第十三話「反応」
「さて、午後からはゲーム練習をやろうか」
午前は体力作りや基礎を固める練習を行った。
昼食後はより実践的な練習となる。
「真珠ちゃんは紅ちゃんと試合。得点はわたしがやるよ」
「え、でも」
真珠は少し躊躇う。
紅が強くなってきているとは言え、真珠との力の差は歴然。
これでは互いの練習にならない。
「もちろん真珠ちゃんには重ーいハンデを課しちゃうよ。はいこれ」
美翠が手渡したのはアイマスクだ。
「普段わたしが使ってるのだけどね。これを付けてやってもらうよ」
「これを付けたら何も見えないんじゃ、、、」
今度は紅が心配そうにする。
「そう、見えないね。まぁ聴覚だけでも出来るでしょ?真珠ちゃん」
「流石に無茶ですよ、、、」
とは言うものの、やらなければ始まらない。
「真珠、大丈夫?」
「うん、やるだけやってみるよ」
台の位置を手で確認し、ラケットを構える。
「一ゲームね。あ、じゃんけんはわたしが代わりに。じゃーんけんぽん」
勝った紅がサーブを選ぶ。
「「お願いします!」」
紅は基本のサーブを確実に出来るようになった。
(フォアの真ん中くらい。高さは、、、)
真珠が盛大に空振りする。
コース、高さ共に予測が的中していたが、タイミングが合わなかった。
「ちょっと遅いねー」
真珠には見えないが、美翠は指を立てて得点をカウントしている。
「次こそ!」
紅が放ったサーブの音の強さ、方向、タイミングなど、全てを一瞬で計算し、ラケットを振り抜く。
ただし、真珠には計算をしているという自覚が無いが。
ダンッ!
「良いね。ジャストだよ」
まともな回転がかかっていない紅のサーブなら簡単にスマッシュで決められる。
「本当に出来るんだ、、、」
紅は真珠が持つポテンシャルの高さに驚く。
だが、このまま負けるつもりも無い。
今度は紅が真珠のサーブを受ける番。
「わうっ!?」
紅は何がどうなったのかも分からず、あっという間に二点失った。
サーブは、唯一相手に干渉されずに打てる攻撃。
視界が奪われているとは言え、自分のタイミングで打てるサーブを外すほど真珠の努力は少なくなかった。
(せめて、こっちのサーブくらいは!)
回転は知らないし、コントロールも良くない。
だが、それでも出来る事はある。
コン、カン。
(結構、際どいっ!)
身体の正面に近い、打ちにくい位置。
半歩分左に動いて返す。
紅は再び真珠の身体の正面に向けて打つ。
視界が無い真珠は下手にフットワーク出来ず、強打を封じられている。
(チャンスくらいは作らないと!)
恐らく紅はこの試合に負ける。
だが、ただの負けにするつもりは無い。
「浮いたっ!」
正面への連続攻撃で、ついに真珠の打球がボール一つ分浮いた。
甘い球なら、覚えたてのスマッシュで決められる。
「うわお」
美翠が驚きの声を発する。
紅の渾身のスマッシュを、真珠がバックハンドで返したのだ。
左下から右上へのバックハンドは、まるで居合。
音だけでスマッシュに反応し、斬った。
「真珠ちゃん、マッチポイント」
結局、紅はほとんど得点出来ないまま、真珠のマッチポイントを迎えてしまった。
「やっぱり真珠は規格外だよ、、、」
だが、紅の目は諦めを映していない。
あるのは熱意と挑戦願望。
「でも、これからもっと近付いていくから!」
今はまだ、真珠がどんな回転をかけているのかも分からない。
下に寝かせたラケットを登るようにボールが飛んでいく。
「勝者、真珠ちゃーん!」




