24.ニコレッタ、竜との遭遇
目の前に現れた巨大な黒いドラゴン。
ダークドラゴン、鑑定すると見たまんまの名が出てきた。
警戒して身構えっている私をジッと見るドラゴンに、もしかしたらフェルみたいに知的な存在なのではないかと感じた。
『お前、ちっちゃくなったか?』
思った通り喋り出したドラゴン。
だがちっちゃくってなんだ?私はどうせちっちゃいよ!もしかして私の魂が過去にはこのドラゴンと因縁が……
『だまれ!蜥蜴風情が!』
フェルが大声でそう返す。もしかして知り合いだった?
『うっさいよ犬っころ!』
『なんだとー!』
フェルとドラゴンが睨み合っている。
「ちょっとちょっと!喧嘩しないでよ!その様子だと2人は知り合いってことでいいんだよね?」
言い合いを見ていたら恐怖心もどこかに消えて2人に確認する。因縁の相手じゃなければ良いけど……こんな魔力の2人が戦ったらせっかく作った拠点が吹き飛んでしまう。
『おう人間!こいつとは旧知の仲?神獣仲間って奴だ!』
『知ってるってだけだろ!別に仲良くなんてしていない!』
やっぱり知り合いで良かったようだ。聞いた限りでは悪友みたいな感じか?
……いや、今、神獣仲間って言った?
「フェル、神獣仲間って何?」
『ん?神獣は神獣だが?』
どうやらフェルたちは神獣らしい。まあ神獣自体、どういったものか分からないけど。そもそもフェンリルだって前世ではファンタジー世界の生物だし?神獣って言われても何者なのか理解できない。
『人間、神獣は偉いんだぞ?神様の次に偉いんだ。供物は出し惜しみせずにたくさん捧げるのが良いぞ!』
そう言われて目を細めるドラゴン。翼をバサバサやるのは風圧が凄いので止めて欲しい。
「神獣さんかー、でっかいね!カッコイイ!」
そう言う私にドラゴンは『分かってるじゃないかー!』と言って翼を差し出してくれた。黒光りするその翼はカチカチですっごいです!
『ニコ!そんなのより私の方がすごいんだぞ!』
その声に振り返ると、ぐぐぐと大きくなってゆくフェル。それはドラゴンと同じような大きさになってやっと止まった。
「フェル、それが本当の姿?それとも大きくしてる感じ?」
『これが私の本来の姿だ!』
フェルはどことなく誇らしそうに背筋を伸ばしお座りしている。
「じゃあ普段はどうして小さくなってたの?その方が楽だとか?」
『いや、まあ、良いでは無いか?今更そんな些細な事……』
言葉を濁すフェルに聞いちゃいけないことのような気がして追及を諦めた。
『俺も小さくなれるけど、あれは少し疲れるからな。でも人間、お前が俺と契約してくれるなら小さくなってやってもいいぞ?』
そうかそうか。やっぱり疲れるのか。じゃあ何でフェルは小さくなってたんだろ。
「フェル、小さくなるの疲れるんでしょ?なんで小さくなってたの?」
『ニコ!そんなことよりその蜥蜴の言う事をなんて無視して良いからな!』
「え?無視?……あ、待って?さっきドラゴンさん契約とか言った?」
さっき言っていたことを思い出して戸惑う私。
『人間……お前凄いな。俺の言葉半分無視とか……神様でももうちょっと真面目に聞くぞ?』
「ご、ごめんね。フェルの事の方が大事だったから」
私の返事に口を大きく開け驚いた様子のドラゴン。その顔にドラゴンって感情表現が豊かなんだなと思って見ていた。
『ほれみろ!ニコも私の方が大事なんだ!蜥蜴風情はとっとと尻尾を丸めて帰った方が良いぞ?ニコは私のだからな!』
『ぐぬぬぬ!じゃあお前が契約したら良いだろ犬っころ!』
この2人は何を言ってるんだろう。
「ねえ、そもそも私、契約って何か分からないんだけど?」
『ニコは気にしなくても良いことだ』
『犬っころが契約しないなら俺が契約してやる!契約すると力の一部が流れるからな!強くなれるぞ人間!』
『やめろ!早く山に帰れよクソ蜥蜴!』
『なにおー!』
また睨み合いが始まったので、2人の間に格子の壁を作り出す。もちろんそれでどうにかできるとは思っていないが……
『おお!凄いな!人間にしては魔法の展開速度が速い!やっぱり俺と契約しろよ。人間の世界でなら天下取れるぞ!』
「天下はいらないけど。でも契約についてはもう少し聞きたいかな?」
『おいニコ!』
「フェルは黙ってて。フェルは教えてくれないんでしょ?」
私の言葉にフェルがシュンと首を下げ元の小さな体に戻った。
思わず抱きしめて頭を撫でる。
『仲いいな……まあいい!契約はな、お互いの魔力と意思を共有して、互いを強化する絆を作るんだ。離れていても意思疎通もできる。便利だぞ?』
「おお!凄いねそれ」
離れていても意思疎通できるってところは良いなと思った。これなら昨日のようなことがあっても瞬時にフェルに助けを求められる……もう二度とあんな体験はしたくないけどね。
『ニコ、契約時には体への負担もかなり大きい。ましてや私は神獣の中でも一番だと言っても良いほどの魔力を持っている。一歩間違えばニコが死んでしまうことだってあるんだぞ?だから今のままで良いではないか?』
「あー、そう言うデメリットもあるんだね。確かにそれは怖いかな?」
フェルは私の事を大事に思ってくれてるんだな。そう思うと撫でる手に力がこもる。
喉の部分を軽くぐりぐりすると気持ちよさそうな顔をするフェルに、思わず「ここか!ここが良いんか!」と夢中になってしまった。
『なあ、お前たちいつもそんなにイチャついてるのか?』
『イチャついてるわけじゃない!』「いや違うし!」
そんなにハッキリ言われるとかなり照れる。フェルと一緒に真っ赤になって否定してみるが、どう考えてもイチャついてましたよね私、と反省する。
『まあ良いか。人間、お前の魔力なら十分受け入れられると思うぞ?でも、犬っころはやっぱり臆病なんだな』
『お前は楽観的すぎるんだよ蜥蜴野郎!』
また言い合いを始める2人だが、正直契約には興味がある。
フェルともっと繋がりが欲しい。
私はもう、家族はフェルだけなのだから……
「フェル、私と契約して、家族になってよ!」
私はフェルの目をしっかりと見ながらそう言い切った。
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