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地殻の魔女  作者: 藤宮ゆず
2章 因縁
14/63

14 憎悪

「そもそも火の鳥を出してたのが無意識だったのが問題なのかも。霊力の固体化からしてみよう」


 朔は戦闘形式で実戦を意識するのではなく、まず霊力操作の基礎から叩き込んでくれるらしい。

 朔は春彦の手を包み込むように重ねて握る。


「ここに意識を集中させて、おにぎりを握るようなイメージでやってみて」

「ものすごくイメージがしやすくて助かるよ」


 春彦は言われた通り、霊力を手元に集中させる。延珠を使い始めてから、自分の中に宿る霊力を何となく意識できるようにはなった。だがそれを意識的にコントロールするのは始めてだった。


 朔の言う通り、身体で覚えるよりも、まず脳内で理解してみる必要がある。

 力を集め、手のひらを開いてみると、青白く光るボロボロの砂ができていた。


「ひどすぎるな」


 羞恥心を抱く春彦に対し、朔はむしろ驚いた様子だった。


「ううん、初めてでここまで出来たらすごいよ。やっぱり春彦くんは筋がいい。次はこれをもっと一つずつ凝縮するイメージでーーー」


 朔の話を聞きながら、春彦は彼女の説明の上手さに感嘆していた。


(勉強でもそうだが、人に説明出来るということはそれだけ理解しているということだ。それでも空間固定が出来ないってことは、コイツにとって本当に難しいことなんだな。結局、和歌山支部でのことはあまり話さなかったし)


 もしかしたら和歌山での経験は、まだ彼女自身も受け入れきれていないのもしれない。


「さあ、やってみて」


 朔の説明通り何度か試したら、春彦の手のひらには三角おにぎりの形を模した霊力の固体が現れた。米の粒感まで再現出来た。

 ちなみに朔がはそれを見て小声で「そこまで芸術センスを出せとは言ってない」と少し引いていた。


 次に朔は、木の板で作られた的を組み立てた。


「延珠を使って、あの的を狙って攻撃してみて。さっきのおにぎりを鳥の形に変えて、勢いよく飛ばす感じで!」

「おにぎりから急にハードルを上げすぎだろ」

「春彦くんなら出来る!」


 春彦は延珠を振りかざした時、不意に身体が固まった。あの嫌な感じが背筋を()う。


「どうしたの?」

「近くに悪虚が居る」


 すると朔が目を丸くした。


「ここは本部管轄演習場だから、本部や支部と同様に守護石が設置されていて、本物の悪虚は近寄らないよ」


 確かにこの演習場にも守護石の一部が設置されていることは聞かされていた。春彦が刀を握ると霊力が放出され悪虚が群がってくる。だから移動中は霊力遮断ガラスの粒子を編み込んだ袋に入れ、戦闘許可が出るまで本部の直轄地以外では刀の使用が禁止されており、実戦訓練もこの訓練場を指定された。


 だが、春彦には断言出来た。


「でも近い。悪虚は近くに来てる」

「どうして分かるの?」

「昔から嫌な予感を感じることがあった。今まではそれが何か分からなかったが、悪虚が見えるようになってから、今までの嫌な予感が全て悪虚だったことに気付いたんだ」


 すると朔はハッとして、刀に手をかける。


「それ『霊力探知』っていう能力だよ。委員会の中でも使えるのは数人しかいない特殊な能力で、悪虚の放つ霊力を探知出来るの。春彦くんが今までその霊力量で悪虚に襲われなかったのは、そのお陰だったんだ」


 まさか自分にそんな能力があったとは知らなかったが、今はそれどころではなかった。この気配が気のせいではなく事実だと証明されてしまったからだ。


「上だ!」


 春彦の言葉に、春彦と朔はお互い後退した。今しがた二人が立っていた所へ、鞭のようにしなった触手が振り下ろされ、地面を割った。


「春彦くん!」

「大丈夫だ!」

「気を付けて、この領域に入ってきただけあって強いよ」


 確かにこの悪虚は今までの悪虚とは異なる雰囲気だった。体長五メートルほど、少し黒みがかった体躯で、春彦はぞわぞわと悪寒がした。あの懸賞金付き悪虚ですらここまで感じさせはしなかった。


「こちらシリウスツー、本部応答して下さい」


 本部へ連絡を取る朔。春彦は刀を握ったが、霊力は刀身に纏っても、火の鳥は出てくれない。しかし悪虚も待ってはくれない。とにかく攻撃してくる触手をなぎ払うことで精一杯だった。


 通信を終えた朔は苦戦する春彦の前に立って、果敢に攻めたてる。しなり打ってくる固い触手を刀で受け止める。本来ならここで踏み込んで攻撃しに行くが、朔は春彦の前から動くわけにはいかなかった。


(やっぱり戦闘訓練を受けてない春彦くんには荷が重い)


 訓練期間を免除されても、戦闘訓練は行われる。だが春彦は委員会に加入して日が浅いので、その基礎すら習得していない。


(この悪虚には庇いながらじゃとても前に進めない。早く応援が来てくれたら)


 春彦も朔が葛藤していることに気付いていた。自分のせいで危険にさらさせている。


「どうして戦ってくれないんだ、延珠……!」


 焦燥に駆られた春彦は刀に意識を取られていた。だから後ろから迫っていた触手に気付けなかった。


「春彦くん危ない!」

「っ!」


 振り返ると同時に、春彦は強い力に引っ張られ投げ飛ばされた。そして今しがた自分が居た場所で、長く艶やかな黒髪の若い女が取って代わり、触手を刀で切り落とした。


 彼女は殲滅委員会規定の戦闘服と、紫紺の鞘の日本刀を持っていた。そしてすぐさま悪虚へと向き直ると、真っ直ぐ突き進み、朔の手前まで来ると()()()()()()()()()()()()、朔を軽々と飛び越えた。その光景に春彦は目を剥いた。


(今のは何だ!?)


 宙を舞う彼女は何本か触手を束ねて引っぱると、悪虚を上向かせ、そのまま地面へと叩き付ける。朔が霊力を使った時とは比にならないほどの腕力だった。そしてまた透明の足場を使って勢いを付けると、彼女は悪虚の頭部から尾びれまでを一刀両断し殲滅してしまった。


 春彦と朔はその圧倒的な力に息を飲む。彼女が現れてたった十数秒ほどの出来事だ。悪虚はすでにチリとなり地面に消えてしまった。


 朔は黒髪の女の正体に気付き、さらに驚いた。


和涅(かずね)さん……」

「知ってるのか?」

「和歌山支部特別機動調査室室長補佐、冬馬和涅(とうまかずね)さん。この組織で最も強い人の一人だよ」

「冬馬、和涅……」


 春彦は彼女の名前を呟いた。


(和歌山支部ということは、すでに朔とも面識がある訳か) 


 年は自分達より少し上ぐらいか、しかし目が冴えるような美人だった。ふと、その黒い長髪と切れ長の目はどこかで見たことがある気がした。


 和涅は無言のまますたすたと歩いて近付いてきて、春彦の腕を左手で掴む。驚く春彦をよそに、和涅は右手の人差し指で延珠の刀身触れる。すると突如触れた部分から火花が散った。まるで延珠が拒絶するようにも見えた。


「今のは……?」

「刀はすでにあなたを選んでる。何をためらっているの」


 和涅の言葉に春彦は動揺した。


「ためらってる?」


 言われて初めて納得した。春彦は延珠を使うことをためらっていた。


(延珠は悪虚だ。姿形が違うとはいえ、悪虚は殲滅委員会の倒すべき敵だ。その倒すべき悪虚使ってを戦うことは果たして正しいことなのか。なりより委員会の人間がそれを知らないのは、()()()ことなんじゃないか)


 古代生物以外の姿を成すはずのない悪虚。しかしそれについて言及すれば、逆に春彦自身が怪しまれる。延珠を使い続けることを無意識に迷っていた。


「この刀が何であれ、刀はあなたを選んでる」


 春彦はハッと顔を上げる。和涅の目の奥には強い意志が宿っていた。


「迷うことはない。この刀をあなたの霊力でねじ伏せ、従わせればいい」


 力でねじ伏せる、きっとこの刀を使いこなすならそれが一番最適なのかもしれない。延珠は気位の高い性格だ。機嫌を伺っていてはこちらの足元をすくわれる。

 しかし、春彦は首を横に振った。


「俺はそうじゃないと思う。コイツはきっと自分が主人だと思っている」


 和涅は不愉快そうに眉をひそめる。


「あなたはそれでいいの?」

「いいや、よくない。俺達はどちらが主人でも下僕でもない。対等だ。だから俺が霊力を与える限りは相応の働きをしてもらう。コイツも俺の霊力が無ければ困るはずだ」


 春彦は刀を強く握る。


(そうだろ?だからいい加減起きろ、延珠!)


 どこかから小さな笑い声が響いた気がした。握った刀の柄に熱を感じる。春彦が刀を空に突き上げると、やがて周りに炎が舞い、その刀身を包みこむ。


「春彦くん……」


 朔の呟きを背に、春彦は刀を振るう。すると火の鳥が勢い良く飛び出して、そして煌めいて散った。

 吹っ切れて迷いの無い様子の春彦に、もはや和涅は何も言わなかった。




 ※※※




 演習場での出来事を聞いた暁は声をあげて笑った。


「災難だったなぁ、演習場の守護石が半分削り取られてたなんてよ」


 演習場に限らず、設置される守護石は敷地面積に応じて必要とされる質量が決まっている。そして今回、演習場の守護石は本来設置されているはずのサイズの半分にも満たなかったのだ。


「笑い事かよ。危うく死ぬところだったんだぞ」

「わりーわりー。お前のことじゃなくて、委員会に盗人が入るなんてケッサクだと思ってな。しかも今までずっと職員が誰一人と気付かなかったんだ。管理体制の責任が問われるぞ」

「何で嬉しそうなんだよ」


 相変わらず委員会に反骨精神を見せる暁。無惨に削られた守護石の画像を、菜緒子も呆れたように眺めた。


「後ろ半分が消えていたのね。職員が見回りの時に前からしか確認しないことを知っていたとすれば、内部の犯行かしら」

「あの石を削って質屋にでも入れたんでしょうか?」

「腐っても隕石だものね。マニアにはウケそう。だとしても見つかったらただじゃすまないわ」


 ふと暁は真剣な顔をした。


「それにしても、悪虚との無許可の実戦について、正当防衛とはいえ上層部が何かイチャモンつけてくるかと思ったが、まさか和歌山支部に助けられるとはな」

「しかも和涅さんが正当防衛だったとして、戦闘許可を出したことにしてくれたんですよね」

「あの人ほどの権限があればそれもまかり通る」


 和涅の所属する和歌山支部の『特別機動調査室』というのは、和歌山支部だけでなく東京本部に対しても絶大な権限を持つという。その室長補佐だというのだから、後付けでも何でも通るらしい。


「でも和涅さんは和歌山から出たがらないことで有名なのよ。それでもわざわざ本部に来たから、てっきり延珠安綱の件だと思ったんだけど、特段何も言われなかったわね。本当に何しに来たのかしら」


 首を傾げる菜緒子。


「良い人なのか?」


 すると朔が戸惑いながらも頷いた。


「物静かで何考えてるかよく分からない人ではあるけど、悪い人ではないと思う」

「とは言え、八城の上司だ。えたいが知れないのは確かだろ」

「あの人が八城の?」


 春彦はふと八城との会話を思い出した。


『常に冷静で冷徹で、僕なんか足下にも及ばんくらいの実力者。僕が心から尊敬する人なんよ』


 あの八城が尊敬している上司とは、彼女のことだったのだ。


「あの姿で実年齢は三十二歳だからな」


 春彦はぎょっとした。


「冗談だろ、多く見積もっても二十歳にしか見えないぞ!」


 若く見えるなんて領域を越えている。


「魔女、なんて呼ぶ奴も居る。あの人の周りに居ると力も若さも奪われるんじゃないかって噂だ。実際人の何倍もの霊力を持つからな。今までの戦績も尋常じゃない」

「魔女……」

「だが、俺からしたら呪われてるのはあの人自身だ。ここはたった十数年前まで、平気で人体実験を行う組織だったんだからな」

「人体実験って?」

「そこまでは俺も知らない。だが、単なる噂じゃないはずだ。お前にだって近しい心当たりはあるだろう」


 暁は暗い表情でタバコの煙をくゆらせる。


 確かに霊力検査を一つ取ってみても感じられる、人間に対する容赦の無さ。結果を出すためならその過程で誰かが死んでも構わないというような体質がいまだに残っている。


 しかし和涅のあの実年齢に見合わない肉体、果たして組織は彼女に一体何をしたのか。想像するだけでも恐ろしかった。





 ※※※




 会議を終え、議長である栄は自分の執務室に客人が居ることを伝えられた。その客人の来訪にはやや驚いたが、いつか来るのではないかと予想はしていた。だから来た時には応接室ではなく執務室へ通すよう伝えておいた。


 自室の扉ノックして開けると、彼女は応接用のイスから立ち上がっていた。待っていたのは和涅だった。栄の気配を察していたらしい。


「お約束も無しに申し訳ありません」


 和涅の第一声に、栄は「構わない」と言って着席を促した。彼女の前には茶器が置かれているが、口はつけられていなかった。栄の分はすでに断ってあるので、もうこの部屋に誰かが入ってくることはない。


「体調はどうだ?」

「問題ありません」

「そうか。演習場でのことは聞いている。守護石のことも、こちらで上手く処理しておく。心配するな」

「ありがとうございます」


 お互い表情が薄く、会話も淡々としている。しかし悪意は無い。栄と和涅は、単に表情による感情表現というツールが欠落しているだけなのだ。


 栄は和涅のことをかつて第一課課長であった頃から知っている。始めて出会ったのは栄が四十二歳、彼女がまだ十四歳の頃だった。あまり接点がなく面倒を見てくることはなかったが、栄は娘のように気にかけていた。


 だから盗難に遭った守護石の行方も検討がついていた。議長である栄は彼女の事情を全て把握していた。彼女の事情を踏まえれば、守護石の一つくらいどうということはない。


「延珠安綱については残念な結果になったな」


 初めて和涅の瞳が微かに揺れた。


「いえ、構いません。あの刀には意志があります。私の手元に来てもきっと……あの刀は私を殺していたと思います」

「そうか」


 不意に議長室の内線電話が鳴る。短い返事をして受話器を置く。


「時間のようだな。迎えが来てる」


 栄は和涅を連れて、同じ階層にある別の応接室へ向かった。


「私はここで失礼する。奴には後で議長室へ来るように伝えなさい」

「はい」






 和涅がノックして応接室の扉を開けると、機動調査室室長黒基真一(くろきしんいち)が足を組んで座っていた。入ってきた和涅には一目もくれない。和涅からは黒基の横顔しか見えないが、すでに苛立った様子なのは分かる。


「どうしてここに居る」


 投げかけられた言葉にもトゲが含まれていた。


「刀を取り戻しに来ました」

「そうする必要は無いと言ったはずだ」


 黒基は勢い良く立ち上がると、つかつかと黒い革靴を大理石の床を鳴らして歩き、和涅の前に立った。そして彼女の頬を平手打ちした。


 和涅はよろめくことなく、その場で踏みとどまった。頬すら押さえない。


「何が目的だ、何故東京に戻った!」

「室長ーーー」

「神崎春彦が目的か!」


 黒基は我を忘れて和涅の胸ぐらを掴む。端正な顔立ちの目元には疲れが滲んでいた。


「あれほど接近するなと言ったのに誓約を破ったのは何故だ!そこまで自分の『息子』に会いたかったのか!」

「違います」

「嘘をつくな!」


 和涅を突き放すと、それ以上の怒りをぶつけるように応接の机を蹴りつける。机の上に出されていた茶器が床に落ちて砕け割れた。黒基は整えていた髪をかきむしった。


「お前が勝手に子供を作ったせいで全てが狂った。あの子供をこの組織から遠ざけてやるのにどれだけ尽力してやったと思っている。養子縁組を用意し、霊力計測器に引っ掛からないようプログラミングにまで細工させた。なのに奴は舞い戻ってきた!しかも刀まで奪い去って!くそっ、くそっ!」


 黒基は堪えきれない怒りをなお机にぶつけて蹴りつける。振り返ったその瞳には憎悪が宿っている。


「和涅、お前が何か仕掛けたのか!お前はいつもいつも、俺の邪魔をする!」


 黒基は拳を振り上げる。


「ーーー私は室長からの恩を忘れたことはありません」


 その言葉に黒基は動きを止める。


「全ては室長の恩に報いる為、そして悪虚を殲滅することを目的として、それだけの為に生きてきました。今回も本当に刀を取り戻したかっただけなんです。私には子供なんて居ません」


 二人の視線が交錯する。黒基は和涅を瞳を見つめた後、視線を外した。そしてゆらゆらと椅子に座り、額を押さえため息をついた。


「それで、延珠安綱はどうだったんだ」


 ようやく普段の冷静さを取り戻した黒基は、本題に入った。


「すでに持ち主と心理的癒着があり、私の手に負える代物ではありませんでした。それと、私の右手と相性が悪いようです」

「そうか。もう刀は放っておけ。本部とは折り合いがついている」

「はい。室長、議長が後で来るようにと仰っていました」

「分かった。私は議長に会ってくる。ここで待ってろ。今日中に和歌山へ戻るぞ」

「はい」


 黒基が出ていった後、和涅は乱れた部屋を放置して窓の外を眺めた。ビルの建ち並ぶ都会の景色、都会の雑踏。この本部に来るのは本当に久しぶりだった。しかし懐かしさはあまり無い。この組織のどこにも、そんな感情はありはしなかった。


 黒基は昔はあんな風ではなかった。和涅より八歳年上で、まだ新人だった頃の彼は、和涅を哀れんで優しく接してくれていた。


 しかし彼は和涅を憎んでいる。憎まれて当然のことをした。言い訳するつもりはない。全ては和涅が原因だった。


 ただ黒基と共通しているのは、悪虚を殲滅し尽くすという目的。和涅には悪虚に報いを受けさせるという決意がある。その為に必死で戦ってきた。


 いつの間にか魔女なんて忌み名を付けられていることも知っている。だがそれもまた、自身の決意を忘れさせない為に重要なものだと感じていた。


 ふと、かの少年の延珠安綱に対する言葉が脳裏をよぎった。


『対等だ』


 和涅は身体の底から燃えるような怒りが沸き上がってきて、思わず窓を右手で殴りつけた。防弾ガラスの窓はそう易々とは割れない。そして割れないように手加減した。


(そんなわけない。私達人間と悪虚は対等なんかじゃない)


 何も知らないから、そんなことが言えるのか。だが真実を知らせるつもりも、彼を巻き込むつもりも毛頭無い。


「私は、必ず……」


 悪虚を殲滅する。魔女の名にかけて。

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