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[完結]捨てられ聖女と森の主・妹のためにと捨てられたんですけど?  作者: 安ころもっち


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01.ニコレッタ、生まれ変わりました。

ご覧いただきありがとうございます。

最後に評価など頂けれは嬉しいです。


私はニコレッタ・クレメンティ。

もうすぐ2才になる。


母はソフィア。私を生んだ時に亡くなったそうだ。


後妻のロザリアは私をいつも睨みつける。

一年ほど前に腹違いとなる妹、ファビオラを生んだようだ。その可愛がり様は凄かった。いつも睨みつける顔しか見たことが無かったのに「アバババ」とかやってる。笑ってしまう。


それなりに優しかった父のベルナルドも最近は顔を見せなくなった。

侍女のマリカという女の子が世話してくれている。マリカは多分5~6才ぐらいだろう。たまに見せる笑顔はとても可愛い。だがまだまだ慣れないのかな?一生懸命世話してくれてるのは分かるけど、ちょっと私の扱いが雑なのだ。


兄のマルコはたまにやってきては私の頬をグリグリして反応を見て笑っている。思わず〇ね!と叫んでしまいそうになる。一応「あぶぶっ!」と可愛く抵抗してみる。今日も2~3分程グリグリしていたら満足して部屋を出ていった。


私はその背中を冷めた目で見ていた。



私の前世はフリーターだった。高校を出て営業職に就職したが、サビ残と上司のセクハラに耐え切れず無断欠勤からバイトを掛け持ちし日々を生きる底辺フリーター。そして22才の時、アル中のクソ親父に見つかりひと悶着。

最後はクソ親父のふらつく拳で殴られた拍子に、道端のコンクリに頭を打ち付け呆気なく人生が終わった。


次の瞬間には真っ白な空間に飛ばされる。

戸惑う私は神様というほわっとした白い影に会う。


その自称神様の言うには、クソ親父が役所に乗り込み私の戸籍を見せろと迫ったそうだ。ブロックしてあった私の戸籍は恫喝に負けた職員により開示され、隣町に住んでいた私のアパートで待ち伏せされたという経緯を聞いた。


耐え切れずにその場で泣き叫んだ。

どうして私だけが!怒りに震える私に神様は同情してくれたのか頭を優しく撫でてくれた。


それから1週間、準備期間だよ?と言われて何もない空間で神様と遊んだ。ストレスで幼児退行してしまったのかもしれない私は、あやとりやおままごとなど、目一杯遊び心から笑った。今思うと少し恥ずかしい。


その間にクソ親父は、取り調べ中に私の幻覚を見たようで、拘置所で苦悶の表情を浮かべ心臓発作で死んだ。私の住所をばらした職員も連日ニュースに取り上げられ精神的に遣られてしまったようで服毒自殺をしたようだ。

それを神様と一緒に映画でも見るようにキャッキャと笑いながら見ていた。気分はスッキリしたが、客観的に見ればサイコパスである。


そして一週間後、神様がもう思い残すことはないね?と聞くので、まだここに居たいと願った。神様は悲しそうな顔をしたのでごめんと謝り送ってもらうことにした。

なんとなく、送ってもらえば新たな人生が始まるのだと思っていた。


また優しく頭を撫でる神様に見送られ、私はその場に溶け込むように消え、新たな人生が始まった。


なのに……


どうして記憶はしっかりはっきりあるのかな?


目が空かないが意識はある。

耳もボアンボアンするが聞こえなくはない。何を言っているのか聞き取りにくいが日本語ではない何かを話しているが理解できる。


口には柔らかい何かが突っ込まれ、あーこれは良い乳。そう思って吸った。温くて薄くて不味かった。


だが生きるためには仕方ない。必死で吸った。吸いまくったさ。

そして今に至る。


乳母のセレナは侍女のマリカの母親だった。

マリカとは乳のみ姉妹になるのかな?セレナは私に日に5回ほど授乳した後、色々と忙しいようですぐに部屋を出ていってしまう。


そんな私は日々周りを観察し、生きる知恵を蓄えた。


ある日の朝、執事ジョルジョがやってきた。白髪頭に白い髭、紛うことなき執事であろうイケおじだ。私は足元の積み木をとにかく高く積み上げる作業に没頭していたが、それを崩してジョルジョに笑顔をむけた。


「ニコレッタ様……もうすぐ3才でございますね」

「うん」

思わず"そだねー"と言いそうになる。


「私の力が及ばす申し訳ありません。ニコレッタ様は聖女様だと言うのに……」

「どちた?」

ジョルジョが涙目になりながらそんなことを言う。聖女様ねー、懐かしいわ。たった1年前だけど。


私は1才になった時に受けた教会の洗礼を思い出す。



神父様が私に手をかざし、むにゃむにゃと何かを唱えた結果、聖魔法の素質があると言われ、それも聖女様に成れるほどの強い力を感じるとも言われた。それには屋敷の者達は大騒ぎになった。

だがすでに再婚していた父は、その時すでに子を身ごもっていた後妻のロザリアに夢中。ロザリアは私の聖女認定を忌々しく思っていたようだ。顔を歪めて睨まれたのを覚えている。



そんなことを思い出している私に、ジョルジョはポツリポツリと涙の理由(わけ)を話してくれた。


どうやら妹のファビオラも私と同じように聖魔法の素質があったらしい。微弱ですけどねと苦笑いするジョルジョ。

その事にロザリアは涙を流し喜び、そして父であるベルナルドに懇願したそうだ。ニコレッタはいずれ災いを呼ぶと……ニコレッタって私だよね?災いってなんぞ?


「なんで?」

「ニコレッタ様には難しい話かとおもいますが、お館様はファビオラ様を王家に嫁がせたいと思っているようで……それで、ニコレッタ様が邪魔になるので処分をと考えたようです」

「なんでだよ!」

思わず出た言葉にジョルジョが口を開け驚いている。やっべーどうしよー。


「ニ、ニコレッタ様は大人びているとは思ってましたが……実は流暢に話せたりします?」

「なんで?」

あえていつもの様に答えてみた。


無言のジョルジョだが多分聞き間違いだと思ってくれただろう。ギリギリセーフという奴だ。


「実は、ニコレッタ様は王太子殿下の婚約者になっているのですよ」

「いや聞いてねーよ!」

その瞬間、ジョルジョの目がカッと開く。


「やはり、ニコレッタ様は地頭(じあたま)がよろしいようで……話を続けますが良いでしょうか?」

「はい、どうぞ」

誤魔化すのを諦めた私に苦笑いしながら、ジョルジョが説明を続ける。

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