分かっている。聖女のイメージは大事だよね?
そう思って前を見て表情を崩さず歩く。
今は素敵なドレスも身に纏っている。気分的には聖女成りきりプレーだ。大丈夫。私はやれる!
そんなことを考えてる私の視界にあの金キラな集団が目に入る。
またもチラリとこちらを見て顔を歪ませるので、今度は余裕をもって「フッ」を鼻を鳴らすようにしてから目を逸らす。
「この……」
小さくそう聞こえ、狙い通りに煽っているように見えたと感じ、喜びに思わず頬が緩みそうになったので全力で頬に力を入れた。
「ニコ、その顔はなんだ?お腹痛いのか?」
ディーゴが覗き込むようにして眉を下げている。
「そうなのか?森に帰るか?」
フェルも心配そうに私を見る。
「体温、脈拍、共に異常無しであるが、精神的な物であるやもしれぬ。むむ、血糖値がやや高いので甘いものは控えた方が良いであるぞ?」
え?待って?血糖値とかどうやって視るの?後で聞かなきゃ。
「大丈夫。ちょっと表情筋を鍛えてただけだから」
そう言って笑顔を見せる。
「ここよ」
エレオノーレの案内で会場の左側前方にたどり着いたようだ。会場に向かって設置してある5つある席の内、会場から見て右から2つ目が私の席だ。
一番右からエレオノーレ、私、フェル、ディーゴ、カーリーの順で着席した。
私から見たら左手にはエレオノーレ、右手にはフェルとなる。
少し離れてこちらを向く形で帝国の面々が座っている。
思ったより近かったので気まずい。
帝国の面々は私たちがこの場に座ったことで戸惑っているようだ。
自分達より上座になるので戸惑いは当然だろう。
奴隷と思っていたのに着席するならそれは高位の者ということだ。だがそれによってやはり王国は……と思っているのか中には両掌を上にしてため息をついているように見える者も……思わず手に持つ錫杖を投げつけてやろうかと思った。
私が悔しそうにすると相手は喜ぶよね?
そう思って無表情を作りフンと目を逸らすと、丁度大きなファンファーレが聞こえ思わずビクッとしてしまった。
表情は崩してないが、多分顔が赤くなっているかも……そう思いつつも奥からゆっくりと出てきた陛下達を眺めていた。
陛下、王妃様、王太子殿下はそれぞれ騎士を背後に従えての入場。
それぞれ聖騎士団第一隊~第三隊の隊長が警護を務める。王妃様の護衛を務める第二隊は女性のみの騎士団だと聞いている。
その第二隊の隊長を務めるモニカ様はとても可憐な少女にも見えるが、武の名門スパーダ伯爵家の御令嬢で、幼少より第二隊に配属されるのを夢見て鍛えてきた方らしい。
青を基調にした騎士様の正装も、第二隊だけはうっすらと赤みがかっている。私ももう少し背が伸びたら着てみたいな?と思った。
もう何年かしたら私だって背も伸びてスラリとした長身美女に……
いや、夢を見るのは止めよう。分かってるさ、私ももう15だ。なんで背が伸びない!女らしくない平ぺったいちんまりボディに深いため息をついた。
顔を上げると4人の視線が……
「だ、大丈夫だって。ちょっと色々思うところがあっただけだから……」
もう色々考えるのは止めよう。式典に集中しよう。そう思って陛下の挨拶を聞いていた。
陛下の挨拶の終わりに式典の開始が宣言された。
まずは帝国の面々が立ち上がり陛下達の元へ歩き出す。当然の様にこちらに冷たい視線を向けてからの移動だ。
本当に失礼な奴等だと思いつつ、後で絶対びっくりさせてやる!そんなことを考えている間に、陛下達との話を終わっていたようで金キラ集団がこちらに戻っていた。
その集団は私の前に止まると、青年のような見目の良い男が話しかけてくる。
「聖女ニコレッタ殿、ですね」
「ええ」
そう言ってニッコリと微笑むと、隣にいた私より少し年上と思われる青年もまた微笑みが返ってきた。
私はその微笑みを見て、胡散臭いなと感じてしまった。
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