第二十話「同時に」
克磨が正式なコーチとなり、まずは個別にミーティングを行う。
真珠の番になった。
格技場の端に置かれた椅子に座って克磨が待っている。
「じゃあ真珠、自分のプレイスタイルを説明してみてくれ」
「うん。えっと、速いラリーが好きで、決める時は大体ドライブ。ツッツキもやるけど、ちょっとでも長い球はすぐドライブにしてるかも」
克磨は真珠が言った事をバインダー型のノートに記録していく。
「かなり攻撃型なんだな。ドライブ以外に得意な事はあるか?」
「他はー、スマッシュとかチキータとかかなー。攻撃全般は何でも好きだよ」
「分かった。逆に苦手な事とか、あまりやらない事とかあるか?」
克磨は次のページに進む。
「苦手なのはあんまり無いけど、ブロック、カットみたいに守るのはほとんどやらないかも。あ、それと横回転のサーブもやらないかな。三球目がどこに返ってくるか分かりにくいから」
ノートに真珠の情報が記されていく。
克磨は真珠のプレイスタイルをおおまかに分析し終わった。
「大体分かった。ミーティングは以上だ。戻って良いぞ」
「はーい」
真珠は一刻も早く練習に戻るため、走って台の方に向かった。
「次は実際に見てみるか」
克磨は全体に向かって指示する。
「十五分になったらゲーム練習を始める!」
「よっしゃ!ゲーム練習!」
春呼がバチンとスマッシュで無理矢理決める。
「部長の役割無くなっちゃったかもねー。今の方が楽で良いけど」
「練習に集中出来るから気は楽かもね。まぁ、これから練習メニューはハードになると思うけど」
「うへえ」
時間になり、ゲーム練習が始まる。
組み合わせは克磨が決めた。
「美翠さんとアイサさん、女乃さんと春呼さん、真珠と紅で試合。三ゲーム先取で、負けた方はスクワット三十回」
紅は絶望する。
「真珠が相手かぁ、、、」
だが、すぐに切り替える。
「でも、今の私なら!」
三試合が同時に始まる。
克磨は全試合を同時に見ながらノートに記入していく。
「やっぱり真珠には全然通用しなかった、、、」
紅は成長したが、それでも真珠と渡り合うにはまだ足りなかった。
「スクワット三十回、始め」
アイサ、女乃、紅が横に並んでスクワットを開始する。
「じゃあアタシは四十回やる!」
春呼も紅の横に並んでスクワットを開始する。
「ペナルティの意味が無くなりませんかね?」
女乃はそう言いながらも楽しそうだ。
「私もやります!」
真珠がさらにその隣に並んでスクワットをし始める。
「じゃ私も五回だけ」
美翠はその場で始めようとする。
「そこでキープ。息は止めない」
「えぇー」
美翠が克磨に目をつけられる。
「五回は五回だから。はいゆっくり戻す」
美翠はかえってキツいスクワットをする事になってしまった。
「春呼さん一回少ない。カウントが一個ずれてる」
「おいおい、目が何個あるんだ?」
全員の進捗を同時に把握しつつ、目の前の指導も行う。
克磨に卓球の才能は無かったが、コーチとしての才能はあるようだ。




