第二十九話「待ち構えていた」
新人強化大会、決勝戦。
お互いに一ゲームも落とさずに決勝にまで駒を進めた実力者。
その二人がぶつかれば、これまでに無い激戦となるだろう。
「犬木高校、荒川凛子さん」
「頑張ってーっ!」
「行けー!」
「ファイトー!」
凛子は声援に背中を押されながら台に着く。
「箱石高校、白雲真珠さん」
「真珠、好きなだけ暴れてこい」
「頑張ってね、真珠」
真珠を応援する人数は少ない。
だが、応援する気持ちでは負けていない。
「白雲さんって強いのね、、、」
羽子は卓球のルールは大して分からないが、流石に決勝まで勝ち進む事のすごさは分かっている。
「お願いします!」
サーブは真珠から。
決勝戦はこれまでと異なり、三ゲーム先取で勝利となる。
相手に影響されない数少ない攻撃手段であるサーブを自分から打てるというのは、試合の流れを掴む上でアドバンテージになる。
(最初は、これ!)
真珠は速い上回転のサーブを相手のバック側に放つ。
いきなりの最高速サーブで意表を突く。
対する凛子は何とかこれに対応した。
真珠はミドルに返ってきた球を回り込んで叩く。
「つっ!?」
凛子はラケットに当ててブロックしようとするが、大きくオーバーとなってしまった。
(やっぱり、強い!)
凛子は真珠の強さを改めて実感する。
他の部員の話や映像で知るよりも、恐ろしい。
(あれに反応して、当ててきた。少しでも気を抜くと一気に持っていかれそう)
真珠は次にどんなサーブを打つか決めた。
ラケットを赤い面を上にして寝かせ、ボールの下の方を強く横から擦る。
強い横下回転のサーブがネットすれすれをゆっくり飛んでいく。
凛子は無難にツッツキで返す。
(すごい回転。バックを狙ったのに、フォアまで流された)
フォアで待ち構えていた真珠がドライブを決める。
「苦手なのはあんまり無いけど、ブロック、カットみたいに守るのはほとんどやらないかも。あ、それと横回転のサーブもやらないかな。三球目がどこに返ってくるか分かりにくいから」
真珠は以前克磨にそう語った。
真珠は攻撃型のプレイスタイル。
攻撃以外が出来ない訳ではないが、単純に攻撃が一番好きなのだ。
「サーブで横回転を使わないってのはもったいないな」
ある日、克磨は真珠のサーブについてアドバイスした。
「そう?三球目で決められるなら変わらないと思うんだけど」
真珠は自分の回転でコースの予測が狂ってしまうのを避けている。
「回転の方向さえちゃんと分かっていれば横回転サーブは強い武器になる。真珠くらい回転をかけられればなおさらな」
「武器!」
克磨はボールを手で回しながら説明する。
「まず、自分から見て右回り、時計回りに回転するのが順横回転。相手がこれを返すとバック側に返ってくる事が多い」
「うん」
「バックに返ってくるって分かってるならバックで待ち構えておけば良い。準備さえ出来ていれば得点しやすくなる」
「確かに!」
横回転をまとめて横回転と考えているから複雑に見える。
実際は順横回転と逆横回転、正反対の回転があると言うのに。
「次に逆横回転。これはさっきと逆の回転だな。相手が打つとフォアに返ってくる」
「バックサーブならこっちだよね」
「そうだ。この二つの横回転がどこに返ってきやすいかだけ覚えておけばサーブからの三球目の流れが作りやすくなる」
真珠は難しく考える事が苦手だが、能力の高さでそれをカバーしてきた。
克磨が弱点を補えば、真珠はより強くなれる。
「よし!」
「ツー、ラブ」




