26.ニコレッタ、新たな契約に悩む
ダークドラゴンの自己紹介は続く。
『俺は普段は北の山の中にある谷、人間たちが言う黒竜の谷って所に住んでいる!だけど最近、谷にいる精霊たちが面白い人間がいると教えてくれた!』
「黒竜の谷は予想通りだったけど、精霊たちって何?どんな噂かも気になるけど……」
『精霊は精霊だぞ?魔力を食べてる虫みたいな?そいつらが。なんか凄い魔力を持った聖女いたって。強いのか?って言ったら強いけど美味しそうって言ってた!だから来た!』
「美味しいって、竜は人間を食べるの?」
私は身の危険を感じ身構えながら確認する。
『人間なんて食べるわけないだろ?オークとかの方が油キッシュでうまいからな!ブレスで軽く炙ると香ばしいから人間にも今度食わしてやるよ!』
「いや、オーク要らないかな?」
私はオークは見たことないけど、イメージ通りなら大きな豚なんだろうなと頭の中で想像してみたが、多分食べるのは無理だと思った。
「あっ、そう言えば結界あったよね?壊しちゃった?」
結界の事を思い出して少し焦る。
『結界?ここにもあったあの変な膜のことだよな?』
「そうそう」
『あれは素通りできる奴だろ?あまり頭良くない奴等が人間襲おうとした時に引っかかる奴だからな!俺たちのような知能のある者なら引っかかる奴はいねーよ』
やはり悪意が無いなら結界は素通りできるようだ。
ゆっくりとフェルに視線を送ると気まずそうに顔を逸らしていた。
『じゃあ、契約だな!』
ドラゴンが笑顔でこちらに迫ってくる。
「いや早いよ!まだ知り合ってそれほど経ってないし……それに、本日二度目の全裸は精神的に……」
『俺は天才だから変化もうまいぞ!やったことないけど。それに俺なら絶対に大丈夫だから!な?俺と契約してみようぜ!』
ドラゴンがグイグイとにじり寄ってくるので一歩下がる。
「ちょ、いや、一日、明日の朝までで良いから待って。もう少し考えたいし、フェルとも相談するから……」
『えー?じゃあ、一日だけだぞ?明日の朝には決めてくれよな!』
「分かった」
こうして、私は朝までに結論を出すことになった。
私は、夜遅くまでドラゴンに色々確認したり、フェルとも相談したりした。
◆◇◆◇◆
翌朝、眠い目を擦り目覚めると拠点の入り口から覗いているドラゴンが視界に映る。壁の横からひょっこり顔をのぞかせているドラゴンは、フェルと同じように小型のサイズになっていてとても可愛い。
私はフェルの腕の中から抜け出すと、「ディーゴおはよう」と声をかけ抱き着いた。昨晩、ドラゴンさんでは呼びにくいのでディーゴと名を決めた。私の方もいつまでも人間呼びは嫌なのでニコと呼んでもらった。
抱きついたディーゴの鱗はカチカチだが、腹部は柔らかい皮膚になっている。きっとここが弱点なんだろうな。
『ニコ、お前今良からぬことを考えたか?』
「いや何も?」
何かを感じたディーゴ。おかしいな?殺気などは出てなかったはずだ。
『で、どうだ?俺と契約したくなっただろ!』
「あー、それなんだけど、本当に谷の方にはたまに帰れば大丈夫なんだよね?」
昨夜の内に色々と話し合っては見たのだが、再度確認してみる。
『昨日も言っただろ?あっちはたまに帰って大人しくしていろって脅せば、数か月は谷の外を目指したりはしないって!』
「うーん。あと、ちゃんと服を来たイメージで人型になるだよね?」
『もちろん!契約は初めてだがちゃんとできる!俺は凄いドラゴンだからな!』
「なら良いけど……」
いまいち不安が払拭されない感じがするが、昨日からグイグイとくるディーゴとは、すでにお友達のような感覚になってしまっている。
体調も問題なく回復している私は、ディーゴと契約することを決めた。
『ニコ、本当に良いのか?』
「あ、フェルおはよう!」
起きて早々不安そうな顔を見せるフェルに抱き着くと、ふわふわした胸元に顔をうずめふはふはしてみる。
「昨日も言ったでしょ?デメリットがないならディーゴとも契約してもいいかなって」
『そうか。ニコが良いなら何も言わないが……』
そう言いつつも、"なんで蜥蜴野郎と"、とか"私だけで良いでは無いか"、とか"ニコが強くなるのは良い事だがそれでも"、とか……いつまでも小声で愚痴っているフェルが、とても可愛いいと感じ、朝から心を和ませていた。
『じゃあ早速行くぞ!』
「あっ、うんよろしく」
ディーゴが元の大きさに戻ると少し屈んで右手を差し出してきた。
『俺はお前を友として認め契約を結んでやろう!俺の魔力を受け入れろ!俺もお前も魔力を受け入れてやる!さあこーい!』
フェルとは違う呪文のような言葉にまた吹き出しそうになる。というか少し吹き出してしまったが、気にせずに両手でディーゴの手を握り魔力を籠める。
またも暖かい魔力が体を駆け巡る。
ドンドン吸い取られる魔力に少し脱力し、全身を循環するディーゴの魔力に少し体が火照る。だが昨日程の脱力感はない。
そしてディーゴが光り輝くと、昨日と同じように目を瞑り光が収まるのを待っていた。
光が収まると、私は目を開けて良いものか迷っていた。
本当に、服を着ているのだろうか?初めてと言っていたのだから、「やっぱり失敗しちゃった」とか言ってポロリとかしていないだろうか?そんなことを考えていたら恥ずかしくなってさらに顔が熱くなる。
「おいニコ!もう目を開けてもいいぞ!」
「あ、うん。ディーゴ、服、ちゃんと着てるよね?」
「ああもちろんだ!俺は失敗なんてしねーからな!完璧な出来だ!」
私はディーゴの言葉を信じて目を開けた。
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