第百話「降霊」
「ねぇ、ひーちゃん」
「なぁに?みーちゃん」
体育館の床に座り、二人で同じおにぎりを食べている。
日に日に暑さが増してきているにも関わらず、ぴったりとくっついて座っている。
「地区大会ってさ、どこでやるんだっけ?」
「静岡じゃなかったっけぇ」
「あぁー、そんな事言ってた気もするぅ」
気の抜けた会話をしているのは、三年の間弓日奈乃と間弓魅月。
一卵性の双子で、いつも一緒に行動している。
「知結!また私の靴下履いてるでしょ!」
「あれ、これ姉ちゃんのだっけ。ごめんちー。ウチ、あんまり細かい事覚えられねーんだわ」
「ふぁ、、、」
神経質な北守佳耶。
テキトーな北守知結。
いつも眠そうな北守稀代。
年子の三姉妹だ。
「はいはーい!そろそろ練習再開するよー!」
号令をかけたのはキャプテンの金城蘭華。
昼砂高校で知らぬ者はいないアイドル的存在だ。
「ぼく、ゲーム練習が良い。らんか先輩と戦いたい」
稀代が目を擦りながら言った。
「名案だねキヨちゃん!という訳でゲーム練習ー!」
蘭華はかわいいポーズを決めながらメニューを決定する。
蘭華はどんな時でも周りに自分のかわいさをアピールする。
姉の千華がいつもしているように。
「ダブルスやろぉ」
「ハンデあげるからさぁ」
「ハンデなんて要らないわ。試合を想定した練習なんだから。試合本番にハンデは無いもの」
「別に良くねー?先輩らの方がダブルス強いんだからさー」
日奈乃と魅月はいつも双子ペアでのダブルスで試合に出場する。
まるで分身体のように同じ思考が出来るのが強さの秘訣だ。
「レギュラーに負けてらんない!アタシ達も始めるよ!」
「はい!」
昼砂卓球部の部員は三十人近くいる。
全部員の中でレギュラーになれるのはたった六人。
三年生であってもレギュラーに入れない者も多い。
レギュラーメンバーは偶然か必然か、姉妹が集まっていた。
双子の間弓姉妹は昼砂においてダブルス最強。
年子の北守姉妹は性格もプレイスタイルもバラバラだが、それぞれ確かな実力を持っている。
そして、金城蘭華は現役プロ金城千華の妹。
「やったー!きゅるん!」
得点を決めてウインクする蘭華。
姉の動きを完璧に再現すればプロと同じ実力を持っているのと同じ。
身体能力、道具、思考回路。
蘭華は姉のほぼ全てをコピーしていた。
(姉貴はこんなバカみてェな事を素でやってんのかよ。んで、、、それを真似してるアタシが一番バカみてェだ)
唯一、姉の心だけはコピー出来ていなかった。
完璧に姉をコピーするため、バカみたいだと思いつつも姉を降霊させ続けているのだ。




