第三十六話「記事」
「女子の部優勝は箱石高校の白雲真珠さんです!おめでとうございます!」
真珠は小さなトロフィーを受け取る。
真珠の強さは明らかに頭一つ分以上突出していた。
「白雲さん!これからの目標について伺ってもよろしいですか!」
週刊学生スポーツ卓球の標、記者の吹田晶保がスマホをマイクのように向けて質問する。
真珠は自信満々に答えた。
「私の夢は世界一の卓球選手になる事です!そのために、まずは高校卓球の頂点に立ちます!」
その宣言を聞いたほとんど全員がざわついた。
ただ二人、克磨と紅を除いて。
「真珠なら本当に、、、」
「ああ。必ず辿り着ける。辿り着かせる」
「ええと、白雲さん、おめでとう」
「ありがとうございます!」
引率の相田羽子は真珠の声量に驚いて肩を震わせる。
犬木高校から駅までの道を歩きながら克磨は言う。
「真珠。正直、この大会のレベルは低い。お前なら勝って当然だ。喜ぶなとは言わないがもっと上を意識するようにしてくれ」
「分かったー!」
真珠は跳ねながら返事した。
試合中とは異なり、真珠のテンションは高い。
「卓球やってない間は子供みたいだよな、真珠って」
「打ってる時はあんなにかっこいいのにね、、、」
真珠は卓球をしている間、特に試合中などの集中している時には普段の表情から大きく変わる。
感情が外に表れないため、冷酷さすら感じさせる。
「わっ!?猫!」
「普段からあの冷静さをちょっとでも発揮してくれれば良いんだが」
「紅ちゃん!私標に載ってるよ!ほらほら!」
週刊学生スポーツは毎週木曜に発売される。
ウェブ版を定期購読している真珠はスマホの画面を紅に嬉々として見せた。
「わ、すごい!こんなに大きく!」
愛知の小さな大会にも関わらず、かなり大きな記事になっている。
真珠が技を放つ瞬間を捉えた写真は迫力満点だ。
「新人強化大会に現れた超新星の如き逸材!、、、力を後ろに溜めて槍のように前に放つその絶技を、私は『槍貫』と表現したい。、、、彼女は高校卓球の頂点を世界へ飛翔するための第一歩として捉え、、、」
紅は強調されている部分だけをさっと読んでみた。
言い回しに若干の独特さはあるが、真珠を絶賛しているという事は伝わった。
「『槍貫』!かっこいい名前もらっちゃった!」
真珠は以前から卓球の標を読んでいるせいか、技名のセンスも標と合致しているらしい。
「真珠!いるか!見たよな標の記事!」
教室に大きな声が入ってくる。
「春呼さん!」
春呼は真珠を見つけると最短距離で接近した。
「やったな!標にどーんとでっかく載るなんて羨まし過ぎる!」
「ふっふーん!存分に羨ましがっちゃって下さい!」
紅はまだこの温度についていく事は出来なかった。




