第八十一話「子供」
(『双連砲』!)
評理の『双連砲』が完璧に発動する。
打つ方は体勢を固定され、二発目を返すのに間に合わなくなる。
「ナイン、ラブ」
しかし、それをいとも容易く打ち返した。
特に対策をしていた訳でもなく、技自体を回避した訳でもなく。
「これでまだ一年生ですか。恐ろしいですね」
評理はいつものように楽しんで笑わず、ただ驚嘆の中にいた。
「ゲームアンドマッチトゥ潮戸さん」
宝城高校一年、潮戸朝来。
隅根高校三年、キャプテンの道屋評理を無失点のまま撃破。
宝城はチームとしても、一試合も落とさずに練習試合を制した。
「楽しかったー!」
幼い子供のように純粋に笑う朝来。
試合中でさえ遊んでいるように無邪気に笑っている。
「お騒がせしました」
部長の真依が頭を下げる。
「いえいえ!元気いっぱいな方が動画映えしますから!」
練習試合を終え、宝城卓球部は京都への帰路に就く。
「ばいばーい!」
朝来は元気に手を振る。
「潮戸さん、箱石の白雲さんに匹敵する逸材でしたね」
「ですねー。もしあの二人が対戦したらどうなるんでしょうね。いやーロマン」
譲侍は動画のネタになりそうな新星に心を躍らせる。
「せんせ!なんか食べよ!」
駅に到着するなり、宝城卓球部の監督である浜渡大剛に言った。
「これから新幹線に乗るんだ、そんな時間は無い」
「えー!」
「そもそもお昼は食べたでしょ?夜ご飯にはまだ早いし」
時刻は午後四時半。
昼食にも夕食にも半端な時間だ。
「でもお腹空いたんだもん!」
「あ!あそこで買うのはどう?」
命愛が見つけたのは駅構内にある売店。
特に珍しい物がある訳ではないが、朝来の空腹を満たすなら十分だ。
「おにぎりとーゆでたまご!あと栗も!」
「結構行くねー」
「じゃあ私もグミ買っていこうかな」
車内で空腹を満たした朝来は眠りに落ちてしまった。
伊琴はグミを食べながら言う。
「やっぱり子供みたい」




