第四十八話「攻略」
「デュース」
得点が十対十になると、デュース。
サーブを一本ずつ交代し、二連続で得点した方が勝利となる。
春呼とナナカの第一ゲームがデュースにまでもつれ込んだのは、『鬼魅落』の影響が大きい。
(打ち合いは負けてねぇ。問題はあのサーブだ)
ナナカはサーブの時、毎回『鬼魅落』を打つ。
それを春呼はほとんど返球出来ていない。
(相手のサーブを返さないと、デュースは終わらないっ!)
次はナナカの『鬼魅落』の番。
「たあっ!」
高いトス、一回転してバックハンド、強い下回転がかかった速いサーブ。
春呼はツッツキで返す。
しかしネットを越えられない。
「イレブン、テン。マッチポイント」
「良いですよーナナカさーん」
評理が声援でナナカの背中を押す。
「、、、ふぅ」
春呼は一旦気持ちをリセットし、自分のサーブに集中する。
選んだのは、バックへの上回転。
長さは中くらい。
ナナカはバックハンドでクロスに返す。
(行けるっ!)
春呼は一瞬でバック側に回り込み、ストレートに打ち抜いた。
「イレブンオール。デュース」
「またデュースで並んだ!」
真珠は観戦を楽しんでいるようにも見える。
勝てると信じているからこそ、楽しむ余裕があるのかもしれない。
「シンプルに行け!」
克磨が言った。
(シンプル、か)
春呼はあまり深く考えないタイプだ。
よって、その言葉をそのまま受け取った。
(『鬼魅落』!)
(アタシはツッツキが苦手なんだよ)
春呼は、ミドルへの短い下回転に合わせて左に跳んだ。
回転が強く、コースは低く、球速もそれなりに速い。
(ツッツくよりも、打った方がシンプルだよな!)
下回転によってボールが落ちるよりも速く打ち返す。
(『迅雷』!)
ネット際でボールを叩いた。
すぐにワンバウンドしたために、相手にとっては非常に打ちづらい跳ね方をしている。
「うっしゃあっ!」
春呼はついに相手のサーブを攻略した。




