25.ニコレッタ、家族が増えたよ。
「フェル、私と契約して、家族になってよ!」
そう言われたフェルは目を見開いて固まっていた。
『家族、か……良いのか私で?それに、死ぬかもしれんぞ?』
歯切れの悪いフェルだが、私はフェルだから家族になりたかった。
「フェルだから良いんだよ?それに、私は死なないよ!まだまだこの世界でやりたいことはいーっぱいあるからね!」
そう言って笑う私にフェルは『絶対死ぬなよ!』と言って顔を私の頬に押し当てた。
「で、どうやるの?」
『うむ、では手を……』
私の正面に座ったフェルはまたむくむくと元の大きさに戻る。そして掌を上に向けを私の胸の前あたりに差し出した。私はその手に重ねるように両手を置いた。肉球がぷにっとして癒される。
『我、汝を友と認め契約を結ぶ。我が魔力を受け入れ、汝も魔力を捧げよ』
真面目な顔をしたフェルがそう言うので、少し笑いそうになるが何とか堪えていると、両手にフェルの魔力を感じて暖かくなる。私も言われるままに魔力を籠める。
すぐにお互いの魔力が混ざり合う感覚に少し頭がぼんやりとする。全身が火照る感覚にさらに意識が朦朧とする。フェルと繋いだ手からはとめどなく魔力が流れ出て、それと同じようにフェルの魔力が体内を駆け巡る。
そして……
目の前のフェルは少しづつ光を強め、遂に眩しさに目を瞑ってしまう。瞼を閉じていても感じる光に少し不安を感じる中、さらに体の力が抜けてゆく。手を離し座り込む私は、やっと光が収まったと感じ目を開けた。
私の目の前には、銀色の長い髪の美少年……逞しく割れた腹筋……
そして、その腹筋の前にはそそりたつ……
「ひゃわぁーーー!!!」
我ながら可笑しな悲鳴を上げて顔を両手で覆う。
「フェフェフェフェ……」
「どうしたニコ!」
「か、か、か」
「身体が何かおかしいのか!くっそ!やっぱり無事には済まなかったじゃないか!クソ蜥蜴のせいでニコが!」
慌てたフェル……だったと思われる青年が、私に近づき両肩にはしっかりと手が……もちろん私はその間も目はぎゅっと瞑ったままだ。
『おぬし、なぜ滾らせているかは知らんが、人型なら服を纏わせるようにせんと、ニコも困っておるだろ?』
「そう、なのか?」
私は目を瞑ったまま首をブンブンと縦に振り続けた。
◆◇◆◇◆
『おーい、落ち着いたかー?』
疲れと恥ずかしさにより地面に寝そべっていた私を覗き込むドラコン。
「あー、もうそろそろ大丈夫、かな?」
10分程度は顔を両手で覆って悶えていた私は、ようやく身体を起こした。
当然のことながらすでにフェルは服を着ている。
なぜかスーツのような黒いスラックスと白いワイシャツだった。
私と契約し、流れ込んできた私の記憶の中にあるカッコイイ服というチョイスの中で、その姿に変化したそうだ。私には何の記憶も流れてこなかったけど?自分だけパーソナルな部分を覗かれた気がしてさらに恥ずかしくなる。
気怠さが抜けず地面に座り込んでいる私。
そんな私の背後に、フェルがそろりと移動し座る。
「えっ?えっ?」
戸惑う私を持ち上げ、胡坐をかいた自分の足の上に座らせる。
「ちょっと待って?どうしてこうなるの?」
「ん?普段からこんな感じだろ?」
「いや、まあ、そうなのかな?いやそうだとしても……うーん」
反応に困る。
確かにフェルは丸まって私はそれに抱かれるようにして眠ることも多い。
フェルは人型になってもイメージ通りの銀の長髪で頭にはふわふわした耳。手や足の甲にもふんわりとした毛が生えており、とても良いもふもふで心地良い。もちろん尻尾もフワフワと揺れていて抱きしめたくなる。
だが今のフェルは人型だ。前世を含めそんな美青年に抱きしめられたことなど無い私は、どうしたら良いか分からず戸惑うのは仕方ないことだろう。
「と、とりあえず降ろして!ちゃんと立てるから!」
「そうか?」
そう言って手を放すフェルから逃れ、思わずドラゴンの方へ移動する。
私は、背中に感じていたフェルの体温にドキドキして熱くなっていた。
「はー、ひんやりすべすべだねー」
ドラゴンの翼に頬ずりすると心地よい冷えを感じてホッとしてしまう。フェルが悔しそうにこちらも見てるが、遠慮のないフェルには少し教育が必要だと感じる。
『気に入ったか!じゃあ俺とも契約しろ!きっともう大丈夫だ!人間も魔力が尋常じゃないぐらい増えてるだろ!』
「あー、確かに?」
翼に抱き着きながら自分の中にある魔力が何倍にも増えていることを感じる。だが、それとドラゴンと契約することは別問題だ。
「でもなー、私、まだドラゴンさんの事あまり知らないしなー」
『そうか?じゃあ俺の話を聞け!』
ドラゴンにそう言われ「仕方ないな、聞くだけ聞こう」と言って正面に座る。その横には付かず離れずな距離でフェルが、元の狼の姿に戻って座っていた。
「あっ!元には戻れるんだね!」
『当たり前だろ?』
そう言うフェルに、ばふっと飛びつき抱きしめる。
フェルも『ふふん』と機嫌よく迎え入れてくれたので、丸まったフェルのお腹にいつもの様に寄りかかった。
『俺はダークドラゴンだ!神獣にして最強の攻撃力を持つ神をも凌ぐ完璧な生命体だ!』
『何が神をも凌ぐだ。また天罰が下るぞ!』
『うっ、まあそれぐらい強いということだ。神には負けるがな』
フェルの天罰という言葉にドラゴンが顔を歪めている。
この世界では本当に天罰があるのかもしれない。
そんなことを考えながら、中々本題に入ってくれない2人のやり取りを楽しく眺めていた。
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