第四十五話「妙技」
詩与のサーブ。
巻き込むように打つ逆横回転を混ぜたロングサーブ。
美翠は当然のように『何でもドライブ』で返す。
(『妙刀』!)
ミドルに短く返ってきた『何でもドライブ』を、詩与はバックハンドで返した。
ラケットを台とほぼ水平になるように寝かせ、斬るように横に薙ぐ。
ボールを当てるのは、ラケットの赤い下面の方。
(あれを返すんだ)
美翠はボールを追わず、感心する。
「ワン、ツー」
普通はドライブをこのような打ち方で返す事はしない。
タイミング、コース、回転、全てが完璧でないとボールを擦る事は出来ない。
全てを兼ね備える技巧、言わば妙技。
これが『妙刀』と名付けられた理由だ。
「どうです!すごいでしょう!」
「いやーすっごい。もう一回見たいくらい」
詩与は褒められて上機嫌になった。
「良いでしょう!そこまで仰るのなら見せてあげます!」
再び逆横回転のロングサーブ。
流れるように『妙刀』の構えに入る。
美翠も再び『何でもドライブ』で返した。
(『妙刀』!)
勢い良くラケットで横一文字に斬った詩与。
しかし、ミドルへの長いドライブは間合いを通り抜けてしまった。
「なっ」
「簡単に打たせる訳無いじゃーん。一応試合なんだし」
『妙刀』は成功すれば高い決定力を持つ。
しかし、成功条件は非常にシビア。
まず相手に短めのボールを打ってもらわなければならない時点で、受動的な技なのだ。
「そ、そんな!」
詩与は『妙刀』以外の技を持たない。
もちろん隅根でレギュラーの座を勝ち取っているので素の技術は高いが、美翠ほどではない。
あくまで成長途中の二年生なのだ。
全国レベルの三年生には及ばなかった。
「ゲームアンドマッチ、箱石高校、日野さん」




