第十二話「新しい」
真珠と紅にとって初めての、土日に行われる練習。
午前と午後、続けて行われるためそれなりにハードだ。
「いやー日曜もちゃんと来て偉いねー」
美翠はシューズの紐を結びながら言った。
「大会が近いですから!もちろん、そうでなくても練習には来ますけど!」
真珠は元気良く答える。
「私も少しでも多く練習して、足手まといにならないようにします!」
「やる気があるのは良い事だね。まるで一年生だよ」
「実際一年生だからね?」
アイサが更衣室から出てくる。
「紅、昨日色々揃えたんだってね。ちょっと見せてくれない?」
「はい!真珠に選ぶの手伝ってもらいました」
紅は傷一つ無い綺麗なラケットをアイサに手渡す。
「ラバーは両面共ホンタクのグリッドプライドです」
やや小さめのシェークハンドのラケットの両面に、滑らかな裏ソフトが貼られている。
「スタンダードなやつだね。一時期わたしも使ってたよ」
美翠が今使っているラバーも裏ソフトだが、紅が買ったものより上級者向けだ。
大抵、上級者向けのラバーはスポンジが厚いので回転がかけやすく反発力が強い。
逆にスポンジが薄いラバーは威力は抑えられるがコントロールしやすいため初心者向けとされる。
グリッドプライドのスポンジは薄く、初心者の紅にはぴったりなのだ。
「使ってみた?」
「いえ、まだ使えてないです」
アイサはボールを跳ねさせながら台に入った。
「じゃあ今デビューしよ」
紅は新しいトレーニングウェアを揺らし、新しいシューズで踏み込み、新しいラケットを構える。
「お願いします!」
覚えたての構え。
膝を曲げ、やや前傾姿勢になる。
左右どちらにも対応出来るように、ラケットは身体の正面。
アイサのサーブはフォアに緩い縦回転。
「はっ!」
紅は自分で自分の打球に驚く。
「わ、すごい!」
これまで使っていたボロボロの貸し出し用ラケットと異なり、ボールがすっと離れる。
「バックも!」
バックハンドでも綺麗に返せる。
「そのままの勢いでスマッシュしてみよっか」
アイサは高めのチャンスボールを作り出す。
紅は教わった事の無いスマッシュの指示に困惑する。
「ボールを打てる位置までフットワーク!基本はフォアハンドと同じ打ち方!狙いを定めて、踏み込みながら叩きつける!」
大まかな打ち方をアイサが羅列する。
普通はプレイ中に実践する事は出来ない。
だが、飲み込みが早い紅が集中状態にあれば不可能ではない。
「はああっ!」
白いピン球が相手コートに叩きつけられた。
「紅ちゃんって、、、実はすごい才能の持ち主なのかも」




