第七十四話「弾いて」
(『双連砲』を打たれた。準備の一発さえずらせば『双連砲』を封じ切れると決めつけてた)
アイサは自分の考えの甘さにため息をついた。
(打つ事以外でもこっちの体勢を決められる。次からはもっと警戒しなくちゃ)
「たっ!」
「ワン、スリー」
アイサはカットで連続攻撃を凌ぎ切り、点を取り返した。
(そう何度も打てませんね。明らかに警戒されていますし)
『双連砲・別道』は、本来とは異なる方法で相手の体勢を決定する。
期待値の高い方法であれば最初からそれを技に組み込んでいるはず。
つまり『双連砲・別道』の成功率は『双連砲』以下であり、基本的には使いにくい技なのだ。
警戒している相手にはまず決まらない。
(このゲームを取った方の勝ち。全てを出し切るしか勝機はありせんね!それが楽しい!)
評理は限界を前に笑う。
連続攻撃は体力の消耗が激しいが、評理はそれに慣れている。
「まだ動けるみたいだな」
「元気だねー」
美翠は眠そうに言った。
(短い下)
アイサのサーブは短く遅い下回転。
評理はツッツキでクロスに返した。
フォアへの下回転を再びツッツキで返す。
今度は長め。
評理は思い切りドライブを放った。
「はぁっ!」
フォアへのドライブであれば、裏面のアンチラバーを使う『アウメント』は打てない。
評理はそう考えた。
(『アウメント』)
アイサは親指で弾いてラケットを反転させ、黒い面を表にした。
つまり、アンチラバーを使ってフォアハンドが打てる。
「フォー、ワン」
傾きかけた流れは完全にアイサの方へ戻った。
(これなら!)
評理のスマッシュ。
チャンスボールとまでは言えない球だったが、半ば無理矢理に打った。
やや低めに飛んだボールだったが、アイサは冷静にブロックした。
ラケットの壁に跳ね返されたボールを、打った直後の評理は返せない。
「ファイブ、ワン」
その後も評理は惜しみない猛攻を続けた。
だがアイサの防御力には及ばなかった。
「ツー、テン。マッチポイント」
評理の得点はまだ二点。
対するアイサはあと一点で勝利。
(もう賭けに出るしかありませんね!)
アイサのサーブを直接叩く。
無謀な攻撃だが、今回は失敗しなかった。
アイサはブロックしてストレートに返す。
(ただ!打ち続ける!)
再び強打。
そして再びブロック。
バック寄りに返ってきたボールを回り込んでドライブ。
アイサはカットで対応した。
評理はすぐに体勢を立て直す。
(しぶといね)
評理がドライブの溜めに入るのを見て、アイサはバックハンドを構える。
(『アウメント』)
バックへのドライブを『アウメント』で迎え撃つ。
ドライブの威力に負ければ失敗する。
回転は利用しつつ、球威は殺す。
高度な技術が求められる。
(これで決める!)
面の角度、スイング、全てが完璧だった。
『アウメント』は回転を増幅させた。
「ゲームアンドマッチトゥファーレインさん」




