13.ニコレッタ、陛下に秘密を暴露する
ニコニコと笑う国王陛下に生い立ちを話す。
2才で森に捨てられその頃にはすでに魔法が使えていたこと。土魔法により雨風を凌ぎ野草を食べて育ったこと。そして今は魔物を狩って冒険者ギルドへ納品して森の中で生活していること。
とりあえずこんな感じでどうかな?とフェルの事を抜きに話してみた。
「ニコちゃん、って呼んでも良いかな?」
「どうぞ」
話を終えた私にそう言う陛下は、当然ながら詳しい説明を求められた。
「ニコちゃんは、森の主である恐ろしい狼には出会わなかったかな?」
「最初の数年は森の入り口付近で生活していました。その後、奥まで進むと多分陛下がおっしゃっている狼を見ましたが、こちらから近づかなければ襲ってはこなかったです」
馬車に揺られながら考えていた為、滑らかに出てきた作り話に陛下はうんうんと頷きながら笑顔を見せた。
「では、師匠、と言うのはどこに住んでいるのかね?」
変な声が出そうになった。
「冒険者ギルドからは定期的に色々な情報が集まって来ていてね」
私は冒険者ギルドの長をしているあのおっさんの顔を思い浮かべ、今度尻を蹴ってやろうと思った。
「あれは、身を守るための嘘です」
「身を守る?」
「はい……内緒にして頂けるなら話します」
フェルの話さえしなければ、もはや多少の暴露も仕方がないだろう。私はそう思って覚悟を決めた。
「うむ。ここでの話は秘密としよう。皆も良いな?」
そう言って室内をぐるりと見渡す陛下。
それにつられて私も見回すと皆が頭を下げているので、どうやら肯定ということなのだろう。
「では……」
そう言って目の前であの容器を少し大きめで作り出す。
それを見て陛下が驚き、どこからが小さく「おお」と声も聞こえてきた。
ついでにとばかりにその容器の側面に薔薇のような模様を盛る。反対側には部屋に掲げてあった王家の紋章を見ながら同じように盛る。完成したその大人の拳ほどの容器を陛下に手渡した。
光を反射して輝くその容器を手に取り、照明に翳して見たりしていた陛下。
「凄い、ものだな」
しばらくするとそう言った陛下は急に横を向く。
「どうだ?」
そう言って侍女の1人に容器を手渡していた。
陛下から声をかけられたその赤髪の侍女は暫くそれを観察した後、手の上で同じような何かを作り始めた。
「これが、限界でしょうね」
大きく息をはいてから陛下に私が作った容器とともに出来上がったそれを手渡す。
底の方が同じ状にステンレスになっているように見えるが、紋章などは丸みを帯びてはっきりしない。何より底の方以外は土色だ。
「そうか。王国魔道師筆頭のお前でも無理となれば……」
魔導士筆頭ってなんだよ!とつっこみそうになった。侍女の恰好をさせてそんな人を忍ばせるなんてなんて卑怯な……そう思いながらも顔には出さない様に引き締める。
「なんて顔をしてるんだ」
私に視線を合わせた陛下はそう言って笑った。それを見てぐぬぬと歯噛みしながら悔しいのでその筆頭様に話しかける。
「途中から材質を変えるのではなく、最初から強くイメージしてそれを作り出せば魔力の節約になります。後は慣れです」
「ほぉ」
そう言いながら顎に手をあて考えている。綺麗なお姉さんなのでそれがとても知的で絵になるなと見惚れてしまう。
「的確な助言痛み入る。私はエレオノーレ・オルランディ。そこのごっついのの姉だ。気軽にエレノちゃん、もしくはお姉様と呼んでくれ」
そう言って笑うエレオノーレに「じゃあエレノさんで……」と無難に返しておいた。
その後は所用があると出ていった陛下の代わりに、エレオノーレ以外の侍女が用意した御菓子類をつまみながらしばしの歓談となった。
私はエレオノーレの膝の上。手を菓子に向けるとエレオノーレがそれを取り餌付けされる。それを飲み込むと紅茶が入ったカップが口元に……至れり尽くせりであったが、さすがにもうそう言う年では無いので恥ずかしい。
だが膝から降ろしてほしいと言っても笑顔で却下される。
それを見て第六隊隊長のオルランディは何とも言えない表情で見ていた。もしかしたらこの状況は自分も経験があるのかもしれない。知らんけど。
副長のレオネッティはすでに厳しい視線ではなくなっており、気まずそうな表情をしている。私が嘘をついてないのだと分かったからだろう。本当はかなりの嘘で塗り固めてる。心の中でしっかりと謝っておこう。
歓談の中、オルランディ隊長が今までの経緯を話してくれた。
まず私の事がばれたのは冒険者ギルドでの登録だ。登録する時に血を登録したので、その際に抽出した魔力情報により身バレしたのだとか。遺伝子情報のデータベースでもあるのかな?
王家はそのことを知り、クレメンティ家が何らかの理由で私を隠しているのかも?と考えていたそうだ。そしてクレメンティ家を調査すると同時に、私の動向は監視されていたと……
で、あのバカなギルド長たちのいざこざに思わず介入。今に至ると……迷惑なおっさんたちによりこうなってしまったが、いずれはそうなっていたのだからまあ良いだろうと諦めた。
私はオルランディ隊長に「森で狩りをするとしたら……」と聞いてみた。
隊長は「第六隊の精鋭10名で組んでいけばなんとかなるが……主は無理だろうな、見たことないが」と言われた。まあ私もフェルに勝つのは無理だろうと思う。本気で狩りをする時は見えないし。
そうこう言っている間に陛下がニコニコしながら戻ってきた。それと同時に少し早いが、と言いつつ夕食も準備され、第六隊の2人とエレオノーレは退室していった。
目の前には肉、魚、果物と食べきれない料理が並んでいる。好きなだけ食べて良いそうなので行儀が悪いが少しづつつまんでゆく。
肉!デミグラっぽいソースうまっ!魚!これ醤油だよね!どこにも売ってなかったのに!これは、桃のようなシャーベットだ!シャクシャクとして甘くておいしい!紅茶はさっき飲んだのとは違う上品な味!
私はかなりテンションを上げ、気付けばバッグからあれを取り出していた。
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