33.ニコレッタ、エレナと素敵な一日
拠点近くの訓練場所にやってきた。
早速エレナも挑戦するというので、安全を考慮してディーゴが加護を与えると、一時的にだが体が結界の膜で包まれた。これなら多少の落差で落下しても大丈夫だと思う。怪我はしないが精神的には怖いけどね。
エレナに加護の事を説明すると、「そんな、加護なんて私、困ります!」と困惑していたが、1日程度で消えるものだとディーゴが説明すると、それならと渋々納得していたようだ。
エレナにはむしろ一生続く本当の加護を与えてほしいなと思ったぐらいなのだが、今の反応を見る限りそれは嫌がるかな?と感じた。
結界は食事とかトイレとかお風呂とか、色々なタイミングでオンオフするのが結構面倒だしね。そんな私は普段からほぼオフだ。
結界は自分でも見えないからオンにしておくとつい忘れちゃうし、それでトイレに入れば大惨事になっちゃう……過去の失敗を思い出し遠くを眺め気持ちを落ち着かせる。
そんなことを考え一人赤面していた私を他所に、スタートしていたエレナが最初の網の目のネットをグイグイと登っている。だいたい3メートルぐらいの高さまで登る奴だ。登り切ると今度は長いつり橋、歩幅の広い不安定な板を付けた場所を歩くことになる。
腰が引けた格好で両サイドのロープにつかまりながら進むエレナ。下では三人が何があっても良いように待機している。それを渡り切れば今度は滑車にロープにつながっていてそれを掴んで降りる奴、ターザンロープだっけ?
ロープの前で暫く固まっていたけど、1分程度で踏ん切りがついたのか絶叫と共に降りてくるエレナ。
終点では私がしっかりと受け止める準備をして待つが、なんとか自力で降りることができてホッとする。
その後はボコボコと突起が生えた登り棒で上へと登り、その先に雲梯が5メートル程……エレナは登り棒をのぼりながらそれを見て「うっ」となり動かなくなったところで、今日は止めようと中断となった。
ディーゴに回収されるエレナ。
ちなみにその雲梯の後は下まで一気に落ちる滑り台からの砂地で200メートルダッシュが待っている。森の中にも砂地を作れる土魔法は優秀だと思う。
ゴールまでもう少しというところで1メートルと50センチの高さで交互にゴムが横に這わせてあるので、ひたすらくぐって飛んでを繰り返すゾーンが200メートル。最後に石柱が多数立ててあるゾーンを避けるように300メートル進む。
うなだれるエレナの手を引いて拠点へ戻ろうとしたら、エレナが私の肩を掴み荒い息の中、「ニコちゃんがやってるのを見たい」と言われた。
仕方なくフェルに狼に戻ってもらいエレナを横向きに座らせる。
大混乱するエレナをのせ、フェルはゆっくりと中心あたりに移動していた。
私も懐かしさを感じつつ少しだけ体をほぐしながらスタート地点へと向かった。
久しぶりのアスレチックのスタート地点。
まずは軽く飛び上がり、網の中間あたりのロープを蹴って登り切ると、つり橋を飛ぶように3歩程度で越えた後、ディーゴが戻してくれたターザンロープに片手で捕まり滑り降り、着地後は即座に登り棒に手を添え、手足の力で跳ねるように雲梯の上へ……
そのまま雲梯の上を走り終え滑り台の中間あたりを一度蹴り着地する。
後は砂場を全力で駆け、ゴムの上を数度のジャンプで飛び越えた。最後の石柱エリアはその石柱の先を使って走り抜け見事ゴールした。若干手抜きな一周であったが、特に後半のゴムのところの上下運動や、石柱を普通に走り抜けるのはちょっとしんどい。
フェルに乗ったままのエレナも傍までやってくると、「ニコちゃんって本当にすごいのね……」と少し疲れたような顔をしてつぶやいていた。
その後、私に対抗するように弾丸のように駆け抜ける狼なフェルと、ほぼ空を飛んでしまっているディーゴがどっちが早いかで言い争いをしていた。
当然のようにそれを無視して、少し千鳥足のエレナと一緒に食事スペースまで戻ってきた。すかさずキンキンに冷えたアップルジュースとミルクアイスをテーブルに置き、徐々に復活してゆくエレナを見て癒された。
暫くすると「ニコ!ひどいじゃないか!」と文句を言いながら人型フェルがやってきた。ディーゴは何も言わずに焼き場まで行くと「お肉ー!」と言ってビッグボア肉を焼き始めた。私はそんな2人を生暖かい目で見ていた。
「ディーゴ、余り食べると夕食が食べられないから控えめにねー!」
「分かってる!腹八分目ってやつだな!」
そう言いつつかなり大きな塊を分厚く切って焼き始めてるディーゴ。
まあディーゴなら大丈夫だろうと思いながら、まだ小声で文句を言っているフェルを片手間で撫で誤魔化していた。
フェルの機嫌が直ったところで私も焼き台のとことへ移動する。
すっかり元気になったエレナも一緒に並んで畑で採れたナスとビーマン、アスパラを大きめにカットして焼いてゆく。
魔法のバッグから暇な時に大量に茹でて実をバラしてあるコーンに、こちらも茹でて確保していたさやえんどうを取り出して、それに採れたてトマトをカットしてサラダにした。
当然の様に作り置きしたマヨネーズを掛け、少し砂糖もふってみる。
焼き台をフェルに任せると、エレナと一緒に苺のプランター畑へ移動する。ここには時期をずらして一年を通して実がなる様に調整しているので、一度こうやってエレナと一緒に苺狩りがしたかったのだ。
もちろんバッグに入れておけば腐ったりはしないけど、やっぱり苺はこうしておしゃべりしながら直接摘んで食べるのが醍醐味だと思う。四季の変化が少ないこの森では私の密かな夢に一つが叶ってしまった。
もちろん実現するために5年以上かかったけどね。私はガーデニング女子では無かったから知識が皆無なところからのスタートしたのだから。
エレナはこの光景に目を輝かせ、私の言うがままに真っ赤になったその実を摘んで、口に放り込んでは頬を両手で押さえ悶えていた。私はそのエレナを生産者さんの立場でうんうんと満足そうに眺めていた。
食べ過ぎも昼食に支障がでるので量も程々にして適量を摘む。手持ちの篭いっぱいに収穫したら拠点へと戻った。
すでにフェルたちは焼き終わった食材を皿に入れ待ち構えていたので、「ごめんごめん」と謝りながら苺をざるに入れ軽く洗うとヘタを切る。エレナもそれに倣うようにして手伝ってくれた。
準備が終わると魔法のバッグからミキサーを取り出し、上部の容器に詰みたての苺を投入。それにミルク、レモン汁、シロップと適当に追加して魔力を注ぎミキサーを起動した。
あっという間に2杯分程度の苺ミルクが完成した。
それをグラスに注ぎ、フェルとディーゴが準備し終えたテーブルに並んで座る。
「では、「いただきまーす!」」
私とエレナは笑顔で食べ始めた。
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