第二十二話「長椅子」
「着いたーっ!」
真珠は両手を挙げる。
新人強化大会の会場である犬木高校に到着した。
「真珠、あんまり騒がない方が、、、」
「先生、受付に行ってくるので先に中に入っておいて下さい」
「あ、はい」
犬木高校に乗り込んだのは白雲真珠、七星紅、観空克磨、そして引率の相田羽子。
名前だけの顧問とは言え、大会などでは引率しなければならないのだ。
「白雲さん、七星さん、行きますよ」
「はーい」
犬木の体育館は二階にある。
珍しい構造だが、大会を行えるくらいの大きさはある。
「おおー!広い!」
「格技場の倍以上あるね」
バスケットボール、バレーボール、バドミントンなど、体育館を利用する種目は多い。
卓球が体育館を埋め尽くすのは真珠にとって驚くべき事であった。
「この辺りにしましょう」
壁際に並べられた長椅子の一つに陣取る。
「あ、克磨!こっちこっちー!」
体育館に入ってきた克磨を遠くから見つけた真珠が呼ぶ。
「これが今日の予定。九時半に挨拶があって、そのまま説明。それが終わったら昼まで合同練習。昼休憩の後はトーナメント形式で試合だ」
克磨はプリントを渡しながら伝えた。
「合同練習って何するの?」
「さぁな。具体的な指示はここの監督が出すらしいけど」
犬木高校は県大会上位常連。
監督の腕もそれなりに期待出来るだろう。
「時間になりました。選手の皆さんは前の方にお集まり下さい」
音質の悪いスピーカーから全体にアナウンスされる。
「行くよ紅ちゃん!」
「う、うん!」
真珠は紅を引っ張って連れていく。
羽子と克磨は長椅子で待つ。
「観空君に指導者の役割を任せてしまってごめんなさいね。本来なら顧問の私が何か教えるべきなんだけど」
「いや、こうして引率してもらえるだけで十分ですよ。それに、指導するのも一応自分の意思で決めた事ですし」
「隣の台で良かった。遠いと見づらいからな」
練習するグループはランダムに決められた。
幸い真珠と紅は隣の台で打つ事になったため、克磨は二人の様子を同時に見る事が出来る。
「お願いしゃす!」
午前中の練習は男子も混ざって行う。
高校から運動部に入った紅にとっては、男子と合同で練習する事は初めてとなる。
「お、お願いします!箱石高校の七星紅って言います!」
おどおどしながらも名乗り合い、練習を開始する。
「えー、まずはフォアのラリーから」
犬木高校の監督がマイク越しに指示を出す。
「あ、七星さんって左利きなんだ」
「こういう時ってクロス?ストレート?」
「えっと、いつもはストレートでやってるかな。私の時だけ違うコースになっちゃうけど、、、」
「いや全然良いっすよ」
(優しそうな人達で良かった、、、)
紅は心の中で胸を撫で下ろす。
「ひぃぃぃ、、、」
隣の台では真珠が他のメンバーを蹂躙していた。
「真珠!もっと抑えろ!」
克磨が叫ぶ。
「普通に打ってるだけだって!」
よりによって初心者が固まっているグループだった。
真珠が普通に打つだけでもまともに反応出来ない。
「一割の力で良い!力を調整する練習だと思え!」
「一割、ね。よし」
真珠は相手の緩いサーブを慎重に打った。
ほとんど当てただけだが、初心者にはそれでちょうど良いくらいだった。
「、、、今日は教える側に回らないとかな」




