2-2:運命?
エドワルドの執事がテーブルにサラダや魚料理など沢山の食事を並べてくれた。はっきり見えなくても、香りだけで食欲をそそる。
「さ、食べようか」
「い、いただきます。神の祝福に感謝を」
ユリーカは祈りを捧げ、食べ始めた。一口ひと口噛み締め、久々のまともな料理に涙が零れそうだった。
「どれもとても美味しいです。今度、作り方を教えてください」
「ほほっ、いいですとも。私の秘伝のレシピで良ければ」
食事が一息ついたところで、次はエドワルドが自身の事の顛末を話し出した。
「ちょうど一ヶ月前に、禁書庫に入っていく宮廷魔導師の女性を見かけて、怪しい様子だったから、声をかけたら、黒猫に変えられたんだよ。それで、体は絵の中に閉じ込められたってオチさ」
「その魔導師の方は捕まったんですか?」
「いや、捕まえ損ねたんだ。見回りが手薄になる時間を見計らっていたからね」
「それは災難ですね」
「それで、僕がこんなことになってしまったから、王室を離れて、今は使われていないこの屋敷に絵画とともに来たって訳さ。最初は絵の中でも会話出来ていたんだけど、徐々に出来なくなって。でも、君を見かけた時にピンッと来たんだ。この子なら助けてくれるだろうって」
「だから、黒猫の姿で話し掛けてきたんですね」
「そうだよ。でも、まさか『真実の心』を持つ者に出会うとはね。僕は運が良かった」
エドワルドは興奮しながら、話した。ただの偶然なのか、必然なのか。飢え死にしそうなユリーカにとっても運が良かったのは確かだ。
でも、もし仮に私がここを離れたら、彼はどうなってしまうのだろう? ユリーカはエドワルドに尋ねることにした。
「エドワルド王子」
「エドワルドで良いさ。敬称は無くて大丈夫だ」
「ありがとうございます、エドワルド――様は今こうやって元のお姿になられていますが、私がいなくなったら、また黒猫に戻ってしまうのですか?」
「そうだね。試してみないと分からないね。食事も終わったことだし、執事と一緒に屋敷の鉄門まで行ってもらおうか。その間に、僕は二階のバルコニーに立って、執事に僕の姿を確認してもらおう」
「分かりました」
ユリーカは席を立つと、執事の手を借り、屋敷の鉄門前まで行った。辺りはすっかり暗くなり、正直確認のしようがないと思った。しかし、エドワルドのたっての希望だし、自分から尋ねてしまったのもある。どうか元の姿のままで、呪いが解けていますようにと内心思った。