第百二話「塩」
「大丈夫?」
「うぅ、、、ああ」
額を押さえながら呻く克磨。
真珠は克磨の額に触れる。
「うん、別に何ともなってない。つまり私には何の責任も無い!」
「それは流石に暴論じゃないか?」
女乃が補足する。
「ちなみに、外傷が無くても脳がダメージを受けている事もあるので注意です」
「怖い事言うなよ」
とりあえずスーパーボール直撃事件は幕を閉じた。
スーパーボールを使った練習を数日続けた結果、思わぬ収穫が得られた。
「もうちょっと!」
「まだ回転が弱いな。もっとスイングを速くしないと」
真珠は新たな技の糸口を掴みかけていた。
立てたラケットを勢い良く振り下ろし、背面でボールを擦る打ち方。
上手く回転さえかけられるようになれば、必殺の一撃になる可能性を見出したのだ。
「皿井さんとの練習を思い出すんだ」
「軸がブレないようにして、回転方向をまっすぐに。力をボールに伝えて、回転させる」
教わった事を思い出して反芻しながら、動きを洗練させていく。
「これが完成すれば、強力な武器になるはずだ」
「ハク!ご飯出来たってよ!」
「おーう!」
春呼は逆立ちしながら漫画を読んでいた。
家では基礎体力を高める事にしているのだ。
「部活の方の調子はどうだ?最近は毎日練習じゃねえか」
「地区大会が近いしな。練習なんていくらやっても足りねーくらいだよ」
春呼の父は多めに塩をかけたキュウリを齧る。
「ほぉ、頑張ってんだな」
「はっ、なんたって先発のエースだからな!アタシが躓くと後が全部崩れるから、負けられねぇんだよ」
「アンタ野球部だっけ?」
春呼の母が焼き魚に醤油をかけながら言う。
春呼は団体戦の第一試合を任される事が多い。
攻撃的なプレイスタイルがチーム全体の勢いをつけるのにぴったりなのだ。
「とにかく、地区大会は全力で戦ってこい!もちろん全部勝てよ!」
「おう!」




