37.ニコレッタ、切れちまったよ。
1人立ち上がり話を始めたソレンティーノ公爵。
「まずは、この場にお越し頂いた聖女ニコレッタ様には感謝を述べさせていただきます。ありがとうございます」
「来たくなかったけどね」
間髪入れずツッコミを入れると、少し頭を下げた体勢でめっちゃ睨まれた。
「私たち公爵三家も、この場をお貸し頂いた正教会の皆様も、聖女であるニコレッタ様とは友好な関係を望んでいます」
「そんなのは良いから。早くエレナお姉ちゃんを返して!」
今度は歯をギリギリ食いしばっている。
「私は、人攫いと仲良くする気はないよ」
「人聞きの悪い事を言うな!」
私の更なる一言に我慢できなかったのか別の公爵家の人が叫んでいる。
「ホントのことじゃん。エレナお姉ちゃんをありもしない罪で捕まえて、今も監禁してるんでしょ!お姉ちゃんに何かあったら、全員ぶっ潰してやる!」
段々と腹が立ってきて我慢ができなくなってきた。
背後に待機してくれている2人が肩に優しく手を置いてくれているからまだ我慢できている。できれば今すぐ目の前の男たちをぶん殴りたい。
「聖女様、色々と食い違いが起きているようで」
「どこが違うか言ってみてよ」
「エレナ殿は、私たち公爵三家の聖女様への大切な伝言を、あろうことか無視をして、お伝えしなかったのですよ」
「ちゃんと聞いたよ、ギルド長も交えてね。私が面倒だから無視してただけ。ギルド長から聞いてないの?」
私の返しに室内がまたざわつく……
「良いですか?今回エレナ殿は、伝言を伝えた私の従者に『絶対に合うことは無いから帰れ』と言ったのですよ?私の従者にです!これは我が公爵家に対する不敬罪です!断じて許すわけにはいかないのです!」
私は思わず立ち上がる。
「ニコ、こいつら殺すか?」
「やろう。まずは何人かやれば分かるだろ」
「やめて。今必死で我慢してるんだから……」
フェルとディーゴの誘惑に必死で耐える。私は出来る限り穏便に進めたいんだ。
そんな思いをぶち壊すように周りの護衛達が身構え冷たい目でこちらを睨んでいる。早くエレナを助けて帰りたい……
「でーすーがー!そのエレナ殿は聖女様と懇意になさっているそうで、なのでこうして和解の場をとギルドに伝言を残したのです。我々と聖女様が仲良くして頂ければ、エレナ殿の罪を私は許しましょう!」
「何を偉そうに……仲良くって何がしたいの?言ってみて!」
まだ話し合いで済ませられるならそうしたい。一応そう思っている。まだかろうじて、ほんの少しだけそう思っている。ホントだよ。
「やはり、皆に聖女様と私たちが仲良く、ということを見せつけるのなら、我々の息子達の誰かと婚約でもして頂ければありがたく……」
「いや無理!」
テーブルを軽く叩いて即否定したが、それを無視して新たに立ち上がったのは3人の男たち。
イライラしながらそれぞれの紹介を聞く。
全員殴りたい。
最初に自己紹介を始めたのはさっきまで口を開いていたソレンティーノ公爵の息子、カミッロというそれなりに背の高い色黒な男。聖騎士団第一隊所属と言うだけあって鍛えているのだろう。ソレンティーノ公爵が「一番のおすすめな物件だ!」と付け加えていた。
さらに隣にいたテオフィロというゴツイ男は公爵家の跡取りで、聖騎士団第一隊の副隊長と言う。すでに結婚しているというが第二夫人で良いならどうだ、と……
続いて少し控えめに話し始めたのは三男のサンドロ。聖騎士団候補生でまだ体は細いがそれなりの筋肉は付いていそうだ。
次に立ち上がったのはドラーギ公爵で、その息子のリッカルドを紹介していた。ひ弱そうに見えるがこちらをうすら笑いしながら、明らかに私を下に見てるように舌なめずりが気持ち悪かった。王国魔道師団をめざす13才らしい。
最後にメラーニ公爵という男が息子を2人紹介していた。
フェデリコは騎士団をめざす14才。クラウディオも同じく騎士団をめざす13才。どちらもそれなりに鍛えているようだ。もういい加減多すぎてすでに覚えるのは放棄しているので、次に会ったら全員忘れてるだろう。
紹介された全員の私を見る目が気持ち悪かった。きっとキャバクラか何かの女性を見るような目だと思う。もちろんそんなところで働いた経験はないから漫画とかの表現のやつだ。ジロジロと上から下へと動く視線に鳥肌が立つ。
「どうですか!皆、将来有望な者達です。誰を選んでも構いません。どうですか?」
「どうもこうも、全員無理!」
私の言葉に、全員が唖然としていた。そんなに予想外だったの?やっぱり全員頭が沸いてるんだな。
「ニコ、いい加減帰ろう。ここは空気が臭くてつらい」
「そうだぞ?エレナ探してもう帰ろうぜ!お腹減ったぞ?」
2人が駄々をこねるように腕をぐいぐいするので、その行動に少し怒りが落ち着く。本当に2人がいてくれて良かった。
「では、やはりエレナ殿には厳しい処罰をせねばなりませんな」
そう言ってニヤリと笑うソレンティーノ公爵。
「父上、それなら私の妾にでもいたしましょう。あの女はそれなりに良い肉付きをしておりましたし……少しは楽しめるでしょう」
息子のテオフィロの言葉で、私は我慢の限界を越えてしまった。
ドゴンと高そうなテーブルを叩くと、皆が口を開けてこちらに注目する。
「屋上へ行こうぜ……久しぶりに、キレちまったよ……」
私は伝説のワードを口走り、ハッとして羞恥で顔を赤らめる。
屋上ってなんだよ……なんだよ私……
そんな私の恥ずかしさを他所に、室内の全員が立ち上がり身構えている。
「私を娶るなら、私より強い男じゃないと……話にならないかな?」
私を辱めた不埒な輩に、殺意を籠めて言ってみる。
「生意気な……聖女と言われ自惚れたか女のくせに!」
「父上、良いではないですか!私が、この女に身の程を思い知らせてやりますよ!ラディスラオ大司教様、訓練場をお借りしても?」
「ええ、もちろん。ご自由にお使いください」
ソレンティーノの息子、テオフィロの言葉により、私たちは大聖堂内にある訓練場へと移動することになった。
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