39.ニコレッタ、ちょっとだけときめきを感じる。
私の咳払いで周りの視線が集まる中、早くやろうと言ってみる。
「国王陛下、そろそろいいでしょうか?そっちの三人はいつまでも黙ってるだけみたいですし?私が後できっちり説明しますから、陛下にはちゃんと最後まで見届けてほしいです。良いでしょうか?」
「ニコレッタ殿、見届けるのは構わないが、あの者達と立ち会うのだろ?私はニコレッタ殿の身が心配で……」
慌てだす陛下に周りも戸惑っているようだ。
心配してくれるのはありがたいが、私があんなのには負けることはありえない……もう、このまま全員殴り倒して……
「大丈夫だ国王。ニコはあんな弱小な者達には傷一つ付けられんよ」
「そうだそうだ」
全員がキョトンとするので陛下にだけ聞こえるようにこそっとフェルとディーゴを紹介しておく。
「こちらがフェル様に、こちらが、こ、黒龍の谷の主様、ディーゴ様、じゃと?」
「そうだな」
「そうだぞ」
神獣2人との紹介も終わったし……いい加減終わらせたい。
私が再びフェルとディーゴを端に待機させると中央へ戻る。それに合わせるように集まっていた人たちが中央から移動してゆく。そのタイミングでカルロが陛下に耳打ちをすると、エレオノーレと数人の兵を連れ外へと出ていった。
そして中央には私しか立っていない。なぜ?
「なんで誰もいなくなってるの?ビビってるの?早く始めようってば!降参するなら土下座で頭こすりつけて謝って!」
すっかり熱が冷めてしまったが、いい加減ウンザリで目一杯煽る。
「い、いいのか?本当にいいのか?」
テオフィロが恐る恐る近づいてくるが、他の男たちは首を左右にふって遠慮している。
「誰か一人でも私に傷をつけれたら陛下には全部不問にするって言うから!男らしく出てきてよ!そして私に無様にぶちのめされて!早く!」
これはさすがに腹が立ったのか、予定位通りの公爵家子息全員が中央に集まってきた。
睨み合う中に腰の剣に手をかける男達。1人は杖をかざしこちらを睨みつけている。考えたら私、丸腰じゃね?まあいいけど。
そして、中央で身構えていたテオフィロが剣を抜き……
「待ってよ!」
ようやく始まると思っていたタイミングでまた阻まれる。
「みんなで寄ってたかって!女の子にこんなことして恥ずかしくないんですか!」
目の前にバッと小さな両手を広げ私に背中を見せる男の子……陛下と一緒にやってきた男の子だよね?
その姿にちょっとキュンとする。
だって、私より小さい体を大きく見せるようにして、ぷるぷる震えるようにしながら頑張ってるんだよ?可愛い弟を見ているようでお姉ちゃん泣いちゃう!
「殿下!危ないですから!下がってください!」
「そうだぞローランド!下がりなさい!」
慌てて兵士がその男の子の元へ……気付けば陛下も傍まで来ていた。
今、殿下って言った?
混乱中の私の前に立つ男の子は、兵士たちの手を逃れるように振り向き、笑顔を向けてきた。
「大丈夫だよ!僕が何とかするから!」
今のは良い!グッときた!が、殿下っってことはあれだろ?王族ってことだろ?なんだよちくしょー!このドキドキした気持ちを返せ!絶対王家になんて嫁がないからな!
「あっ、そうだ!僕、ローランド・ユリシースです。以前は兄が大変ご迷惑をおかけしました。僕もお詫びしたいと思ってたんです!」
ぺこりと下げる頭を見て、兵士も陛下もポカンとしている。私もポカンとしている。駄目だ。庇護欲が湧き出てくる。
「だ、大丈夫だから。お姉ちゃん強いからね。ほら、お父さん心配してる。あっちで離れて見てて。お姉ちゃん今からあの男たちやっつけてくるから。ね?分かった?」
「でも、危ないよ?」
首を傾げるその仕草にグッとくる……こいつー!狙ってやってるならすげーな!
初めてのドキドキした感覚に戸惑うが、視界には陛下のニヤつく顔が目に入る。
途端にスンッと心が冷静になる。
「王太子のローランドだ。可愛いだろ?とても真面目で良い子だ。年もニコレッタ殿の1つ上だし適齢だろ?どうじゃ?」
「お断りします」
「そうか。まあいつでも声をかけてくれて構わんぞ。なあローランド」
「はい、父上!僕もニコレッタちゃんは可愛いので、好きになりそうです!」
私は今とても複雑な表情をしていると思う。
そして、視界に入ってくる陛下のニヤニヤ顔にイライラしていた。
やっとのことで場も整ったようだ。
先ほどと同じように身構える男たちだが、チラチラと陛下の方を気にしている。
私が「そんなへっぴりじゃ無理じゃない?帰って寝たら?」と煽ると、男たちは少しだけ元気になったようだ。
「いけー!「<炎の矢>!」
そんな感じでのほほんとしていたら、ドラーギ家のリッカルドが先制の魔法攻撃を放ってきた。
「あ、ずりーぞ!」
「うっせー早い者勝ちだろ!」
そんな会話を聞きながらその炎を右手で祓うようにすると飛散する炎の矢。
すでに結界は纏っているので当然の様に無傷な私。その光景に動きが止まる男たちへとゆっくりと歩き近づいてゆく。
「くっ!魔法は効かないようだが好都合だ!俺の剛剣の錆にしてくれる!」
そう言ってソレンティーノ家の嫡男テオフィロが腰の剣を抜き、私の肩口を狙って斬撃を放つ。いや殺す気ですか?娶る気はないのですか?
そう思いながら向かってきた剣に反するように裏拳を叩きつけると、その自慢だと言う剣がパキッと折れた。それを見て固まる男たち。
そして容赦なくテオフィロの腹部に拳を叩きつける。
その体は綺麗な弧を描いて後方へ飛んで行く。
少しバウンドするように地面に落ち、そのまま動かなくなっていた。
「うわーー!!!」
叫びながら私に向かてくる男、これは……だれだっけ?見た目は青年だからソレンティーノ家の次男?三男?よく分からないけど剣を横殴りにして叩き折ると、今度は混乱するように殴りつけてきた。
「いぎゃー!」
そら痛いわ。
剣をも叩き折る結界を纏っている私を、拳で殴れば痛々しいほどに血だらけに……それを見て「うっ」と精神的なダメージを受ける私。
ちょうどそこへもう一人が剣を持ち身構えているが、すでに打ち込む気はないようだ。少しだけ足に力を入れて跳躍するように近づき腹を殴ると呻いて倒れ込む。
「喰らえ!俺の最終奥義!<炎の槍>!!!」
そう叫びながら少し離れた場所から放たれた3本の炎の槍は、私の足元の地面に突き刺さりジュっと音を立てて消えた。
呆気に取られている中、魔力切れなのかフラフラした後にバタリと前のめりに倒れた。だから痛いって!さっきから見てるこっちが痛いという精神攻撃をくらっている私は、少し離れたところで震えながら体を寄せている2人の男の子を視界に捉えた。
「まだやる?」
その問いかけに、ぶるぶると首を横にふって膝をつく2人を見て、まだ小さいし勘弁してやるか、と見逃すことにした。
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