26/50
裏路地
細い裏路地をあっちこっちに歩き回らされて
既に方向感覚も失われどこにいるかも分らず
足下には生活排水やらなにかの糞やらが溢れ
耳には姿の見えない子供達がはしゃぐ声だけ
表札もなく住所を知る手がかりもつかめずに
尋ね人の名前だけを頼りにただただ裏路地を
徘徊するどぶねずみの様に鼻をひくひくさせ
いつまで経っても慣れない悪臭に辟易しては
ここが居場所ではないと自らに言い聞かせて
電線とトタン屋根に遮られた青空を仰ぎ見て
恐らくはこの辺だと当たりをつけたはいいが
根拠も確証もなく軒を連ねる掘っ立て小屋の
戸を叩き続けても応答なく生活の痕跡だけが
生々しい周囲の空気に肺が冒されてゆくだけ
一体どうしたものかと途方に暮れてはみても
気の休められるような休憩場所は存在せずに
嫌悪と緊張だけが膨れ上がり額を汗がつたい
この裏路地への憎しみがいよいよ閾値を超え
脳を掠める考えこのあたりはよく燃えそうだ
理由があるならばただ抜け出したかっただけ
裏路地からの出口を切り開きたかっただけで
沢山の人が死ぬなど思いもしなかったのです




