第百一話「賢い」
「今日はノートから見つけた新しい練習メニューをやってみようと思う」
「はいっ!滝行!」
「クマと格闘!」
「お昼寝でしょ」
「大喜利コーナーじゃないからな」
克磨はため息で仕切り直す。
「これを使う」
克磨が見せたのはスーパーボール。
大きさはピン球とほぼ同じだ。
「スーパーボール?」
「まさか、それを打つのですか?」
「そうだ。ピン球の何倍も跳ねるから、簡単に速い球を打てる。これでラリーして、コントロール能力を高めるんだ」
試しにアイサが床に落としてみるが、頭の位置まで跳ね返ってきた。
「難しそうだけど、良い練習にはなるかもね」
「本気で打てば音速超えられるかも!」
真珠は別方向でワクワクしているようだ。
ラリーをするペアはアイサと春呼、女乃と紅、そして美翠と真珠。
「真珠ちゃん、ゆっくりやろーね」
「いえ!最初から本気で!」
「ゆっくり!だからね!」
美翠に圧をかけられて、真珠も渋々引き下がった。
「ほっ」
まずは軽く打って感覚を確かめる。
山なりに飛んだスーパーボールが高く浮き上がる。
真珠は後ろに下がって打つ。
(このくらいでも入るんだ)
ピン球との差を確かめながらチューニングしていく。
「ほらやっぱりぃ」
案の定真珠の打球は加速していった。
(流石に回転までは上手くかけられないけど、スピードは出せる)
「たっ!」
美翠が相手なので真珠は遠慮しない。
真っ直ぐ飛んできた球を何とか返す。
(おっもいなぁ)
スピードが乗っている分、返球の際にパワーも必要になる。
パワーを使えばスタミナは奪われていく。
「コントロールの練習だって言ってんのに」
真珠が楽しそうに打っている時、大抵克磨の指示を忘れている。
試合中のように深く集中していれば真珠はもっと冷たくなる。
冷たい真珠は賢い。
(間に合うかなぁ!ははっ!)
大きく横に揺さぶられ、ダッシュで往復する。
しかし真珠は笑っている。
「わっ!?」
真珠があまりにも横に動くので隣の台で打っていた紅にぶつかりそうになる。
「わ、ごめん!」
紅を避けた事により、狙いがブレた。
「がっ!?」
座って見ていた克磨の額をスーパーボールが撃ち抜いた。




