表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
[完結]捨てられ聖女と森の主・妹のためにと捨てられたんですけど?  作者: 安ころもっち


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/79

28.ニコレッタ、ちょっとした悪戯を

のんびりと歩く中、ようやく詰所にまで到着した。


「大変だったんだってな!」

そう言って迎えてくれたノルベルトは、私の隣を二度見した後、固まっていた。


「ノルベルトさん?」

呼びかけるとハッとして、左右を確認する挙動不審なノルベルト。


「ニコちゃん、こちらのご婦人は、こちらの男性と、その、ご夫婦とか……」

「「誰がこんな奴と!」」

2人に凄い形相で突っ込まれるノルベルト。


そして、真っ赤な顔になったノルベルトはあきらかにディーゴに見惚れているように見えた。


「えーと、こちら、フェル。そしてこっちがディーゴ。フェルは分ると思うけど、ディーゴはダークドラゴンです」

「あ、フェル様。いつもお世話になってます。ディーゴ様、お初にお目にかかります。素敵なドラゴンですね。赤がとっても素敵です。さすがダークドラ、ゴ……えっ?」

もう何を言っているのだと思ったが、少し悪戯が成功したようで楽しい。


そしてまた固まるノルベルトの腰をパンと叩くと、ディーゴがそれを真似してバシーンと叩きノルベルトはくの字になって呻いていた。


「もう!加減してよディーゴ」

「そ、そうか。すまんな、その、ノルデッシャロとやら」

なんだその関西弁のような名前は。


「ノ、ノルベルト、と申します。よろしくお願いいたします。ディーゴ様」

ノルベルトはそう言って深く礼をした後、そのまま私の手をグイっと掴んで睨まれた。そのまま小声で説明をする。


「えーと、最近っていうか二日程前?フェルが人型に変身できるようになっちゃって、それでね、谷、えーっと黒龍の谷だっけ?あそこの主。同じく仲良くなって人型になったら素敵なお姉さんでした」

「あー、分かったような分からないようだだが、お前、ギルドでも同じことやるなよ?エレナ卒倒するぞ?」

「うーん、そうだね」

やらない選択肢はない。


私はふへへと笑いながらノルベルトさんに弁当を手渡した。

今日は混ぜご飯に山菜の天ぷら、お肉の味噌炒めも入っているからそれなりにボリューミーだから足りるだろう。


「おう。ありがとな。じゃあ気を付けて。御二方もニコレッタ様をよろしくお願いいたします」

ノルベルトが2人に丁寧に礼をすると、2人も「うむ」「当然だ」と腰に両手を添えて偉そうにのけぞっていた。私の記憶を見たからか動きがちょっと俗っぽい気がするが、きっと元からだろう。私のせいではないはずだ。


また手を繋いで冒険者ギルドまでお散歩。


途中の屋台で串肉や揚げ肉、お店に寄って饅頭を大量に買ってバッグに収納する。自分で作るのが面倒な時の非常食だ。

冒険者ギルドに入ると、いつものようにカウンターから出てきたエレナが走ってきて私を抱きしめる。良い感触に頬が緩む。


そして顔を上げたエレナだが、左右をきょろきょろ。そしてフェルの方をポーと見惚れている。


「ニコちゃん、こちらの方々は?」

「えーと、こちら、フェル。そしてこっちがディーゴ。フェルは分ると思うけど、ディーゴはダークドラゴンです!」

途中ちょっと笑いそうになりながらも最後まで言い切った。


「あ、えーとフェルさんはフェル様で、こちらは初めましてなディーゴさんですね。その、ダークドラゴンは家名、ってことですよね?すみません。あまりその辺は詳しくないので……」

「ニコ、エレナは分ってなさそうだぞ?」

「この人間はエレナだな。うん覚えたぞ!」


まだポーとしてフェルを見ているエレナの手を引きいつもの談話室へ。周りの冒険者達からも2人に視線が集まっているが気にしないでおこう。

エレナを座らせ改めて紹介しておく。


「まずはフェル。最近人型に変身できるようになったので、こうなりました」

「はい。とっても素敵です」

うっとりとしているエレナに、まあ仕方ないかなとも思う。


「こっちはディーゴ。黒龍の谷の主でダークドラゴンで、この度めでたくお友達になりました。フェルとは喧嘩友達のような感じかな?」

「はい。ではニコ様、フェル様とディーゴ様は、恋人とかでは無いという事ですよね?」

「まあ、そうだろうね?」

やっぱりエレナの様子がおかしい。というかフェルしか見てないが、これはガチ恋という奴なのだろうか?


「えっ?ちょっと待って!」

急にディーゴの方を見て叫ぶエレナ。やっと思っていた反応が来てちょっと嬉しい。


「ニコちゃん!ディーゴ様ってダークドラゴンって、あの、神獣であるダークドラゴン様ってことで合ってる?間違いとかじゃなく?冗談ってことでもなく?」

「そうだぞ!俺はダークドラゴン様だ!ひれ伏すが良い!」

そう言って人化を解いて小さな竜へと戻る。大きさはかなり控えめだ。自重することをすぐに覚えたディーゴは中々に優秀だと思う。


「ちなみにフェルもだけど本当の姿は5メートルぐらいあるよ」

そう言うと、フェルも対抗するように人化を解く。そしてディーゴより一回り大きくなると、ディーゴに向かってドヤってみせる。挑発するのはやめてほしい。


『おい!調子に乗ってるなよ犬っころ!』

そう言って少し大きくなるディーゴ。


『お前こそ!自重することを覚えてほしいものだ。蜥蜴頭はこれだから……』

そう言いつつもまた大きくなるフェル。


「たしかに、フェル様に、ダークドラゴン様なディーゴ様、ですね」

エレナがそう言ったところで、さらにディーゴが口元のギギギと噛みしめているので、また大きくなるのは分り切ってたので……


「2人とも!怒るよ!」

頬を膨らまして言ってみる。


シュンとなった2人はすぐに人型へと戻り、頭を下げ謝ってきた。


まだ夢見心地になっているエレナの前に弁当を置き現実へと戻す。

何度か深呼吸したエレナは弁当を開け笑顔を見せた。やはり美味しい物には人を引き付ける何かがあるのさ。と思っていたが、美味しさに感嘆の声をあげるエレナは、やはりフェルへ視線を泳がせながらの昼食となった。


フェルとディーゴはまだぎこちない手つきでスプーンを掴みガツガツと弁当を掻き込んでいたが、見目が良いとそれもまた良い感じに見えてしまう。世の中やっぱ顔だなとしみじみ思ってしまった。


食べ終わったディーゴは口の周りに味噌ダレなんかを付け、「勝った!」と勝ち誇っていたので、「はいはい、良かったね」と言ってハンカチを出して拭いてあげる。

至近距離の美人さんがウーと口を尖らせ、私に世話をされようとしているのを見てキュンとしてしまった。


それを見てエレナがポケットからハンカチを出すと、遅れて食べ終わり悔しそうにしているフェルの口元を、真っ赤になりながら拭っていた。

フェルは「おう!すまんな!」と言って笑うと、エレナはハンカチを持ったまま動かなくなった。


私はそれを微笑ましく眺めながら、デザートのアイスを取り出しシロップをかけて3人の前に置いた。これはディーゴの冷気の魔法の力を借りて作ったものだ。フェルは風魔法が得意だが、ディーゴは火と氷が得意らしい。

もちろん2人とも、どの魔法も私よりうまく使えるけどね。土魔法だけは私の得意分野だから負ける気はしないけど……あ、聖魔法もだね。と自分の一番の得意属性の事を思い出しながら、目の前のアイスを口に放り込んだ。


幸いなことに2人ともアイスはスプーンで綺麗に食べることができていた。エレナも再起動して、熱い眼差しでフェルを見ながら冷たいアイスを堪能したようだ。


取りあえずお世話になっている2人への顔見せも終わり、ギルドに城へ届ける分のメープルシロップを納品して森へと帰る。流石に今回は連絡事項は何も無かったようでホッとする。


新たな父母、いや違うな。新たな兄と姉をゲットした私は、せめて暫くは幸せな日々であれ!と切に願ったのは言うまでもなかった。

ブクマ、評価、励みになります。感想お気軽にお書きください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ