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ピンポンパール  作者: 二重名々


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第九十四話「手札」

二ゲーム目は志織のサーブから始まる。

巻き込むような逆横回転。


(早めに攻撃!)


相手に攻撃の隙を与えないように、紅は速攻を決意する。

ドライブをフォアに放つ。

しかしこの程度で志織の攻撃の手は緩まない。

ドライブをドライブで返した。


(それなら、もう一回!)


さらにそれをドライブで返す。

それが何度も続く。


「ドライブ合戦だ!」


打ち合いの最中で、紅は次の一手を考える。


(崩す!)


フォームはほとんど変えずに、結果を変える。

最適な技は既に習得していた。


(『ノイズドライブ』!)


あえてボールをラケットの中心からずらした点で打つ。

自分にも分からない回転のばらつきがボールに加わる。

僅かな違いだが、同じようなドライブばかり連続して打っていたこの状況では大きな意味を持つ。

これまでの紅のドライブの威力と回転に慣れていた志織は、ドライブの違和感に気付くのに遅れてしまう。


(伸びないっ!)


球威と上回転が僅かに弱まっていたせいで、タイミングが狂い打ち損じた。

ラケットの端に当たって弾かれた。


「ラブ、ワン」


「おー」


「良いよー!」


紅は安堵で息を吐く。

しかし気は抜いていない。


(何度も通用する訳じゃない。手札はまだあるけど、上手く使わないとすぐ無くなっちゃう)


ノートから得た技はどれも中堅クラスの強さしか無い。

使いやすいが威力はそこそこのものばかりだ。

一つや二つでは大した脅威にはならない。

その技を開発した箱石の先人達も卓越した実力者ばかりではないので当然と言えば当然だ。

だが、蓄積され続けたそれらを全てを継承する者が現れたとしたら。


(『北風』!)


バックからクロスに長く打たれた球は、台の角付近を打ち抜いた。


(『浮草の波紋』!)


ネット際にほぼ無回転のボールを落とした。


(『ショルダーウェーブ』!)


肩を後ろ向きに回してからボールを持ち上げるように打つ。

腕が流れる動きが球威に変換され、志織のフォアに突き刺さる。


「ワン、エイト」


紅が技の応酬で大きなリードを作り出した。


(どんどん出てくるな)


志織の対応は間に合っていない。

得点は重ねている紅だったが、同時に手札をかなりのペースで消費してしまっていた。


(紅ちゃん、ここが踏ん張りどころだよ)

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