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[完結]捨てられ聖女と森の主・妹のためにと捨てられたんですけど?  作者: 安ころもっち


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12.ニコレッタ、拉致られる

オルランディたちは顔を見合わせた後、また笑顔を見せながら話しかけてくる。


「じゃあ、ニコレッタちゃんがどうやって今まで生きてきたのか、そう言う事も含めてもう少し詳しく教えてくれるかな?できればお城で美味しいお菓子を食べながら……」

「いや、と言ったら?」

「これは一応王命でね。もちろん育ててくれた方もいらっしゃるだろ?その方たちと一緒にどうだい?悪いようにはしないからさ」

「育ててくれた人なんていない。ずっと一人で生きてきたから」

このやり取りに隣のレオネッティや背後の兵士たちは「嘘だろ?」「何を言ってんだ?」など、思い思いの事を呟きながら睨みつけてきた。面倒だなと思った私はいっそ全員を蹴散らして森の奥まで走ろうかと考えた。


少なくとも兵士たちを撒くのは簡単だろう。

目の前のオルランディさえいなければ……オルランディは私の魔力とあまり変わらない。その上装備もそれなりに良いものを身につけている上に多勢に無勢。ゆっくりと考えた結果、私は抵抗をやめた。


「今すぐに行く?」

「できればそうして欲しいかな?だが一緒に連れてきたい人がいれば迎えに行くが……」

私は大きく息をはき、首を左右に振って「大丈夫」と警戒を解いた。


道の外れを指差し「近くに馬車を待機させてある」と言って歩き出したオルランディたちについてゆく。


「それと、こちらは無理にとは言わないが、さっきの回復魔法が自動で発動したような現象は何か教えてくれたら嬉しいかな?」

不意に言われた言葉に足を止める。


「そう言う、体質なので……」

私の言い訳に「そうかい」と短く返したオルランディ。


ペンダントはなるべく見つからないようにしようと思った。

少し歩くと不自然に茂みができていたが、オルランディが懐から黒い塊を取り出すと、それに魔力を少し流す。それに反応するように目の前の茂みがスッと消え、馬車が3台現れた。


一番後ろの馬車にはあの2人も乗せられているようで、私は先頭の馬車に乗るよう促された。同乗するのはオルランディとレオネッティだけのようだ。兵士たちは残りの2台の馬車に乗り込み、何人かは別の馬に乗り、走り出した馬車を囲むようにして移動を開始した。


車内ではオルランディが色々と聞いてくるが、1人で生きてきたことだけを話し、ほとんど無視しておいた。


ほどなくして馬車は王都の中心部まで進み、窓から見える騒がし街並みをチラリと確認し少しだけ心を躍らせたが、目の前の男たちを見てやっぱり早く帰りたいと思ってしまった。

1時間程経っただろうか?馬車は止まりオルランディたちは馬車を降りた。私はそのまま待機ということだが、窓から覗いた巨大な城の壁に慄いた。窓の上方を見るが近すぎるのか上が見えない。

城の反対側を見てもすでに城壁の内部なのだろう。空と高い壁しか見えない。若干不安になってきたが、いざとなれば全力で逃げようと思っていた。人の多い都市部だ。逃げに徹したら何とかなる……そう思った。


そんなことを考えていると馬車のドアが開く。

馬車を降りて再び上を見るがかろうじて城の上部が見えるが、じっくり見ていたら首が痛みそうだなと感じた。


そのまま2人に案内されるまま城の中へ入って行くが、広い通路の端には良く分からない甲冑やら絵画やらが並び、照明の魔道具は大きく派手で通路全体を照らす光を放っている。

コツコツと歩く音が響く中、通路の途中にある大きな扉の前で足を止めた2人。室内に軽くノックしてそのまま入室すると、こじんまりした部屋のソファに促され素直に座る。侍女がお菓子と飲み物を持ってきた。

早速それに手を出して口に放り込む。

饅頭のようなお菓子だが、それなりに柔らかくておいしかった。甘い果汁の飲み物も美味しかったが、温かいお茶でも良いかな?と思っていた。


その間も話しかけてくるオルランディは無視してそれなりの量を食べ終わった後、執事風の男がやってきて準備ができたと移動を急かされた。


すぐ隣の部屋まで移動をする。その扉の両脇に立っている兵士がノックして、オルランディたち2人のフルネームで訪問を告げそれと同時に扉を開けられた。


中はさほど大きくはないが、立派な机やソファをはじめ調度品にはゴテゴテとした装飾が施され、ちょっと下品な雰囲気を感じたが王家の威厳とかもあるのかな?と感じつつ、少し緊張しながら中へと入る。


目の前の目立つ位置のテーブルの前には長い金髪に両脇がくるりと外側にロールしており、口ひげを携えた男が一人……その男に向かってオルランディたちも膝をつく。


「聖騎士団第六隊、無事任務を終え戻ってまいりました」

「なによりだ」

このやり取りで目の前の男性はそれなりに高い地位なのだろうと思った。一緒に膝をつこうか迷ったが、誰かも分からないので少し警戒しつつ自然体を貫いた。


「無事任務を終えたということは、そちらがニコレッタ・クレメンティ殿であるか?」

「えっ、あ、はい。少し違くて、私はただのニコレッタです」

私の返答に首を傾げる目の前の男。


私の返答に不敬だと感じたのか部屋の隅に立っていた兵士たちが、少し前に出ようと足を出したが、目の前の男に手で制される。


「私は、この王国の長をしておる。ピエルルイジ・ユリシースと申すものだ。中身はただのおじさんだがな」

「ちょ、長ということは、国王陛下、様で……」

流石に慌てて膝をつこうとするが、陛下は「よいよい」と言って私の傍に近づき肩にそっと手を添える。


「詳しく、話を聞いても良いかな?」

そう言われて戸惑いつつも一度咳払いをして呼吸を整える。


「わ、私は、2才の時に森へと捨てられました。なんの教育も受けてませんから、言葉遣いには自信がない、です」

「いきなりとんでもない事情を聞いてしまったような気もするが、まずはゆっくり話してごらん。言葉遣いは気にする必要はない。目の前にいるのはただのおじさんだ」

そう言って笑う陛下だが、周りの兵士はそうは思ってはいないようだ。


きょろきょろと左右を見る私を見て陛下は殺気立っている兵たちに気付き、その兵たちに下がるように命じた。それを苦々しく思いながらもすぐさま部屋を出る兵士たち。こっちは無理に連れてこられただけなのに……


そんな理不尽を感じつつ室内も見渡すと、執事風の男が一人、侍女は二人、あとは陛下とオルランディたちだけだった。邪魔者もいなくなった室内で、当たり障りのない部分だけ辻褄を合わせて話していった。

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