第四十六話「無駄」
「残念でしたね詩与さん!ですがこの負けから学んで成長していきましょう!」
「はい!」
カメラ映りを意識しながら評理は詩与に言った。
「美翠、お疲れ」
「ま、このくらいは勝てないとねー」
美翠はまだまだ余裕そうだ。
「では、早速次の試合に参りましょう!」
隅根の二番手が前に出る。
カメラの前でくるりとターンを決め、ウィンクをした。
「今すぐアナタへホップステップ!二年生の臼田ナナカだよ!」
「またこのテンションか、、、」
克磨はまたしてもため息をつく。
「克磨がこの練習試合を申し込んだのでしょう?こういう人達だと知らなかったんですか?」
女乃に言われる克磨。
「いや、動画も公開してないみたいだし、分からなかったのは仕方ないだろ?自分達だけでここまで盛り上がれるのは逆にすごいけど」
動画を公開しないにも関わらず、配信者のように振る舞うのには何らかの理由があるのだろうか。
克磨は後で聞いてみようと思った。
「それじゃ、行ってくる!」
箱石の二番手は鳴神春呼。
ペンホルダーのラケットを持ち、台の方へ向かう。
「ではでは!鳴神さん!カメラに向かって意気込みをお願いしますね?」
ナナカに促され、カメラの前に立たされる。
「え?こんなのさっきもあったっけ?」
「気にしない気にしなーい」
春呼はそういうものかと納得しカメラの方を向いて言った。
「えーっと、絶対勝つ!」
改めて位置につき、ラケットを構える。
サーブはナナカから。
「行っきまーす!」
ナナカはボールを高く放り投げる。
天井に当たるギリギリの高さだ。
手で握らず、垂直にトスしているので、ルール上問題は無い。
落ちてくるまでに、ナナカは時計回りに横一回転した。
回転の勢いと落下の勢いを合わせたサーブ。
(『鬼魅落』!)
強烈な下回転がかかったバックサーブが春呼のフォアに襲いかかる。
「だっ! 」
春呼はツッツキで返そうとしたが、回転に負けてネットに届かなかった。
「何だ?今の?」
春呼は今のサーブ、オニミラクを振り返る。
普通ではありえないくらい高くトスしたのも、落下による勢いをつけるため。
わざわざ一回転したのも、遠心力を強くするため。
無駄に思えるが、無駄では無い動き。
「ワン、ラブ!」
(あんなサーブ見た事ねぇ。、、、面白くなってきた!)




