第五十一話「探る」
相手は二年生のペア。
しかも全国大会出場経験がある高校の。
単純に考えれば一年生、それも片方が卓球を始めてたった二ヶ月のペアに勝ち目は無い。
それでも真珠と紅にはこの試合を勝つ自信があった。
(これまでやってきた事をしっかりやろう。ミスしても真珠が何とかしてくれる。だから強気に行かないと!)
紅は多少無理矢理にでも気持ちを奮い立たせる。
真珠、そして自分が短い期間に培ってきたものを信じる。
「では、サーブを」
人葉はサーブ権を選択した。
「まずは私から行くよ」
第一ゲーム、真珠は人葉のサーブを受ける。
紅は頷いて真珠の右後ろに下がった。
挨拶と相手のラバーの確認をして、人葉はサーブの構えに入る。
「ふっ!」
人葉のサーブは短い下回転。
ダブルスなので必ず右側へ飛んでくる。
真珠はストレートに短くツッツき、すぐに左へ跳んだ。
真珠と紅は右利きと左利きのペア。
最低限のフットワークで互いのフォアハンドを邪魔しないように動ける。
巫子もツッツキで返した。
(まずは回転の強さを確かめる!)
最初は下手に攻撃しようとせず、相手の下回転をどのくらいの角度で打てば良いか探る。
試合の際は相手のラバーを確認するが、ラバーを見ただけで全てが分かる訳ではない。
実際に打ってみて調整していくのを何度も繰り返して対応出来るようになるのだ。
(ちょっと弱いかも)
紅のツッツキは、相手の回転がやや弱かったせいで浮いてしまった。
人葉が浮き球をドライブで返す。
真珠のフォアへ飛んでいく。
(やりますね)
真珠はコースを完璧に予測し、万全の状態でドライブを叩き返した。
美しさを感じてしまうほどの完璧な打球に、巫子は一切反応出来なかった。
「ラブ、ワン」
「うん、良い感じ」
真珠はエンジンを温めている段階。
これからさらに加速する。
(一年生だと思って油断は出来ません。むしろ、こちらが挑戦するつもりでなくては)
箱石が強い事はこれまでの二試合で既に分かっている。
一年生であっても弱い訳ではないのだろうと人葉は考える。
(まずは相手の手の内を知る所から始めましょう)




