第三十話「咄嗟に」
(様子見はここで終わりよ)
凛子にサーブが回ってきた。
ここから本格的に攻め始める。
(短い!)
真珠はネットすれすれの下回転を何とかツッツキで返す。
しかし返した場所は、バック。
回転量もスピードも無く、浮いた。
つまり。
(もらったわ!)
凛子のバックドライブが完璧に決まった。
真珠は無失点にこだわらない事にしていたが、それは失点が喜ばしいという意味では無い。
失点は失点だ。
(迂闊にバックに打つとこうなる訳ね)
真珠は己の対応を反省する。
「ワン、ツー」
次のサーブも似たような下回転。
とにかく短いので強く返す事が出来ない。
とりあえずフォアに短く返した。
「はっ!」
凛子はフォアへ長くツッツキ。
真珠はすぐに後ろに戻る。
(ドライブ、、、は時間が足りない)
真珠は攻撃したい気持ちを堪え、横下回転で返した。
ここで咄嗟に横回転を混ぜられる一年生はそういない。
「はぁっ!」
凛子はそれをドライブで打ち返す。
しかし僅かにコースが横に逸れ、アウトになった。
(横回転。あの体勢から、ね、、、)
凛子は真珠のプレイに息を呑む。
(でも、全く通用しない訳じゃないわ。勝機はある!)
「シックス、テン」
真珠のマッチポイント。
リードしているが、決して油断は出来ない。
(バックドライブは効いてる。そこまで持っていければ)
しかし、凛子からすれば最悪のタイミングで真珠がサーブ権を持っている。
(ここで決める!)
真珠が放ったのは横回転が全くかかっていない下回転サーブ。
しかもバックに高く。
(打つ!)
凛子はもちろんバックドライブの体勢に入った。
十分に溜め、一気に解放する。
強い回転がかかったバックドライブは真珠のミドルに飛んでいく。
(来た!)
真珠は素早く回り込み、ドライブをドライブで返した。
(あの時と同じっ!?)
紅が凛子のバックドライブを破った時と同じ。
上回転をさらに強い上回転で相殺したのだ。
真珠なら、回転を上書きしつつ強い回転をかけられる。
「たぁっ!」
凛子は咄嗟にラケットをボールに向かって伸ばす。
しかし、強い上回転のせいで大きくオーバーしてしまった。
「ゲームトゥ白雲。イレブン、シックス」
「よし!」




