第八話「帰路」
「「ご馳走様でしたー」」
お好み焼きを堪能し、真珠達は幸福感に満たされた帰路を歩む。
「では、私はこっちなので」
「あ、私もです!」
女乃と紅は駅の方に向かうため、ここで別れた。
真珠はアイサに尋ねる。
「次の大会っていつあるんですか?」
「私達は夏の大会が本命。でもその前にも大会はあるよ。五月の終わりくらい」
「それって」
春呼は去年の事を思い出した。
「新人強化大会。一年生だけを対象に行われる大会だよ」
アイサが言葉を引き継ぐ。
「大会って言うけど、実際は合同練習みたいなものかな。この地区の一年生で集まって、互いに強化し合う大会。もちろん真珠と紅にも出てもらうよ」
真珠は目を輝かせる。
「おおー!絶対優勝します!」
「自信があるのは良いけど、練習がメインだからね、、、」
「いや!やるからには本気だ!真珠!全員ぶっ倒せ!」
「はい!討ち滅ぼします!」
「そんな物騒な大会じゃないよ、、、」
アイサは二人の熱量に置いていかれた。
「じゃ!また明日!」
春呼が左の道を曲がった。
真珠とアイサはそのまま曲がらずに進む。
「真珠ってさ、結構単純だよね」
「あの、これって褒められてます?」
アイサと真珠は自転車を押しながら話す。
「どっちかと言うと褒めてるよ。何か、羨ましいなーって思って」
真珠は首を傾げる。
「何でですか?アイサさんの方がしっかりしていて皆から頼られてるのに」
「まぁ、それは嬉しいんだけどね。でも、ゴチャゴチャ考えちゃうのは疲れるから」
真珠はその感覚がよく分からなかった。
「うーん、そういうものなんですね、、、」
真珠はあまり深く考えるタイプではない。
アイサの心情はそう簡単に理解出来ないだろう。
「それじゃあ、また明日ね」
「はい!」
アイサとも別れ、真珠はやっと自転車に乗った。
観賞魚店の反対側に自転車を止め、表に回る。
店の中を突っ切り、階段を上って居住スペースに入る。
ここまでしてやっと家に帰ってきた事になる。
「ただいまー!」
「おかえり。お好み焼きは美味しかった?」
店に入る時に母に連絡しておいたため、夕食は用意されていない。
「うん!」
自室がある三階に上る。
「ただいま」
金魚がゆらゆらと水槽の中を泳いでいる。
相変わらず丸々としている。
「あー疲れたー!」
着替えもせずベッドに飛び込む。
「五月の新人強化大会かー」
ぐるりと寝返りを打つように天井を仰ぎ見る。
「ここで負けるようじゃ、世界一なんて夢のまた夢」
真珠は疲れを楽しむかのように笑っていた。
「始まったって感じ!」