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[完結]捨てられ聖女と森の主・妹のためにと捨てられたんですけど?  作者: 安ころもっち


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44.ニコレッタ、式典前に慌てる。

いよいよ式典の準備が始まり、真っ先にドレスの準備を始めた私。


最優先で仕立てるので来週には出来ていると言われたが、ドレスってそんなに早く作れるものなのか?と思った。だが考えてみたらそもそも前世でもドレスを着る機会などなかった私。


それが終わればエレオノーレに式典の流れと一緒に食事のマナーから教え込まれる。

夜会は立食ではあるが、その後の王家と皇族の懇談会ではテーブルマナーが必要となる……やっぱ出るのやめよっかな?


拠点で行われたマナー教室にはエレナも参加することになった。

エレナは「いずれ必要になるかなー?」と言っているどういうことだろう?エレオノーレがニヤニヤしながらエレナを眺めているのも気になった。


そしてテーブルマナーについても太鼓判を押され、式典の流れも完璧に覚え、すでに出来上がっているドレスも試着済み。本番は城で着替えることになった。


純白の神官服のような見た目のドレスで、裾が綺麗に広がるレーススカートになっている。頭には後ろにふわっとしたレースが長い帽子を被り、帽子の前面には聖魔石を模してるであろうピンクの飾りがついている。


オマケに錫杖っていうの?杖の先に輪がジャラジャラついて奴?そんなのも急遽鍛冶ギルドに作らせたそうだ。なんだかコスプレしている気分になって少し恥ずかしかった。


そんな私が式典まであと3日という時期の夕方、拠点で夕食までと惰眠を貪っていた。そんな私のすぐそばに轟音と共に雷がズガンと落ちた。眩しさに目を晦ませつつも飛び起き距離を取りった私は、即座に結界をONにして身構えた。


フェルとディーゴは本来の姿のままゴロゴロしてたので、敵意などは無いかな?と思っているが、かなり大きな落雷により煙がもこもこと上がっている。その煙は明らかに不自然に見えた。


『うるさいなお前は!』

フェルがそう言って放った風魔法によりその煙を飛散させた瞬間、黒マントの巨大な骸骨が立っているのが見えた。


久しぶりの<鑑定>を使い覗き視ると、その骨は死者の王(カイザーリッチ)だった。道理で頭に朽ちかけた王冠を被っているはずだ。生前は皇帝だったのかな?じゃあなんで王国内にいるんだろう?そんなことを考えていた。


『なんだよ!吾輩がせっかく訪ねて来たのに!』

『来なくて良いわ!』

フェルがリッチと会話している。旧知の仲なのかな?というか、また神獣って奴?いや、獣じゃないしな。


『お前がニコレッタか?大人しいんだな』

『ニコはニコレッタだ!気安く呼ぶな!』

リッチがこちらに顔を向けている。


フェルとは喧嘩するほど仲が良いって奴かな?ディーゴとも似たような感じだしな。


『おっ、骨じゃねーか。何しに来たんだ?』

『お前もいたんだったな。ずるいぞ!谷は捨てたのか?』

『谷にはたまに帰ってるよ!俺は強いから睨みつけてやればすぐに大人しくなるんだからな!一ヵ月は余裕だ!』

『吾輩だって墓場に居なくとも、森の奴等は結界の外に出たりせんわ!』


なるほど。墓場に森の結界ってことは、死霊の森ってこと?

何となくわかってきたけど……リッチか……


『ニコレッタ!この2人とも契約したんだろ!吾輩とも契約してくれ!』

「えー?」

『なんで嫌そうなんだよ!そんなに魔力があるんだ!吾輩一人ぐらい増えても余裕だろ!』

「そうだけど、でもなーリッチだしなー」

そう言いながらも、骨なのに段々と悔しそうにしている表情が見える気がしてきて、少しだけ可愛げがあるように感じてしまう。気のせいだとは思うけどね。


『なあ!2人からも言ってくれよ!吾輩、契約したら魔力もっと増えるぞ!強くなれるんだぞ!』

『ニコはもう十分強い』

『そうだな。俺には負けるけどな!』

あ、これははっきりと悔しいって分かる。リッチは膝をついて拳で地面をガンガン叩いている。


「ちょっと、あまり落ち込まないでよ。少しだけ考えさせて。私も前向きに考えるからさ」

『ほんとか?吾輩、待ってるから』

首だけ上げて弱々しく返事するリッチ。


「私の聖魔法が無くなって闇魔法が、とかならない?」

『両方、と言うかほとんどの魔法が使えるようになるぞ!』

デメリットなしか……


そんな好条件を提示しているリッチは首をふりふりしながら両手を胸の前で組んでいる。仕草は乙女?中々の策士である。その仕草を見て段々と『デメリット無いならいいかな?』って思ってしまった。


「じゃあ、とりあえず契約すっかな?フェル、契約しても私の魔力への負担って大丈夫だよね?」

『そうだな。骨ごとき契約しても微々たる負担にしかならぬよ』


フェルが丸まったままそう言うので大丈夫なのだろう。


「じゃ、そう言う事で」

『いいのか!よし!じゃあ行くぞ!』

「ドンと来い!」

『吾輩は、汝を主と認め契約を結ぶ!我が魔力を全て捧げる故、汝もその麗しい魔力を吾輩に授けたまえ!』


そしていつもの様に……とはならなかった。

リッチの差し出した手に触れると、微量に魔力が放出された反面、私の中に膨大な魔力が駆け巡り体に力が漲るのが分かる。まるで高い栄養ドリンクを飲んだような高揚感。


そう言えば契約の時の言葉が明らかに変だった気が……

そして、目の前では光を放つリッチ。それを見て……


「あっ!待って!服!服を着て!」

私は思い出した様に叫んだ。


だが無情にもすぐに光は消え、顔を覆った指の隙間からリッチを覗き見ると、そこには黒髪ロン毛ストレートの細マッチョに黒マントの見た目が変態な男が立っていた。


「いや、隠れてるから良いけどね。服をさ、着てくれるとありがたい」

「服?ああ、そうだな。吾輩としたことが失敬失敬」

そう言って執事のような姿へと変わるリッチ。黒いちょび髭まで生えて良いオジサマ感が出ている。


「いいね!仕事できそう!」

「そうであろう!じゃあ名前付けてくれ!吾輩に相応しい名を!」

ああ、そうか。名付けと言うのもあったな。


「うーん。今日から君はカーリーだ!」

そしてまた安直な名前を口にしたが、目の前の執事は嬉しそうに土下座していた。パッと見て絵面酷いかな?気分は悪役令嬢。執事虐めてみました?


「カーリーは土下座禁止ね。変な噂が広まりそうだから絶対ダメ」

「了解です!吾輩土下座禁止!」

そう言ってシュタっと立ち上がる。


『なあ、さっきの契約って言うより、主従契約だよな?』

「ええ。それが何か?」

「フェル、主従契約って何?」

「説明いたしましょう!」


フェルの指摘と私の質問に応えるようにして始まったカーリーの説明に、私は即座に契約を破棄したくなった。

無理だった。


フェルとディーゴの契約は互いに認め合った契約となっているが、カーリーとの契約は主従を定める契約で、片方を主と認め主に全てを捧げる契約だという。もちろん私は主になったそうだ。


これでカーリーの膨大な魔力を私は使い放題。

そして私が死ぬとカーリーも死ぬという。


私はその日は早めに布団に入り不貞寝した。責任が重すぎる。




翌朝、寝起きに目を擦りながら見た庭のテーブルには、白いテーブルクロスがかけられ、その上には煌びやかな料理の数々が乗っていた。


「ニコ様、コーヒーにしますか?それとも紅茶に?リクエストがあれば吾輩におっしゃって下さいませ」

「あ、うん。コーヒーで。甘めにしてね」


こうして、拠点には新たに出来る執事がやってきたようだ。

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