第六十九話「反転」
(あの『双連砲』をそのままにしておくと止められなくなる。早めに対策しなくちゃ)
アイサは、評理の『双連砲』の恐ろしさを一回で十分理解した。
発動したら分かっていても抜け出せない即死コンボ。
普段ゲームはしないアイサだが、春呼と女乃がそのような話をしていたのを聞いた事はある。
『双連砲』を見てそれを思い出した。
「ふっ」
アイサのサーブは、フォアへのロングサーブ。
スピードにさえ対応出来れば叩きやすい球だ。
(明らかに打たせようとしていますね!もちろん乗りますが!)
罠だろうと関係無し。
評理はフルスイングで打った。
速い球であっても、素早い評理ならばフルスイングするための予備動作も間に合う。
(『双連砲』以外は確実に返す!)
『双連砲』の対策方法はまだ無いが、それ以外の攻撃なら対応出来るようになってきている。
『双連砲』を打たれるまでに得点を重ねておきたい。
カットで下回転に変えて返した。
(下!)
回転の方向や強さを見極め、ラケットの角度を調整した。
曲げていた膝をバネのように解放し、ドライブを放つ。
アイサもすぐに反応し、ネット際へ短く落とした。
(一発目!)
さっきとは違う展開。
短い下回転に対して『双連砲』の一発目が発動した。
ただ、アイサはこれが『双連砲』の一発目だとは気付いていない。
軽く打った球をアイサはブロックする。
評理はジャンプして、返ってきた打球を思い切り打つ。
(二発目!『双連砲』!)
バックハンドでのブロック後、ラケットが反転してしまっていた。
フォアハンドで打つためには一度手首を返さなければならない。
ほんの僅かだが、評理との戦いにおいては致命的な隙だ。
フォアハンドに切り替える瞬間において最も打ちにくい位置への渾身のスマッシュ。
アイサは見えているのに返せなかった。
「ナインオール」
「流石評理先輩です!ナイス『双連砲』!」
評理に憧れる詩与が跳ねた。
二人の得点がついに並んだ。
しかし、振り出しに戻った訳ではない。
ペースを握っているのは評理の方。
このまま進めば評理がゲームを先取するだろう。
その時、克磨がアイサに声を投げた。
「アイサさん!」
相手にも聞こえる声量でアイサに言った。
「このゲームはもう捨てて良い!」




