第三十一話「集中」
一ゲーム目は真珠が取った。
勝つための三分の一だ。
「真珠、細かいミスが多いぞ。甘い球が増えると相手の攻撃も増える。そうなると真珠が攻撃する回数が減る」
「それは嫌だね。うん、もっと気を付けるよ」
ゲーム間にある一分間のアドバイスの時間。
克磨は手短に要点だけを伝えていく。
「とにかく丁寧に打っていこう。そうすれば素の力で押し切れる」
「分かった!行ってくる!」
「ああ、次も取れ!」
真珠は台に戻っていく。
凛子はその後に戻ってきた。
コートチェンジをして、二ゲーム目が始まる。
凛子はボールをラケットの上で跳ねさせながら呼吸のリズムを作る。
「ふぅ」
自分のタイミングで構え、集中力を高める。
真珠も相手のサーブに備えて構えた。
(ロング!)
真珠が第一ゲームの一球目でやったのと同じ。
スピード重視の上回転。
打たなくても相手コートで二回バウンドしないような長いサーブをロングサーブと呼ぶ。
ロングサーブは速いので得点しやすいが、相手の強打も呼びやすい。
(丁寧に!)
ロングサーブを叩く際にも乱暴にならないように面をしっかり意識する。
フォームを極力崩さない基本の強打。
凛子のバック側へ低く飛んでいく。
(流石に返してくるわね)
凛子は打ち合いに挑戦する。
真珠の実力が分かっている状況での強打の打ち合いはハイリスクだが、その分ラリーを制した時に流れを一気に掴める。
「はっ!」
バックからクロスに返す。
真珠はラケットを当ててブロックする。
球速を落とす事で凛子のリズムを狂わせる。
凛子は冷静にミドルへ返した。
「ふっ!」
真珠は回り込みドライブ気味にこれを返す。
狙うのはバックのネット際。
かなり鋭いコースだ。
「つっ!?」
凛子はこの攻撃を予想出来なかった。
使えるスペースが限られた難しいコースだからだ。
(あんなのでも平気で打ってくる。まだまだ見通しが甘いわね、私)
凛子はこのラリーでまた一つ学習した。
「ラブ、ワン」
真珠は息をゆっくり吐く。
頭の中はシンプルにまとまっている。
集中し、雑念が無い状態とも言える。
(このまま、勝つ)




