第三話「リズム」
「大型新人が入ってきたみたいだね」
いつの間にか扉が少し開いていて、そこから金色の髪が見えた。
「えっと、、、」
真珠はその青い目に魅了された。
扉を完全に開けて格技場の中に入ってくる。
「見学の一年生ね」
「あ、はい」
「私はアイサ・ファーレイン。副部長だよ。よろしくね」
(さっき言ってた生徒会の)
アイサは見るからに純日本人ではない。
「アイサはイタリアと日本のハーフなんだよー。箱石卓球部のお色気担当」
「変な認識植え付けないで。ところで、名前を聞いても良い?」
「一年の白雲真珠です」
真珠の後ろからパタパタと紅が近づく。
「一年の七星紅です!よろしくお願いします!」
紅はさっきより気合いが入っているように見える。
「二人ともよろしく。美翠、今どこまで終わった?」
「基礎練の手前かな。別にカゴ当てで遊んでた訳じゃないよ?せっかくだしゲーム感覚で腕試ししてもらおうと思っただけだから」
「言い訳っぽく聞こえるけど、まぁ良いよ。先にやってて」
そう言って更衣室に向かうアイサ。
真珠は、アイサにはしっかり者という言葉がぴったりだと思った。
「じゃ、基礎練始めようか」
女乃がカゴを片付け、春呼がボールが入った箱を持ってきた。
「一年生のお二人はわたしと」
美翠はボールをいくつかポケットに入れ、台を挟んで紅と向かい合った。
「紅ちゃんは未経験だっけ?とりあえず見よう見まねで良いからやってみよう」
「はい!」
紅はボロボロのラケットをギュッと握る。
美翠が軽くボールを打つ。
「ふっ!」
叩くようにラケットを振る。
ボールは美翠の顔に向かって一直線に飛んでいく。
「よっ」
左手でキャッチした。
「わっ!?すみません!」
「大丈夫大丈夫。ま、初心者だし打てただけで十分だよー」
紅は若干しょんぼりしながら下がる。
代わりに前に出たのは真珠だ。
「真珠ちゃん、フォアでラリーやってみようか」
「はいっ!」
フォアハンド。
右利きの場合、右から左にラケットを振る動作。
全ての基本となる動きだ。
美翠のサーブを真珠がフォアハンドで返す。
卓球台は右側と左側をラインで分けられており、フォアハンド側、つまり利き手側をフォアと呼ぶ。
台の対角線上でボールを打ち合うのだ。
「おおー、安定してるねー」
カコンカコンカコンカコン。
心地良いリズムが奏でられる。
「真珠ちゃん、ちょっと速くなってきてない?」
「そんな事無いですよ?」
そうは言いつつも、次第にラリーの速度が上がってきている。
紅は真珠の顔を覗き込むようにして見た。
口角が上がっていて、乳白色の目にはボール以外を映していない。
「さては相当な負けず嫌いだね」
美翠の当てはめた言葉よりもしっくり来るフレーズが紅の思考によぎった。
(どっちかと言うと戦闘狂かも、、、)