第三十三話「些細な」
「ここで、決める」
ここまで真珠が二ゲームを取り、凛子には一ゲームも取らせていない。
真珠は次のゲームを取れば勝ち。
新人強化大会を優勝するという事になる。
(サーブは向こうから。バックドライブも攻略されつつある。実力差もある)
凛子は息をゆっくり吐いて、しっかりと前を見据える。
(それでも、最後まで戦い抜く!)
真珠の短い下回転サーブをネット際に返し、すぐに元の位置まで戻る。
基礎能力で勝てないからと言って基本の動作を怠ってはいけない。
(ここからでも打てる!)
かなり短く低いボールだが、真珠は無理矢理ドライブに繋げた。
ネットを掠めたので回転が弱まっている。
(格下だと思って油断したわね!)
このような甘い球なら流石に決め切れる。
バックで叩き、久しぶりの得点となった。
「ラブ、ワン」
「真珠ーっ!雑だぞーっ!」
克磨が真珠を叱る。
「うぅ、、、」
真珠は迂闊なプレイを反省した。
「集中力が切れちゃってるね」
「ああ。二ゲーム目に集中し過ぎたか」
集中力というのは無限に維持出来るものではない。
時間だけでなく、些細なきっかけでも途切れてしまう事がある。
真珠の場合、ゲームの切り替わりのタイミングで途切れてしまった。
意図的に集中を切った訳ではないが、どうしても集中には波がある。
(ふぅ。無理して打たない方が良かった。丁寧にって克磨が言ってたのに)
再び真珠のサーブ。
今度は逆横回転を混ぜた上回転のサーブ。
巻き込みサーブと呼ばれる事が多い。
フォアへのサーブに対し、凛子はあえてフットワークをしてバックハンドで返す。
逆横回転は打つと左に流される。
真珠ほどの回転の使い手だと、フォアハンドで返すと自分の身体側に飛んでしまう。
ストレートに返されたボールを真珠はバックハンドでバックに返す。
(これだけ空いていればバックを狙ってくるわよね!)
フォア側へ寄っていたため、空いているバック側を狙われる。
これは凛子の予想通り。
予想していれば素早くフットワーク出来る。
(もらった!)
真珠の身体のすぐ近く、ミドルを狙って渾身のバックドライブを放つ。
「ワンオール」
「な」
真珠が得点した。




