第八十話「追加」
「さーん!にーい!いーち!」
「ぷはーっ!」
「三十秒休憩。あと五セットだ」
真珠と美翠が行っていたのは高強度のインターバルトレーニング。
短い時間全力を出し、短い時間休む。
これを何度も繰り返すトレーニングだ。
「きっつぅ、、、。もう無理ぃ」
美翠は弱音を吐く。
「持久力を伸ばすためだ。もう一踏ん張りしてくれ」
反復横跳びを三十秒、インターバルがあるとは言えそれを十セット。
かなりの疲労が襲ってくる。
「あと五秒で再開ですよ!」
「真珠ちゃんは何でちょっと楽しそうなのさぁ!」
半分自暴自棄になって再び動き始める美翠。
真珠は文句一つ言わない。
「白雲さん。少し良いですか?」
「あ、はい」
格技場の重い扉を開けて羽子が入ってきた。
ちょうどインターバルトレーニングが一区切りついたタイミングだった。
「七星さんには先に伝えてたんだけど、ユニフォームが届いたわ」
「おーユニフォーム!」
注文していたユニフォームがついに到着した。
これまで新人強化大会や練習試合では、真珠と紅はトレーニングウェアで参加していた。
正式なユニフォームがあれば公式大会にも出場出来るようになる。
ユニフォームの入った袋を受け取った真珠は子供のように喜んだ。
「ゆっにふぉっおむーっ!」
早速袋から取り出し、広げる。
「真珠、散らかすなら更衣室で」
「はーい」
克磨に注意され、一式を持って更衣室に入っていく。
中には先に受け取っていた紅がいた。
「紅ちゃん!やったね!」
「うん!あ、ハサミあるよ」
紅は持っていた小さな折りたたみ式のハサミを真珠に手渡す。
「ありがと」
タグなどを切り、ついに袖を通す。
全体は鮮やかなピンクで、黒いラインが斜めに三本入っている。
黒いハーフパンツにシャツを入れ、更衣室の扉を開けた。
「おっ、似合ってるじゃん!」
「箱石の一員という感じがしますね」
見せつけるように胸を張る真珠。
その後ろから紅が少し照れながら出てくる。
「紅も似合ってるね」
アイサが言った。
「あ、ありがとうございます」
「それじゃ、こっち来て」
美翠が手招きする。
見せられたのは格技場の壁にずらりと並んだ文字。
箱石卓球部の歴代部員の名前だ。
「ついにここに名前を書いてもらう時が来たね」
「ユニフォームを貰った時に書く決まりなんだよ」
名前は壁に直接書かれている訳ではなく、キャットウォークの手すりから吊り下げられた大きな木の板に、名前が書かれた小さな木の札をかけてあるのだ。
「はいこれ」
美翠が二人に手渡したのは筆と木札。
近くの机には墨汁も用意してある。
「ユニフォーム汚すなよー」
「他人事だね克磨くん。もちろん君の分もあるよ」
用意してあったもう一セットを克磨に手渡した。
「オレも?」
「お前も部員なんだから当然じゃねーか」
ユニフォームは無いが、克磨も共に戦う仲間。
名前を連ねる権利はある。
「じゃあ、、、行くよ!」
三人が同時に書き始めた。
「これで、よしっと」
追加された名前には書いた者の特徴がよく表れていた。
「しっかり受け継がないとね!」




