第四十四話「代名詞」
「頑張れー美翠せんぱーい!」
美翠は部長であり、一番の実力者。
昨年の全国大会では優勝校と初戦で対戦する事になったが、箱石は敗北している。
ただし、美翠だけは強敵を相手にして勝利しているのだ。
「お相手は、、、」
美翠は隅根サイドを見た。
カメラの前にラケットを持つ選手がいた。
「どうも!スミネチャンネルのお時間です!今日最初の試合は私、二年の板野詩与と箱石高校の三年生日野美翠さんとのシングルス!」
対戦相手であるイタノシヨはカメラに向かって挨拶をしていた。
まるで配信者だ。
「よろしくお願いします!」
「お願いしまーす」
サーブは美翠から。
箱石のユニフォームはピンクに黒いラインが入ったデザイン。
背中にはゼッケンが付けられている。
「よっ」
美翠のサーブはフォアへの下回転。
詩与はツッツキでミドルへ返した。
「ほっ!」
軽く跳んで位置を合わせてから手首を回して打つ。
ドライブ回転がかかったボールは詩与のバックに向かう。
詩与はラケットに当てるが、回転の影響で弾いてしまった。
「ワン、ラブ」
「出た!『何でもドライブ』!」
真珠はかつて自分を苦しめた技を見て興奮する。
あらゆる打球をドライブで返す事が出来るその技は美翠の代名詞。
「やりますね!」
「どうもどうも」
美翠の二回目のサーブ。
一回目とは異なり、順横回転が混ざった下回転だ。
詩与は横回転を考慮してバック寄りを狙って返した。
結果、フォア側に少し流される。
それを美翠は再び『何でもドライブ』で返す。
(回転量自体はそんなに無いみたい)
詩与は打ち返した際の誤差から、『何でもドライブ』の回転におおよその目安を付ける。
(対応が早いね)
美翠はラリーを長引かせずに三球前後で得点を決めに行く事が多い。
攻撃的なプレイスタイルと汎用性が非常に高い『何でもドライブ』は相性が良い。
美翠が生み出した自分だけの技なのだから当然ではあるが。
(でも、何回まで返せるかな)
素早く攻めるのが美翠の得意分野ではあるが、連続で攻撃するのも強力な動きとなる。
もう一度『何でもドライブ』を繰り出す。
詩与はそれをドライブで返す。
球速は上がったが、美翠はそれを難無く返した。
もちろん『何でもドライブ』で。
「あっ!?」
何で返してもドライブを打たれる。
破壊力は無いが、恐ろしい技だ。
「ツー、ラブ」
「立て続けに二点取られてしまった詩与さん。ここから流れを自分の物にする事が出来るのでしょうか!」
評理がカメラの近くで実況している。
動画用の高性能なマイクも持っているらしい。
「早速ですが、あれを使います!」
詩与はカメラに向かって宣言した。
「おおっ、あれですか!」
「、、、ずっとこんな感じなのか?」
克磨は思わずため息をついた。




