34.ニコレッタ、初めてのお泊り
お昼ごはん。
準備してくれたフェルとディーゴを他所に、エレナと仲良く食べ始める。
そんな私たちをフェルがジト目で見た後、残っている苺を放置してあるミキサーに入れ、同じように他の材料を投入して自分の分の苺ミルクを作っていた。シロップは大量に入れていたようだ。
フェルは作り終わったそれを自分のジョッキに注ぐと、私たちの向かいに座り食べ始める。
苺ミルクの残りは待ち構えていたディーゴがミキサーごと持ち去り、さらに追加で適当に果物類を放り込んでいる。そして嬉しそうに焼き台で肉を焼いて食べながら、ミキサーを抱えるようにして直飲みしていた。
楽しい昼食タイムが終わると、今度は砂場まで行きエレナと一緒に走った。
基礎体力からつけないと動けないという事を十分理解したらしい。
休憩を挟みつつ走り続ける2人。
そしてエレナは……2時間程でふらりと倒れたがすぐに私が支えることができたので、そのまま横抱きにして拠点へと戻りビーチチェアに寝かせた。
2人で楽しく走っていたけどやっぱり無理は禁物だね。テンションが上がっていて直前まで気付かなかった自分に反省する。
か細い声で謝るエレナの頭を撫で、栄養満点のバナナシェイクを太めのストローで供給すると、徐々に調子が戻ってきたようで笑顔で私の手を掴んで頬に擦りつけていた。その仕草にキュンときて頬が緩んだ。「ふへへ」と声が漏れたのは内緒だ。
それから私も隣のビーチチェアに寝ころび、手を繋いで夕寝を楽しんだ。
ちょっと変な夢を見てしまったのは、起きた時には元気になっていたエレナが私のお腹に頬をスリスリし、さらに手をいわゆる恋人つなぎのようにしてにぎにぎしていたからだろう。
きっと赤くなってしまっている顔が戻るまで目を瞑って精神を整えようと思ったが、エレナがいつまでもスリスリのニギニギを止めないので無理だと判断して冷静かつ慎重に「おはよう」と声を掛けた。
「ふへっ」と声を上げて赤い顔をこちらに向けるエレナだったが、ゆっくりと私の手を離しはにかみながら「おはよう」とつぶやいたのがまたグッときた。
そんな夕寝を終え体を起こすと、すでにフェルとディーゴが夕食の下準備をしてくれてことに気付く。すでに大量の肉と野菜を焼き始めている。
私は飛び起きバッグからラーメンに使っている生麺を出すと次々に茹で始めた。少し固めにサッとゆでる。フェルには鉄板の上の野菜をもう少し細かくカットするように伝えた。
お肉はディーゴが焼いているものを少し拝借しこちらも小さめにカット。
さて、焼こう!
私はフェルが使っていた鉄板の一角を占拠して、野菜の中に麺と肉を投入。鉄ヘラを両手に持って炒め始めた。とは言ってもすでに野菜は火も粗方通っているし、麺も茹でた物だ。
馴染む程度で終わらせて特製ソースを取り出すと、上からビューっとかければジューと言う音と共にソースの良い香りが漂い、エレナの目も輝いていた。
焼きそばはフェルとディーゴも何度か食べたことがあるので、フェルは少し嬉しそうにしっぽをフリフリし、追加の野菜をカットして炒めだし、麺もさらに追加で茹でていた。
ディーゴはひたすら肉を焼いていた。
数分後。
出来上がった焼きそばを大皿に盛るとテーブルに並べる。
ディーゴの分は肉を焼いている横に山盛りにしてあげた。お礼を言いながら私を抱きしめ頬にチューするディーゴだが、すでにお肉を食べまくってるので遠慮してほしかった。私の頬はさぞかしテカっているだろう。
フェルは鉄板下の炭を少し取り出し火力を弱く調整すると、いつものように私の向かいに座り焼きそばを食べ始めた。鉄板の上には御代わり用の焼きそばが山盛りになっている。
それを横目で見ながらまたエレナとおしゃべりしながらが美味しく頂いた。
今夜の飲み物はさっぱりするリンゴジュースにしておいた。
「エレナさんは明日仕事なのでアルコールは無しで!」
「えー、少しぐらいなら支障は出ないよ?」
「私、今夜はもう少しエレナさんとおしゃべりしたいな?」
上目遣いでお願いしてみる。
「そうだね!そうしよう!」
ここぞとばかりの子供の武器使用にどうやら納得してくれたようだ。
今日はこの後、エレナを送ってそのままお泊りする予定なので、昨夜のように酔って即寝しないでもっとお話ししたかったのだ。
夕食が終わると4人で歩きながらエレナのお宅を目指す。
頬に当たる夜風が気持ちよかった。
エレナの住み家は冒険者ギルド近くの2階建てのアパート。
エレナの部屋はそのアパートの1階の角部屋のようだ。
ドアノブを握ると一瞬光り、その後カチャっと小さな音がしてドアが開いた。この世界では一般的なシステムだ。
ここでフェルとディーゴとは一晩お別れだ。
ディーゴが『よーし犬っころ!競争だ!』と言って竜型で飛び立ったので、フェルも狼型になって慌てて追いかけるように飛んでいった。私ももっと風魔法を極めればフェルの様に飛べるかな?と思ったり……
「さっ、狭いところだけど入って入って!」
「うん、お邪魔しまーす」
小さな玄関から整頓された部屋の様子が見える。
靴を脱いで中に入るとエレナが「狭いところだけど」と言いながら中を案内してくれた。
居間の奥には寝室がありその室内にはウォークインクローゼットもある。クローゼットの中にはギルドの制服がいくつかかかっていた。制服って、いいよね!
他はトイレとお風呂、調理場と納戸があった。
「今日も食べすぎちゃったから、本気で運動はじめなきゃ……」
「エレナさんはそんなに太ってないよ!」
そう言って抱き着いた。お腹がぽよんんとしてて抱き心地が良かった。
「クッ、ダメよ甘やかしたら!ニコちゃんが言うならいいかな?ってなっちゃうから!すぐにコロコロになっちゃうから!」
私はそんなエレナの叫びを聞きながら、その胸に顔を埋めスハスハしながら無言で抱きしめ続けた。
「幸いここは1階だし、少しづつ頑張ってみるわ」
「うん。また拠点にも遊びにきてね」
「そうね。来週も行っても良い?」
「もちろんだよ!またお泊りする?」
「ニコちゃんが良いなら、都合の悪い時は言ってね?」
「うん」
気付けばエレナの膝に頭が乗って膝枕で甘やかされていた。摩訶不思議アドベンチャーである。
2人の夜はまだまだこれから。
今日は寝れないかも、と頬がゆるゆるする私だった。
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