第八十三話「関係」
「皿井、志織っ!?」
克磨は驚愕した。
その名前を聞いた事があったからだ。
「知ってんのか?」
反応は二つに分かれた。
その名前を知っていたのは克磨、真珠、女乃、アイサ。
知らなかったのは紅、春呼、美翠。
「ああ。皿井志織、元プロ選手だ」
「元プロ!?」
「ふうん、知っているのか。引退したのは八年も前なんだが」
高校生が八年も前に引退したプロ選手の名前を覚えていないのは当然。
むしろ、知っていた人数が多い事に志織の方が驚いた。
「あの!サイン貰って良いですか!」
真珠は興奮していた。
真珠は二十年くらい前までの卓球選手ならほぼ網羅している。
もちろん皿井志織についても詳しく知っていた。
「断る。ファンサービスの類はやっていない。それに、君達にはそんな事をしている余裕は無いよ」
真珠は肩を落とすが、半分納得していた。
志織はファンサービスには全く応じず、引退後もテレビ出演等は一切していない。
急にサインを求めても応じないのは当然と言える。
「言ったはずだ。私はこの卓球部を強くするために来たと」
元プロ選手が高校生の強化のためにわざわざ足を運んだ。
それには非常に大きな意味がある。
「確か、天藤先輩って、、、」
紅は志織の言葉を思い出す。
紅でもその名前は知っていた。
(天藤珠美。克磨くんのお母さんで、銀メダルも獲ったすごい人)
「私は天藤珠美先輩の頼みで君達に技術を教える事になった。正直子供は嫌いだが、先輩の頼みだから手は抜かないでやるがね」
紅は、志織にとって天藤珠美の存在が大きなものであるという事はすぐに理解出来た。
「母さんが皿井さんに頼んだ?」
克磨は、母と志織の関係については何も知らなかった。
と言うより、現役時代の事はほとんど聞かされていない。
「天藤先輩には現役時代、私に何から何まで教えていただいた。言わば恩師だ。その恩を少しでも返すため、先輩の頼みを度々承っている」
(忠義に厚い人だな、、、)
「さて、時間がもったいない。早速始めよう。私が指導出来るのはたった七日だからな」
志織は改めて七人の顔を見た。
「私の指導は厳しいぞ。それでもやる気はあるか?」
七人は躊躇わず言った。
「はい!」




