第十五話「リサーチ」
「真珠ちゃん。新人強化大会がいつに行われるか覚えてる?」
「もちろんです!五月の終わり、二十八日の土曜日ですよね!」
真珠は新人強化大会で優勝する事を現在の目標にしている。
忘れるはずも無い。
「そう。今から一ヶ月半くらいあるよね。その一ヶ月半で真珠ちゃんに自分だけの技を習得してもらうよ」
技。
先程美翠が使用した『何でもドライブ』も技である。
「おおー!響きがかっこいいです!」
「ただし!生半可な修行じゃ習得出来ないよ。わたしの時は一週間でラバーがダメになっちゃったし」
何百回、何千回と同じ動作を繰り返し練習した事で、ラバーが一気に消耗してしまったのだ。
「それでもやります!強くなるためですから!」
真珠はやる気に満ち溢れている。
「うん、良い返事。それと、強くなるためには修行の他にもう一つやらなくちゃいけない事があるんだよ」
真珠はわくわくしながら言葉を待つ。
「ある人物を口説き落として来てよ」
「え?」
「ターゲットはあの家に住んでいます」
真珠、紅、女乃は練習終わり、学校近くの住宅街に来ていた。
その家は周りの家の倍近くの大きさで、一般人からすれば豪邸に見える。
近くの公園で作戦会議を行う。
「私の調査によれば、ターゲットの好みのタイプはロングヘアのお淑やかな女性です」
「そんなのどうやって調べたんですか、、、」
紅は女乃のリサーチ能力に怪しさすら覚える。
「彼に好かれる姿で交渉を行った方が成功率は上がるでしょう。という訳で」
女乃はカバンの中から小道具を次々と取り出す。
「カツラに、メガネに、髪飾り?」
「変装ですよ、変装。お淑やかと言っても色々ありますし、三人分の三パターン用意しました」
「いつもこんなの入れてるんですか?」
女乃は笑う。
「ふふ、必要な時だけですよ」
女乃が後ろで結んでいた長い髪を解き、後ろに流す。
その仕草に真珠と紅は見とれてしまう。
「用意出来ましたか?」
「はい!」
女乃が持ってきた手鏡を見て、真珠と紅は自分達の仕上がりを何度も確認した。
「髪が長いとまるで別人ですね」
「お嬢様風ですの」
真珠はロングヘアに煌めく髪飾り。
早くも役に入り込んでいる。
「紅も似合っていますよ。お淑やかな雰囲気が出ています」
「うぅ、本当にやるんですか?」
普段と違う自分の姿に、恥ずかしさを感じている。
「今更何を仰いますの。これも強くなるために必要な事ですわ」
「ノリノリだね、、、」
紅は、セミロングの髪は弄らずメガネをかけた。
これだけでも印象は大きく変わる。
「それでは、突入しましょう」
「ごめん下さい」
インターホンを鳴らし、要件を伝える。
応答したのはターゲット本人ではなく、母親らしき女性だった。
「今行かせますねー」
「家にいてくれたようですね」
「バレないと良いんですけど、、、」
綺麗な黒のドアが開く。
「観空克磨くんですね。少々お話が」
観空克磨。
真珠達と同じクラスの男子。
「それは良いですけど」
女乃の後ろにいる真珠と紅に視線を向ける。
「お前ら何でそんな格好してるんだ?」
(何でバレてるの!?)
真珠は内心でかなり焦る。
「な、何の事でしょう?」
「いや、公園でそれ付けてたの見てたぞ。部屋からちょうど見えるから」
真珠の髪、と言うよりカツラを指さした。
「もっと遠くで変装するべきでしたね」
女乃は反省する。
「うん!忘れて!」
真珠は精神のスイッチを強制的に切り替える。
髪飾りとカツラを取り、元の自分に戻る。
紅も恥ずかしそうにメガネを外した。
女乃は髪を結ばずそのままの状態だ。
「それで、話って?」
克磨は深く追及せず、本題に入らせる。
「観空克磨くん。あなたに、卓球部のコーチになってもらいます」




