第七十五話「学べた」
「対戦ありがとうございました!たくさん学ばせていただきました!」
評理は手を差し出し、アイサがその手を取って握手した。
「こちらこそ。またいつか試合しよう」
少しでも気を抜けばアイサが負けていた。
アイサの方も多くを学ぶ事が出来た試合であった。
「五対ゼロで箱石高校の勝ちです」
「「ありがとうございました!」」
全員が礼をした。
直後、隅根の部員が次々と箱石の部員に近寄る。
それぞれ持っているスマホの画面を見せた。
「この試合のここ!どういったお考えでこのコースを選んだんですか!」
「この技に名前はありますか!?」
「ここのすっごいの、もっと詳しく教えて?」
箱石の部員一人につき、隅根の部員が二人か三人。
二、三年生が取材のように質問し、一年生はそれをメモしていく。
「いやーすみませんねグイグイ迫っちゃって。動画のためには念入りな取材が必要でして」
譲侍が克磨に言った。
「それは良いんですけど、何で動画のためにここまで熱心に?公開している訳でもないのに」
失礼とは思いつつも、克磨は素直に質問する。
「それはもちろん、強くなってほしいからですよ。動画を作るためには何度も映像を見直し、分析し、自分の言葉で表現しなくてはいけません。その過程で本当にたくさん学べるんですよ。練習試合のお相手には、せめてものお礼として完成した動画を送らせていただいています」
ただ面白さや楽しさを欲している訳ではなく、強くなるための動画作成。
出石譲侍、そして隅根高校は克磨が思いつかなかったアプローチで選手を強化していた。
「本日は本当にありがとうございました」
最後に、顧問として羽子が頭を下げる。
「こちらこそありがとうございました。お互い、全国に向けて頑張っていきましょう!」
「バイバーイ!」
「お元気でー!」
手を振り、別れる。
結果を見れば箱石の圧勝。
しかし、多くの事を学べた練習試合となった。




