第十四話「技」
「うっまぶしっ」
真珠がアイマスクを取ると、明るい世界に目を焼かれた。
「いやーまさか本当に出来ちゃうとはねー」
美翠は改めて真珠の強さを思い知る。
「じゃあ次はわたしとやろっか」
真珠は目をパチパチさせながらその言葉の意味を考える。
「はい!やります!絶対やります!」
部長である美翠はさぞ強いのだろう。
そして美翠と戦う事はどれだけの学びになるのだろう。
真珠は試合前から興奮していた。
「二ゲーム先取ね。あ、サーブいる?」
「じゃあ、サーブもらいます」
ボールを受け取り、宣戦布告する。
「本気で勝ちに行きますから!」
美翠は微笑みで返す。
掌にボールを乗せ、ラケットを構える。
「お願いします!」
横回転がかかったサーブをバック側に打つ。
美翠はツッツキで返した。
無駄が無い最適化された動きだ。
(ドライブをミドルに!)
回り込んでドライブの体勢に移る。
身体の近くはどうしても打ちづらい。
美翠の身体に近いミドルにドライブを放つ。
「ほっ」
美翠は軽くジャンプし、位置取りを調整する。
ラケットをぐいんと回してドライブの回転を打ち消し、上回転をかけなおした。
ほとんど手首だけを使って回転をかけている。
(何、今の)
真珠は意表を突かれて対応が遅れる。
ラケットには当てたが、回転に負けてアウトになってしまった。
(でも、次は返す!)
強い横回転をかけたサーブは左に曲がってフォアに飛ぶ。
「よっと」
再び小さくジャンプし、空中で手首を捻る。
ボールをラケットに乗せ、一瞬の内に回転を加えて返す。
(もう目は慣れた!)
バック側に回り込み、相手のバックへクロスでドライブ。
速く鋭いドライブは決定力の塊。
「ていっ」
ドライブをバックスマッシュで打ち抜く。
真珠のフォア側にストレートで決めた。
「回転が弱くなってるんじゃない?」
今の真珠のドライブは通常よりも回転量が減っていた。
相手の打球を返す事に集中したせいで、ドライブにとって重要な溜めが足りていなかった。
ドライブは相手の下回転を自分の上回転で上書きし、無理矢理打ち返すような技術。
膝を曲げて下に身体を沈ませ、打つタイミングで一気に解放する事でパワーを生み出している。
しかし、美翠の素早い攻撃に対応するために真珠は溜めを短縮し過ぎてしまった。
「はぁ、はぁっ、私、まだまだ足りてないっ!」
結局真珠は美翠から一点も取れずに負けてしまった。
全てギリギリで点にならない。
「真珠ちゃん、お疲れー」
「美翠さん。全然敵いませんでした。あの、特に手首だけで回転をかけるのがすごかったです」
美翠は汗を拭きながら答える。
「ああ、あれは『何でもドライブ』って技だよ」
「『何でもドライブ』?」
少なくとも真珠は初めて聞いた。
「そう。どんな回転の球でもドライブで返すからそう呼んでる。そのままでしょ?」
ネーミングは安直だが、恐ろしい技だ。
「技、ですか」




