1-2:継母たちからの仕打ち
「ユリーカ、今日からこの人がお前のお母さんだ。姉さんたちもいるんだぞ。これで屋敷の中も少しは賑やかになるだろう」
「あら、貴方がユリーカ? 今日からよろしくね。こんな可愛らしい娘が出来るなんて嬉しいわ」
継母は上品に笑う。しかし、ユリーカには棘が見え隠れするような感覚がした。この人、嘘をついてる。
後から聞いた話によると、継母とは買い付けの街で出会ったらしい。父の話を聞いて、継母は優しく寄り添ってくれたらしい。それで好きになって、私に無断で結婚したらしい。ユリーカは父にほんの少しの反抗をしたが、うまくかわされてしまった。
そして、継母と姉たちとの共同生活が始まった。しかし、それは華やかなものではなかった。継母たちは父がいないところで、ユリーカに強く当たるようになり、母が大事にしていた装飾品を質に出しては、きらびやかなドレスを買い、使用人たちにも豪勢な食事を出すように強要したりと傲慢な振る舞いだった。更に、ユリーカが大切にしていた母のお下がりのドレスを姉たちに分け与えたのだ。
「お母様、こんな地味なドレス、私嫌いだわ」
「そうよ。こんなボロ臭いドレスに袖も通したくないわ」
「じゃあ、必要ないみたいだから、捨てましょう」
「えっ! それはユリーカが大切にしているドレス!」
「何よ。私に楯突くわけ? こんなのこうするのよ」
ユリーカが継母にやめるように止めたが、そんなことを無視して、継母たちはドレスをビリビリに引き裂いた。
ユリーカは身を挺して止めに入ったが、継母に突き飛ばされる。継母たちの悪意ある笑い声とドレスが引き裂かれる音に、ユリーカは膝から崩れ落ち、涙を流しながら、耳を両手で塞いだ。
そんな残酷な仕打ちに耐え続けたユリーカは、十九歳の誕生日を迎えた。
そんなある日、ユリーカは継母に呼び出された。
「今までごめんなさいね。貴方を思って、躾けたつもりが辛い思いをさせたみたいで……心から謝るわ」
「いえ、私こそ申し訳ありませんでした」
「そこで、貴方と仲良くするために、十九歳の誕生日記念に少し遠出をしようと思うの。だから、遠出の準備をしなさい」
「わ、分かりました」
ユリーカは何か企んでいると感じた。しかし、ここで拒否すれば、また同じ生活が待っている。ユリーカはそう思いながら、革製のトランクケースに必要なものを詰めた。
翌日、ユリーカは継母と一緒に馬車へ乗り、遠出をする。行き先を聞くと、『禁断の森』だった。