第四十一話「課題」
「サーブは、右側から、、、」
紅は覚えたての知識を使って試合を開始する。
(すぐ後ろに下がる!)
アイサの邪魔にならないように右後ろに跳ぶようにして下がる。
紅のロングサーブを春呼が打ち返す。
(そっか、向こうもフォアに来るって分かってるんだ)
ダブルスの場合、相手の右、つまり紅から見て左側にサーブをバウンドさせなければならない。
コースが絞り込める分、サーブだけで得点するのは難しくなる。
アイサは春呼の速い打球を切るように返した。
カット、相手の上回転すらも下回転で返球する技術。
(やはりそう来ましたか)
女乃は春呼と立ち位置を入れ替え、ツッツキで紅のフォア側に短く返す。
紅は大きくフットワークしてこれを返した。
「もらいっ!」
春呼が強めに叩く。
「あっ!?」
紅は反応が遅れ、身体がアイサが返球するスペースを塞いでしまった。
「よし!」
「ご、ごめんなさい!」
紅はアイサに謝る。
大きく移動して打ちに行くという事は、戻る時も大きく移動しなければならないという事。
判断が遅くなればペアの邪魔をしてしまう事になってしまう。
「ドンマイドンマイ。だんだん慣れていこ」
「はい!」
紅は気を取り直して再びサーブの構えに入る。
(今度は、下回転で)
速いラリーを避けるため、下回転の短いサーブを選ぶ。
高速の打ち合いとなるとフットワークをより速く行わなければならなくなるので、紅は無意識にこのような選択をした。
「春呼!」
「オッケー」
春呼にしては珍しく、強打ではなく軽く打ち返した。
アイサはカットでバック側に返す。
女乃は初めからバックに来るのが分かっていたかのように構えていた。
流れるようなバックハンドで、横回転をかける。
紅のミドルに向かって飛んでいくが、少しずつ曲がってバックにバウンドした。
「なっ」
紅は捉え切れなかった。
「おおー」
真珠は感嘆の声を漏らす。
(今のは、連携?どういう事を伝えたんだろう)
紅は春呼と女乃は互いの意思を把握して動いたように感じた。
「いつもより疲れた、、、」
紅は脚を抑えながら呟く。
ダブルスは止まっていられる時間がほとんど無い。
打つ回数は単純計算で半分になるはずなのに、紅は倍近く疲れてしまった。
(左利きの私でもこれだけ疲れた。でも右利き同士のペアならもっと動いてるはず、、、)
試合は紅とアイサの負け。
紅は自分の力で一点も入れる事が出来なかった。
「次も勝つ!」
右利き同士のペアはぐるぐる回るようにフットワークし続けなければならないのだが、春呼も女乃もまだ体力に余裕がある。
(やっぱり、先輩達はすごい)
紅は自分の実力がまだまだ足りていない事を再確認した。
(私なんて、何か出来るようになっても、それより多く出来てない事が出てくる)
上達すればするほどさらに多くの課題が見えるようになる。
(それなのに楽しいって思っちゃうのは、良くないのかな)




