32.ニコレッタ、エレナとの余暇を堪能する。
その後は特にトラブルもなくお腹も満ちてきた。
私以外の三人にはキンキンに冷えたビールも解禁する。
その美味しさにテンションマックスで浮かれて、楽しく飲みまくった三人は意気投合しているようだが、ちょっとお酒臭くなったエレナに抱き着かれると、その匂いでフラフラしてしまう。この幼い体が憎い!
何とか逃げ出し距離を取って見守ると今度はディーゴに絡んでいるようで、いつ間にかエレナの顔はディーゴのぽよよんに埋もれていた。思わず「おお!」と声をあげてしまった。何が"おお"なんだろう?私も匂いで少し酔ったかな?
そのまま寝落ちしたエレナを横抱きにしてディーゴがベッドまで運んでくれたので、私も浄化を使って全身の匂いを消し去った後、急いで寝間着に着替えベッドに潜り込む。
さらにエレナにも浄化をかけ焼肉臭を消しておく。さらにはそのお口に向かって念入りに浄化をかけアルコール臭を消し去って。
アルコール臭もすっかり消えたので、そのまま寝ぼけて抱き着いてくるエレナに身を任せ、温かい腕に包まれ目を閉じた。事前に打ち合わせ通りに今日はフェルとディーゴには居間の方で寝てもらった。
予定していたおしゃべりしながらの寝落ちは出来なかったけど、これはこれで良いかと思った。良い夢見るぞと気合を入れて、早々に意識を手放した。
ぼんやりとした意識の中、気付けば私はエレナと至近距離で見つめ合う。
顔には熱い吐息がかかりドキドキと心臓が激しく動いている。
さらに熱い眼差しで見つめる瞳がドンドン近づいてくる。
「あ、ダメだよ……エレナさん?待って待って……まだ私、心の準備が……」
そう言って断るが、心の中ではそのままゴー!と叫んでいた。そして唇を尖らせエレナの唇を待ち構え受け入れる。
一度、私の唇から離したエレナに「ダメって、言ったのに……」とつぶやきながら幸せを感じ目を瞑る。さらに口の中に侵入してきたそれを受け入れ……
「ほへ」
急に変な声が聞こえ目を開けた。
目の前にはエレナの顔がある。
おもむろに光の魔法で小さな明かりをつける。
明かりの中に映るエレナの顔は赤く染まっていた。
「ご、ごめんねニコちゃん。寝顔が可愛くて見つめてたら、急に"ダメ"って色っぽい声を出すから……変な声出ちゃった」
どうやら、全ては私の夢、妄想だったようだ。
さらに言うとそんな私が放ったダメな感じの寝言を、エレナにしっかりと聞かれてしまったようだ。もう穴を掘って潜ろうかな?幸い土魔法なら自信はある。多分2秒でマントルまで潜れる……かもしれない。
「ふふふ。照れるニコちゃんも可愛いね。でも私、いつの間にか寝ちゃってたみだいで。飲みすぎちゃったから覚えてないんだけど、何かやらかしたりしてないよね?」
そう言うエレナの言葉に、ディーゴのぽよよんに挟まれているエレナを思い出し頬が緩む。
「えっ?待って?私本当に何も覚えてないんだけど?」
「大丈夫。エレナさんは無事だよ。酔いつぶれたエレナさんをディーゴが運んでくれただけだから」
「ディーゴ様が……」
困惑するエレナにキュンとしてまた頬が緩む。
「大丈夫大丈夫。それより、まだ眠くないならもう少しおしゃべりする?」
「うん、する!」
そんなエレナと明日の予定などを楽しくおしゃべり。気づけば私はいつの間に意識がなくなっていた。
翌朝、目を開けると目の前にはエレナの顔があった。
そして私は腕枕をされ、お腹をぼふぼふと心地よく刺激されている。
私は再び目を閉じた。
「いやニコちゃん?もう朝だよ?」
「分かってる。分かってるけど……エレナさんは私を寝かしつけようとしているよね?よって私は二度寝をすることに決めた」
「いや待って?気持ちは分かるけどね。今日は運動したりする予定でしょ?だからそろそろ起きないと……」
そう言われて仕方なしに枕元の時計を……10時を過ぎていた。
「寝すぎたね」
そう言って体を起こしベッドを降りる。
着替えようと棚から服を取り出すと、気付けばエレナに着替えを手伝われていた。
エレナに「ニコちゃーん、腕をハーイってしてー」とか言われ条件反射で手を上げてしまったが、この世界でのバンザーイとかなのだろうか?そんなことを寝ぼけ気味の頭で考えている間に、寝間着のズボンが脱がされていた。
ハッとしてエレナから距離を取り、光速でパンツを履き替えズボンも履いた。危なかった。もう少しでエレナがママになるところだった……どうやらまだ私は寝ぼけているらしい。何がママなのか自分で自分が理解できなかった。
勝手に混乱する私を他所に、昨日はそのまま寝てしまったエレナもさっと身だしなみを整え終わっていた。
一緒に拠点を出ると外のテーブル前には2人がすでに人型で座って朝のティータイムをしていたようだ。
起きてきた私に気付いたフェルは「おはようニコ、コーヒーで良いか?」と聞くのでうなづき、横を向き「エレナさんは何飲む?」と聞くと「ニコちゃんと同じの飲みたいな?」と言われ頬を緩ませる。
フェルもすぐに了解したようでコーヒーを入れ始めた。
良い匂いが立ち込める中、テーブルに座るとディーゴがサンドイッチとサラダが乗った大皿を二つ持ってきた。
そんなディーゴにおはようと声を掛けると、「おはよーニコ。今日はワイバーン肉の筋煮込み挟んだぞ!」と言うので、お礼を言いながら抱き着いて頭に乗るぽよよんを堪能した。良い圧迫感だった。
ディーゴは筋煮込みを食べさせたかった私の思惑を予想済みと言わんばかりのメニューを出してくる。出来るドラゴンは違うなとひとり唸っていた。
エレナはミルクと砂糖を入れ少し甘めのカフェラテが気に入ったようだ。筋煮込みのサンドイッチも大喜びで食べていた。
美味しい朝食を済ませた私たちは少し休憩を挟み200メートル程離れた訓練場所まで移動する。
ひらけた場所にはフェルたちとの戦闘の跡がちらほら……その外周には自慢のアスレチックがぐるりと設置されてるので、一周回れば良い運動になる。
これ作ったのは7~8才の頃だっただろうか?すぐに飽きて使わなくなったけど……最初は1周するのに10分程度かかったそれも、今では鼻歌まじりで1分もかからないからね。
そんな広場を見て、エレナは驚き少し引いていたように見えたが、すぐに気合を入れ直したようでぐっと拳を握っていた。
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